神社に奉納された賽銭の中に「寛永通宝」が(写真:熊野那智神社提供)

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お賽銭を数えていると毎月必ず1枚入っているのですがなぜなんでしょうか...」――宮城県名取市にある熊野那智神社の宮司・井上幸太郎さんは2021年6月16日、こんな疑問をツイッター上に投稿した。月に一度、お賽銭に江戸時代の硬貨「寛永通宝」が紛れているのだという。

一体なぜ?J-CASTニュースは17日、井上さんに話を聞いた。

「今日も現代のお金でお願いしますとお山に祈ってます(笑)」

熊野那智神社は、高館山山頂に鎮座する小さな神社だ。祭神は羽黒飛龍神(ハグロヒリュウノオオカミ)、熊野夫須美神(クマノムスビノオオカミ)をはじめ、6柱を祀っている。太平洋と名取平野を一望できる境内や、縁結びの御利益があるとされる大木なども親しまれている。

この神社に奉納された賽銭の中に「寛永通宝」が紛れ込んでいた。江戸時代の硬貨で、真ん中に四角い穴が開いており、穴の周囲には「寛永通宝」と刻まれている。

宮司の井上さんは、この寛永通宝の写真とともにツイッター上でこう書き込んだ。

「昔の宮司さんが助けたタヌキとかが今も律儀にお礼に来てるんじゃないと子どもたちは話あってます、子どもは心がキレイ。汚れちまったお父さん(井上さん自身)は今日も現代のお金でお願いしますとお山に祈ってます(笑)」

ツイッター上では「夢があってホンワカ」「きっとタヌキさんです」といった和やかな感想が寄せられている。

1円札や5円札、海外の硬貨が入っていることも・・・

井上さんは5年ほど前から熊野那智神社の宮司を務めている。寛永通宝が入っていたことに気づいたのはここ1,2年ほどだという。賽銭を集計する時に気づくこともあれば、金融機関に持ち込んだ際に係員から「また入っていましたよ」と指摘されたこともあったという。

「私が宮司になる前からあったかもしれませんし、気づいていないだけで以前からあったかもしれません。意識するようになったのは、1、2年くらい前からです。毎回綺麗なものが入っているわけではなくて、土サビが混じっているものもあります。今回は『寛永通宝』という文字がはっきりと読める綺麗なもので、ツイッターに掲載しました」

賽銭箱には寛永通宝だけでなく、1円札や5円札などの古いお札、ポンドやドルといった海外の硬貨が入っていることもあるという。中には子供のごっこ遊びで使われるお札や硬貨を模したおもちゃなど、金銭以外が紛れ込んでいることもあるそうだ。

こうした硬貨を井上さんの3人の子どもたちは珍しそうに眺め、様々な空想をめぐらしているのだという。タヌキが持ってきたのか、はたまたカモシカか。井上さんは、こうした空想を聞くのを楽しんでいる。

「お金としては使い道がないかもしれませんが、子供たちの会話を楽しむものになっています。誰がこうした賽銭を奉納したのか探すより、今のまま想像をめぐらす方が神社らしく楽しめると思います。神社はお参りしてご利益を求められる場所かもしれませんが、帰り際に『来て良かった』と感じてもらえる場所であってほしいと思います。だから、今のままそっとしておいた方が硬貨を入れてくれる人も気楽でいいのかなと思います」

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)