金星は太陽系の中で最も地球に近い公転軌道を持ち、大きさや平均密度も地球に近いことから「地球の双子」とも呼ばれています。そんな金星の正確な自転周期が、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームの15年に及ぶ測定によって明らかになりました。

Spin state and moment of inertia of Venus | Nature Astronomy

https://www.nature.com/articles/s41550-021-01339-7



How long is a day on Venus? Scientists crack mysteries of our closest neighbor | UCLA

https://newsroom.ucla.edu/releases/cracking-the-mysteries-of-venus

金星の自転周期を求める研究は、これまでいくつか行われてきました。しかし、それらの研究によって導き出された値は互いに異なり、大まかな自転周期は導き出されたものの、正確な値は明らかになっていませんでした。UCLAの研究チームは、「金星は地球の姉妹惑星ですが、自転周期などの基本的な特性は明らかになっていません。もし、これまでに判明している精度の金星の自転周期を基に金星への着陸を試みたとしたら、着陸地点が最大30kmずれてしまう可能性があります」と述べ、金星の正確な自転周期を求める意義を強調しています。

研究チームが金星の自転周期の測定に用いた手法は以下の通り。まず、カリフォルニア州・モハーヴェ砂漠に位置するゴールドストーン深宇宙通信施設から金星に向かって電波を照射します。



照射された電波は数分間かけて金星へ到達し、金星はまるでミラーボールのように電波を反射します。



金星から反射してきた電波は、ゴールドストーン深宇宙通信施設とウエストバージニア州・グリーンバンク天文台で受信されます。この時に生じる両地点での電波受信時間の差を基に、金星の自転速度や金星の地軸の傾きを算出します。



研究チームは上記の測定を2006年〜2020年までの15年間に21回実施し、金星の平均自転周期が地球の243.0226日に相当する時間であることを突き止めました。さらに、金星の自転速度は常に変化していたとのことで、時には自転周期が約20分変化することもありました。

研究チームは、「金星の自転周期が大きく変動するのは、金星の大気が地球よりもはるかに重いため」と推測し、「これまで行われた研究で求められた金星の自転周期にズレが生じていたのは、金星の自転周期が常に変動していることが原因だと考えられます」と指摘しています。

◆おまけ

今回の研究で金星の正確な自転周期が明らかになりましたが、金星については不明な部分が多く残されています。

そんな中、NASAは2021年6月3日に、金星の大気の組成を測定する「DAVINCI+」と金星の地質学的特性を調査する「VERITAS」の2つのミッションを2028年〜2030年に実行することを発表。それぞれのミッションには約5億ドル(約550億円)が投じられる予定で、金星の詳細解明への期待が高まっています。

NASA Selects 2 Missions to Study ‘Lost Habitable’ World of Venus | NASA

https://www.nasa.gov/press-release/nasa-selects-2-missions-to-study-lost-habitable-world-of-venus