東大専科と一流大学コースの再勝負に応じた桜木建二(阿部寛)(写真:©︎TBS)

現在放送中のTBS系ドラマ「日曜劇場『ドラゴン桜』」は、元暴走族の弁護士である桜木建二(阿部寛)が、偏差値が低い子どもたちを東京大学合格に導くストーリーだ。ドラゴン桜ではさまざまな受験テクニックや勉強法が紹介されるだけでなく、学びになる名言も多い。そこで、短期連載として、原作漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当で、ドラマの脚本監修も行っている現役東大生の西岡壱誠氏が、自身の経験や取材も踏まえながら、ドラマから得られる教訓について解説する。

今回は「東大に受かりやすい人の性格」について。

第1回:東大生も納得「ドラゴン桜」本質すぎる受験心得
第2回:「ドラゴン桜」見た東大生が語る「挫折の重要性」
第3回:ドラゴン桜で再確認「東大受かる思考力」習得法
第4回:ドラゴン桜でも実践!東大生は「頼る力」がすごい

「藤井くん」にはモデルがいる

「性格が悪い奴は東大に落ちる!」

ドラマ『ドラゴン桜』で、桜木建二(阿部寛)先生は、成績が学年トップの藤井遼(鈴鹿央士)くんという、他人を見下しがちな「嫌な生徒」に対してそう語りました。そしてその言葉どおり、成績トップのはずの藤井くんは、2回も東大専科のチームに敗北することになってしまいましたね。

なぜ、成績のいいはずの藤井くんがうまくいかなかったのか? 受験において性格なんて関係ないはずなのに……。


成績トップだが、他人を見下しがちな藤井遼(鈴鹿央士、中央)(写真:©︎TBS)

漫画『ドラゴン桜2』にも、藤井くんはキャラクターとして登場しています。ドラマと同じように性格が悪くて主人公たちをバカにするわけなのですが、実はこの藤井くんというキャラクターは、漫画家の三田紀房先生に「僕(西岡)は性格が悪かったから、東大に2回も落ちました」という話をして作っていただいたキャラクターなのです。


ドラゴン桜2』に登場する藤井くん(漫画:©︎三田紀房/コルク)

というわけで「元藤井くん」の僕が、どうして性格が悪いと成績が伸びないのかについてお話しさせていただきたいと思います。

そもそも勉強というのは、「向上心」から行うものです。

「もっと頭が良くなりたい」

「いい学歴が欲しい」

「将来もっと稼げるようになりたい」

そういった願望があって、自分を高めようとして努力するのがつねだと思います。努力って「自分に足りない部分がある」から行うものですよね。「数学ができない」「もっと英語ができたらいいのに」と自分の至らない部分を自覚しているからこそ、努力を積み重ねていくのだと思います。

そのときにいちばん重要になってくるのは、「自分のどこができていないか」と向き合うことです。頭のいい人や東大に合格する生徒は、自分を客観的に分析する能力が高いです。しっかりと「自分はここができていないから、こういうふうに勉強しよう」という思考を組み立てられ、だからこそ成績をどんどん上げていくことができます。

テストは満点より悪いほうが意味がある

模試で全国1位を取った東大生に話を聞いたことがあるのですが、彼は模試の成績が悪ければ悪いほど喜んでいたと語っていました。

「満点だったら、自分ができていないポイントが1個もわからなかったということ。逆に点数が悪かったら、その分、自分のできていないポイントがたくさんわかったってこと。だからこそ、点数が悪いほうが自分の至らないポイントがわかって、模試を受けた意味があったってことだと思う」

これと同じように、模試や他人からの評価・他人の指摘に対して、しっかり耳を傾ける人は成績が上がりやすいです。客観的に自分が至らないポイント、つまり対策すればもっと上にいけるという箇所をしっかりと聞き入れる素直さを持っているからこそ、努力を積み上げられるのです。

そう考えると、受験も仕事も、実は評価するのって自分ではないですよね。テストを採点するのは大学側です。仕事の評価を下すのは自分ではなく、先方の会社であり、顧客です。つまりは、自分が評価者ではないのです。それなのに、自分だけの評価で「自分はこうなんだ」と考えるのって、実は傲慢なことなんですよね。

何を隠そう、僕は自分を客観的に分析することができていませんでした。先生から言われたこととか無視したり、他人を見下したりしていました。

「この授業、あんまり聞く意味ないな」と思ったら内職(ほかの科目を勉強)したり寝たりして、それに対して怒られて、怒られたことに対して怒り返して、みたいなことを繰り返している人間でした。

3つ模試が返ってきて、1つよくて2つダメな結果だったときには、「この1つのいい結果が自分の実力だ」と考えて、ダメな結果とは向き合いませんでした。自分の弱点が自覚できず、成績が伸び悩み、不合格になってしまったわけです。

そういう人間は、うまくいかなかったり失敗したりしたときに、そのミスを自分の責任だと考えません。この漫画の藤井くんのように、「今回はたまたまダメだったんだ」「これはケアレスミスだ」と語ってしまいます。

ミスの理由を考えることで自分を向上させられる

そもそも、ケアレスミスってなんでしょう? ケアレスミスという言葉を、僕たちは「注意が足りなかっただけで、次回は同じミスはしない」「運がなかっただけ」というような形で使うわけですが、ミスには必ず理由があるはずです。

焦って解けなかったのであれば、なぜ焦ってしまったのかを考えたほうがいいはずです。問題を解く時間が足らなかったのであれば、もっと解く時間が捻出できるように読むスピードを変えるなど早く問題を解く訓練が必要です。1つのミスから、ミスの理由をしっかり考えることによって、より自分を向上させていくことができるはずなのです。

ですが、謙虚さがなく、客観的に自分を分析する視点を持っていない人は、「ケアレスミスだから」という理由に逃げてしまいます。ミスの理由を追求せず、同じ失敗を繰り返してしまうわけです。

ドラゴン桜では、こんなふうに説明しています。





(漫画:©︎三田紀房/コルク)

もっと他人の評価を気にするようにする

失敗を次に活かし、もう失敗しないようにしっかりと失敗と向き合っていく。そういう思考ができる人のほうが成功しやすいわけです。


ですが藤井くんタイプは、自分のミスと向き合いません。自分ができないところとか、自分の失敗に対して謙虚ではありません。模試の結果も他の人からの評価も、自分の都合のいいように解釈してしまいます。だからいつまで経っても自分と向き合わず、自分を向上させることができない、ということですね。

いかがでしょうか? 謙虚じゃない時に、自分が謙虚じゃないと認めることは非常に難しいと思います。

僕は2回東大に落ちて、2浪が決まった時に、「ああ、自分は謙虚じゃなかったな」と強く反省しました。大きな失敗をしてやっと、自分が間違っているということに気付きました。そしてそこで、「自分はもっと他人からの評価を気にするようにしよう」と決意するようになりました。

脱・藤井くんを果たし、それによってなんとか合格することができたのだと思っております。だからこそもっと早く、気づいていればな、と後悔することが多いです。この記事を読んでいる人の中に、もし「藤井くん」タイプの人がいれば、ぜひ脱・藤井くんをしてもらえればと思います。