コロナ禍で「ステイホーム」を求められても、不倫相手と会うことをやめられない人たちがいる。夫婦問題研究家の岡野あつこ氏のもとに届いた、3つの相談事例を紹介しよう――。
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■当初は「夫婦間のストレス増加」の相談が多かったが…

新型コロナウイルスの影響で生活が変わりはじめて1年がたとうとしている。その間、夫婦問題の相談件数は右肩上がりに増えている。注目すべきは、相談内容にも変化があったことだろう。コロナの影響で新しい生活がスタートした当初、生じた夫婦問題の多くは、ステイホームによる夫婦間のストレスの増加に原因があった。

ところが最近の相談案件で目立つのは、コロナ禍でのパートナーの不倫について。つまり、人との接触を可能な限り避けるべき時期においても、「パートナーが不倫の相手と会うことをやめない」という問題が表面化しているのだ。

実際、「ウィズコロナ」の新しい生活スタイルになった今でも変わらず不倫を続けているパートナーを持つ人からの相談にはこんなケースがある。

■「コロナで忙しくなった」と帰りが遅くなった

【CASE1】在宅勤務になったことを隠し続けていた夫

「夫の不倫が続いていたと知った時は、悲しみというより怒りしかありませんでした」と話すのはAさん(37歳)。4歳年下の夫とは、結婚後も二度ほど不倫が原因で離婚寸前までもめたものの、二度とも「不倫相手とは別れる。離婚はしたくない」と懇願され、Aさんが折れる形で夫婦関係を修復する道を選択。それが去年の年明けのタイミングだった。

その後間もなく新型コロナウイルスの問題が本格化し、夫は「緊急事態だから忙しくなった」と毎朝そそくさと出勤し、会社からの帰宅も以前より遅くなっていた。Aさんも、夫が平日はほぼ不在の生活に慣れ「それはそれで楽でいい」と思っていたという。

夫の不倫に気がついたのは、Aさんも知っている夫の親友のSNSを眺めていた時のこと。「親友の彼女の家で鍋パーティー」という新年会の写真に写りこんでいたのは、親友夫妻と夫、そして年末に別れたはずの夫の不倫相手の女性だった。

■在宅ワークを秘密にして、不倫相手の家に通っていた

驚いたAさんが過去記事をさかのぼって確認したところ、そのほかにもゴルフやキャンプなど夫が不倫相手と一緒に行動をしていると思われる写真がいくつかあった。それは、夫が不倫を続けている紛れもない証拠だった。

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しかも撮影日はいずれも平日。不審に思ったAさんが帰宅した夫を問い詰めてみたところ、夫はアッサリと不倫を白状したという。平日に不倫を重ねていられた理由は「昨年夏から在宅勤務になっていたことを黙っていた」とのこと。在宅勤務になったにもかかわらず、平日は会社へ通勤するふりをして不倫相手の家に通っていたのだった。

「親友をまきこんだり、たくさんの嘘をついたりしてまで不倫を続けていたかったのかと思うと怒りが収まりません」とAさんは、今度こそ離婚をする決心を固めた。

■「不倫相手の存在の大きさに気づいてしまった」

【CASE2】「マスクを買ってくる」と嘘をついて家を空ける妻

「どちらかがコロナに感染したら、もう二度と会えなくなってしまうかもしれない。そう思ったら、夫には申し訳ないけれど不倫相手に会いたい気持ちを止められなくなった」と現在も不倫を続けるBさん(41歳)。Bさんが職場で知り合った50代男性との不倫関係をスタートさせたのは約3年前。「お互いに家庭がある立場だったから、バレないように気をつけていた」。

コロナの影響により新生活を余儀なくされてみると、思っていた以上に不倫相手の存在の大きさに気づいたというBさん。「会えないことがこんなに苦しいとは思っていなかった。仕事や家庭では埋められない心を満たしてくれていたのは不倫相手だと気づいたのです」。

コロナ禍でも不倫相手への気持ちを抑えきれなくなったBさんは、「短い時間でも構わないから会いたい」とたびたび家を空けた。在宅勤務の夫へは「マスクを買いに行ってくる」「仕事でトラブルが発生した」「子どもの学校から呼び出された」など、その場しのぎの言い訳でごまかしてきたという。

■ETCカードの明細で、不倫がバレた

Bさんの夫が妻の不倫を知ったのは、ETCカードの明細をチェックしたことがきっかけだった。「不倫相手には車で会いに行く必要があった。高速道路を使用していたので、料金と走行距離が激増したことで夫にバレた。『さすがにマスクを買いに行くのに、わざわざ高速は使わないだろ?』と」。

長年の不倫関係が露呈したBさんは現在、離婚か修復か迷っているところだという。「本音は、不倫相手のことが好き。ただ、経済的なことと子どものことを考えると、『やり直そう』と不倫のことを許してくれた夫と暮らすほうが正解ではないか」と話す。

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■別居先のインターホンに出てきたのは、不倫相手だった

【CASE3】「家庭内感染を避けるため」と部屋を借りた夫

増加している「家庭内感染」防止を理由に、堂々と不倫を続けた夫のケースもある。中学受験を控える息子を持つ母親のCさん(46歳)は、昨年秋から夫とは別居生活をスタートしている。きっかけは、「家庭内感染によって息子はもちろん、家族に迷惑をかけるわけにはいかない。とりあえず、息子の受験が終わるまで別々に暮らそう」と、夫が自ら別居を言い出したという。

高齢の義親とも同居しているCさんは、夫からの提案に賛成した。唯一心配だった経済的な問題も、「コロナの影響で当面、会社から家賃の半分を補助してもらえることになった」と夫から聞かされていたこともあり、「出費は痛いが、受験が終わるまでは仕方ない」と納得していた。

夫が不倫相手と暮らしていることが発覚したのは、Cさんが外出のついでに夫の借りているマンスリーマンションに立ち寄った時のこと。インターホン越しに応対したのは、夫ではなく不倫相手の女性だった。寝耳に水のCさんを前に彼女が語った真相は、「1年前からダブル不倫をしていたが、コロナ禍でも会いたいと二人で部屋を借りることにした」ということだった。部屋の賃料は、夫と不倫相手が二人で折半していたとのこと。つまり、「会社から出る家賃の補助」は、夫による真っ赤な嘘だったのだ。

「事態が明るみに出た以上、別れるしかない」と不倫相手の女性は身を引く約束をしたものの、肝心のCさんはまだ夫のことを許せないでいる。「この先、こんな人と夫婦のままでいたくない。息子の受験が終わったら、離婚の準備をはじめたい」という。

■不倫が「生死に関わる状況でも続いていた」という事実

パートナーが不倫相手と会うことをやめない、あるいは会うことをやめられないことが原因で相談に訪れるケースはこれまでもあったが、コロナ禍における相談と異なる点もある。それは、「パートナーの不倫が、自分たちの生死に関わるかもしれないコロナ禍でも続いていた」という事実を前に、相談者が冷静になって自分の将来と向き合う機会を持てるという点だ。

パートナーはもちろん、不倫相手に対する怒りや執着で「絶対に離婚しない」「自分だけが幸せになるのは許さない」などと考えるより、相談者が「これからの自分の人生をどう描いていくか」を考えて結論を出すケースが増えている。自分の幸せを軸に後悔のない選択ができるようになったのは、皮肉なことだが「コロナのおかげ」でもある。不倫はしないに越したことはないものの、幸せに生きていくためのきっかけになると考えれば、離婚も意味があることとしてとらえられるだろう。

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岡野 あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)『離婚カウンセラーになる方法』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。
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(夫婦問題研究家 岡野 あつこ)