自工会・豊田章男会長が大手メディアに「電動化車両はEVだけではない!」ミスリードやめてと苦言

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いまの状況でEVが増えると電力不足になる!?

 自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、2020年12月17日に懇談会規模の記者会見をおこなった。挨拶に代表される無駄な時間を掛けず、冒頭より記者からの質問を受けるという内容です。

 最初に出たのは、昨今話題にあがる電動化について。記者側から「自工会としてどう考えるのか?」という茫洋とした問いだったのだけれど、熱い回答になりました。

豊田章男自工会会長(写真は2018年にインタビューしたときの様子)

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 長い内容になったため概要を説明すると、まず会長自らトヨタ調べの数字で現状を紹介した。

 自動車産業はずっと二酸化炭素削減努力をおこなっており、その結果、販売している車両の平均燃費でいえば、2001年の13.2km/Lから2018年の22.6km/Lと71%も向上しており、自動車が排出する二酸化炭素の排出量も2.3億トンから1.8億トンへ22%も減っているという。

 あまり公表されていない数字だったこともあり、改めて自動車環境技術の進化に驚かされる。

 続けて電気自動車の話になった。

 多くのメディアはすべて電気自動車にすべきだというけれど、いまの電力状況のままクルマをすべて置き換えようとすれば電力不足になるうえ、そもそも日本は火力発電所がメインのため二酸化炭素の排出量削減にならないという。

 この件、裏を返せば、日本という国全体のエネルギー問題のほうが大きいということだと考えます。

 現時点でカーボンフリーの電力をどうやって確保したらいいかという論議はまったく進んでいない。

 原子力発電所を新設するどころか、既存の施設の再稼働すら出来ない状況。十分な安全性を担保出来なければこのまま廃炉になっていくと思う。

「EVだけになるわけではない」大手メディアの誤認識に苦言も

 実際問題として「2050年にカーボンニュートラル」という目標を、どういった方策で実現するかまったくわからない。

 少なくとも現在の排出量を提示し、大雑把でいいからそれぞれの分野でどのくらいの目標設定をするか、エネルギー事情をどうするのかくらいの目安がなければ、自動車業界の対応策すらイメージ出来ないということなんだろう。

電気自動車の日産「リーフ」

 どうやら2050年カーボンニュートラルや、東京都知事の電動化車両以外販売停止の件、政治家サイドで突如に決めたことらしい。

 いうのは簡単ながら、エネルギー政策まで考えてくれなければ対応するのも難しいと思う。

 そもそも、脱ガソリン車で困るのは国民です。地方で移動手段の主力となっている軽自動車もどう対応したらいいかわからず、このままだとユーザーが困る。

 返す刀でメディアもバッサリ切った。電動化車両のなかにハイブリッド(HV)や、プラグインハイブリッド(PHV/PHEV)も含まれているのに、報道を見ると電気自動車しか販売出来ないようなミスリードをしているという。

 これはもう、報道するメディア側に大きな問題があります。大手メディアの記者は勉強不足のため、電動化車両にハイブリッドやプラグインハイブリッドも含まれることを認識していない。

 結果、少なからずそうした報道を見た人が、東京都は2030年からすべて電気自動車になると理解している。

 そのほか、豊田会長はメディアの誤認識や意地の悪い報道に対し苦言を呈す。聞いていて「その通りですね!」の連続だ。これだけ率直に自分の意見をいうトップは珍しい。

「これだけいうと叩かれると思います」と会長自らオチまで付けた。今後も自動車産業代表として大暴れして欲しい。