相手が行儀の悪い人だったら…

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 数年前、元CAが開催するセミナーに参加したところ、「ファーストクラスの乗客は気品があり、姿勢がよく、歯並びがよく、加齢臭もなく、気配りができ、振る舞いが美しい」という話を聞かされたことがあります。元CAを売りにする人は多く、ニーズがあることは理解できるのですが、特異さも際立っていたように感じました。

 今回は、そんな元CAの肩書を持つ研修講師を紹介します。七條千恵美さんは元JAL客室乗務員です。お客さまから、多くの称賛を得、「Dream Skyward優秀賞」を受賞しました。さらに、TOP VIPフライトの中でも最上級ハンドリングの皇室チャーターフライトメンバーに抜てきされた経験を持ちます。今回は、行儀が悪い人への対応方法を聞きました。近著に「礼節を磨くとなぜ人が集まるのか」(青春出版)があります。

「行儀が悪い人」に伝わる言い方

「行儀がよい」「行儀が悪い」という言葉は、食事中や公共の場所での振る舞いについて多く使われます。そうした場では時間や空間を他人と共有することになるので、それなりの行儀を心掛ける必要があります。自分のことは自身で気を付けるとしても、同伴者の行儀が悪かったとき、あなたならどうしますか。

「一緒にいるのが部下や後輩、子どもなどのときには、周りに不快感を持たれるような言動があれば、きちんと教えるのはそう難しいことではないでしょう。口うるさい人だと疎ましく思われるとしても、周囲の人に対する配慮や社会性は若いうちにぜひ、身に付けておいてほしいことです。ただ、一緒にいる『行儀の悪い人』が上司や先輩だったときはどうすればいいでしょう。難易度が上がります」(七條さん)

「上の人に物申すことは、相手に恥をかかせることにもなりかねません。このようなときでも気後れすることなく、指摘し合うには信頼関係が大切です。上司は部下にちゅうちょなく指摘でき、部下が上司に物申すときも快く耳を傾けてもらえる。日頃から相手に敬意を表し、信頼関係を深めていれば、そのような関係をつくることも可能です」

 まだ、そのような人間関係性がない相手の場合はどうすればいいのでしょうか。場所や伝え方に気を付けることで、やんわりたしなめることができると七條さんは言います。

「例えば、『しない方がいいですよ』『そうではなくて、これが正解ですよ』という直接的な言い方を避け、『私も最近まで知らなかったのですが…』『すでにご存じのことかもしれませんが…』『大変申し上げにくいことですが…』といったクッション言葉を使うことで、少しやわらかい言い方になります。『クッション言葉は面倒くさい』という声を時々聞きます。面倒ですが、このひと手間が大切なのです」

「なぜなら、『あなたに物申すことに私は心を砕いていますよ』と感じてもらうことが目的でもあるからです。クッション言葉を添えることで、『あなたにはそれくらい価値があります』『それくらい大切な人です』という意を伝えられるわけです」

それでもうまくいかない場合

 それでもうまくいかないときには、最後の手段として、その人の行儀の悪さをフォローする形で周囲に配慮を見せることが望ましいと七條さんは解説します。

「お店であれば、周りにいる他のお客さまや店員さん、公共の場所であれば、周囲にいる人に対して、目線、会釈、『にぎやかですみませんでした』という言葉を通じて『ご迷惑をかけました』という気持ちを伝えるのです。ちょっとした行動、ほんのひと言ではありますが、それがあるとないとでは大違いです」

「自分ではなく同伴者の振る舞いなのに、そんなフォローまでする必要があるのかと疑問を持つ人もいるかもしれませんが、どこであっても、誰が相手であっても礼節を忘れずにいたいものです」

 人が人と接するときに最も大切な礼儀や礼節。どんな人にも心遣いや敬意、感謝の気持ちを持って接していると周りから応援され、助けられ、認められます。人に丁寧に接することは、実は最高の成功法則なのです。