昨季J3で得点王に輝いた原は苦しいFC東京を救えるか。写真:田中研治

写真拡大 (全2枚)

 J1リーグの8試合を消化して、FC東京は4勝2分け2敗の6位。決して悪い成績ではないが、橋本拳人がロシアのロストフに移籍以降の3試合は2分け1敗と未勝利だ。橋本が先発出場した横浜戦、浦和戦での結果、内容がともに評価できた点を考えると、このMFをリーグ序盤戦で失ったのは痛手だろう。

 シーズン開幕前、昨季まで4−4−2システムを重用していた長谷川健太監督は、中盤の底にアンカーを置く4−3−3システムを新たに導入してチームの戦い方に幅を持たせようとしていた。しかし、アンカーの筆頭候補だった橋本にロシアからオファーが舞い込むと、中断期間中の6月、指揮官は「4−3−3か4−4−2か、手探りしながらやってきた」という。

 もちろん、複数のシステムを使いながらやっていくのが長谷川監督のスタンスだ。とはいえ、慣れ親しんだ4−4−2システムで鹿島戦に続き、直近の鳥栖戦で白星を飾れなかったのはおそらく想定外だろう。ひとつの砦(4−4−2)で2試合とはいえ勝利できなかったダメージは、ことのほか大きいのではないだろうか。

 橋本の移籍に続く誤算は、キャプテンで10番でもある東慶悟の長期離脱。札幌戦で右足を骨折した東は全治最大4か月で、シーズンアウトの可能性も現時点では否定できない。昨季のリーグ2位に大きく貢献した橋本と東をほぼ同時に失うとは……。文字通りの緊急事態だ。

 しかも、鳥栖戦では「相手チームに発熱者」という事態に見舞われたなかで2−3と敗戦。試合後に長谷川監督は「試合当日午後に鳥栖の選手が熱発したと聞いて」とコメントし、「前半ファイトできなかったのは心理的要因も」とも言っており、これが誤算という見方もできるだろう。いずれにしても、首位の川崎に勝点8差をつけられ、優勝戦線から一歩後退したことでチーム内の危機感も高まっているはずである。
 
 直近の3試合、札幌戦以降の戦いぶりを振り返ると、攻守の切り替えがスムーズではないように映る。特に、ポジティブトランジション(守備から攻撃への移行)にスピード感がなく、テンポのよい攻撃を仕掛けられていない。ボールホルダーへのフォローが遅く、頼みのディエゴ・オリヴェイラにボールが渡っても相手の激しい寄せで潰されてしまうシーンが目立っているのだ。

 鳥栖戦はまさにそんな形で攻撃を遮断され、流れの中から決定機をなかなか作り出せなかった。ただ、希望がないわけではない。ここからチーム力をアップさせるうえで、キーマンとなるのは言うまでもなく若手選手だろう。
 
 希望の芽となるひとり目は、プロ2年目でCBの渡辺剛(23歳)。すでに主力を張っている彼に期待したいのはなにより、セットプレーでの得点だ。柏戦、鹿島戦で1ゴールずつ決めているが、目指すは二桁。自慢のヘッドでチームの得点源になれれば、相手に与えるプレッシャーは計り知れない。

 2〜4人目は、今季開幕から公式戦に絡んでいる大卒ルーキー3人(安部柊斗=22歳、紺野和也=23歳、中村帆高=22歳)。中盤の主軸になりつつある安部はまずプロ初ゴールを奪いたい。プロである以上求められるのは結果で、その意味でも得点に絡む活躍が自身の成長のためにも必要だ。

 同じく紺野もゴールが欲しい。テクニカルなドリブルはまずまず通用するが、どうもプロの舞台ではエリア付近での怖さが物足りない印象だ。得点力を高める鍵のひとつはミドルシュートの精度か。少なくとも、高い確率で枠に飛ばして相手に冷や汗をかかせたい。

 安部と同じ明治大からFC東京に加入した中村は、ここまで室屋成、小川諒也とローテーションで左右のサイドバックをこなしている。守備の強度はそれなりに高い一方、仕掛け、崩しの局面での工夫が足りない。攻撃面で大きな違いを作り出せるようになれば、より重要な戦力になれるはずだ。