「展示のセンス半端ない!」

と、話題になっている施設がある。

東京都多摩市で東京都内の埋蔵文化財の調査・研究を行う「東京都立埋蔵文化財調査センター」(運営・東京都埋蔵文化財センター)だ。

同センターの展示ホールででは、多摩ニュータウンで発見された旧石器時代から近世までの出土品の展示を行なっている。

注目を集めているのは、縄文時代のファッションついての展示コーナーだ。当時の衣服や装飾品を同センターが再現し、マネキンに着せているのだが、それにつけられていたタグがこちら。

白地のタグにえんじ色のアクセント。一番上に書かれているのは「縄文良品」の文字。

2020年6月16日、ツイッターユーザーのchiba_kofun (@yukio_0525_)さんがこの写真を投稿したところ、

「無印良品かと思いました」
「自然と生きる、縄文良品」
「縄文良品!ローソンでも買えるかな?」

など話題になった。多くの人が、同じ店を連想したようだ。

縄文服を身近に感じてもらうため

Jタウンネット編集部が7月2日、東京都埋蔵文化財センターの広報学芸担当者にこの展示について詳細を聞いたところ、このマネキンは縄文人の衣服を着ることができる「縄文ファッション」という体験コーナーに、見本として置かれているもの。タグは07年度から使用されていたものだそう。

当時の展示担当者が、展示物に付けられるキャプションを「より分かりやすく、より身近に感じていただくべく」作ったものだという。確かに、タグの形で説明されていると「展示品」というよりも「衣服」として鑑賞できる。


これは...(chiba_kofunさんのツイートより、編集部でトリミング)

衣服や装飾品は、縄文時代の出土品を参考に同センターが作ったレプリカ。

縄文時代の衣装については、完全な状態で発見されることがないため、どんな服を着ていたのかは明らかになっていない。ただ、「切れ端」のようなものは出土しているので、それから「こんな感じだったのではないか」と想像して作ったものだそうだ。

使った素材も職員が集めてきたもので、どこから取ってきたかが「産地」の欄に書かれている。

「垂れ飾り(ペンダント)」の鳥骨の産地がケンタッキーとなっているのは、米ケンタッキー州から持ってきた...というわけではなく、ケンタッキーフライドチキン骨を使っているからだそうだ。

「ちなみに、縄文時代の日本列島には、ニワトリはまだいませんでした」

と担当者。ただ、縄文時代の人々は身近な動物の骨を装飾品に使用することがあった。現代の私たちにとって身近な骨、ということでケンタッキーの骨が採用されたらしい。

「縄文良品」、現在は撤去されていた

色んなところに職員の遊び心がひそんだ楽しいタグ。同センターが行っているアンケートでも評判が良いそう。

ぜひ見に行きたい、と思った人もいるだろう。しかし、担当者によるとこのタグはすでに撤去されてしまったという。理由を聞くと、コーナーのリニューアルに伴うものだそう。

同センターでは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、展示ホールを2月29日から5月31日まで臨時休館としていた。

6月1日に開館して以降も、体験コーナー等では不特定多数が同じものを触ったり着たりするため、感染リスクが高いと考えて利用制限を行なっていたが、7月1日からリニューアルして再開。それに伴ってタグも新しくなったのだという。

じゃあもう「縄文良品」は見られないのか...とがっかりしていると、新しいタグも「これまでのコンセプトを変えない形で作成いたしました」と担当者。

どんなふうに変わったのか、写真を提供してもらった。


「縄文逸品」(写真は東京都埋蔵文化財センター提供)


担当者「マイナーチェンジしました」(写真は東京都埋蔵文化財センター提供)

アクセントはえんじ色から紺色に、シリーズ名は「縄文良品」から「縄文逸品」に変化。

そのほかの部分はほとんど変わっていないようだ。

新しいデザインについては

「『無印良品』様につきましては、基本的に意識しておりませんが、『あれ?こんなところに商品タグがある!』という感覚で気軽にご覧いただけるようなデザインといたしました」

とした。

ちなみに、マネキンの全体像はこんな感じ。


オシャレに見える...かも(写真は東京都埋蔵文化財センター提供)

脇に立つパネルには、こんな言葉が書かれている。

「縄文逸品
良質な天然素材をふんだんに使った縄文ファッション
このナチュラル感が縄文生活の基本です」

縄文人は、実はすごく丁寧な暮らしを送っていたのではないか――。思わずそんな気持ちにさせられてしまった。