全56クラブでJリーグ―― 「影山優佳のWE LOVE Jリーグ」がJ3にもたらす“新たな風”
【インタビュー第3回】「私の勉強も兼ねつつ、皆さんにもっとJ2、J3を知ってもらいたい」
人気アイドルグループ日向坂46の影山優佳さんは、今年5月の活動再開とともに、公式ブログでJリーグ全56クラブを紹介する「影山優佳のWE LOVE Jリーグ」をスタートさせた。
チーム名の由来にはじまり、地域の特性、スタジアム、戦術、注目選手、そして独自のワンポイントコメント「影山の一言」など、様々な項目を設けてJリーグ各クラブの魅力を掘り下げている。
5月30日の「#1」北海道コンサドーレ札幌に続き、6月1日に投稿された「#2」ではヴァンラーレ八戸が登場したが、J1だけでなく、J3も同じ熱量・濃さで紹介された内容は大きな反響を呼んだ。影山さんは、「全56クラブでJリーグなので」と連載企画にJ3を含めた思いを語る。
「テレビや雑誌の『Jリーグチーム紹介』で、J1だけが取り上げられていることが結構あって。いちサッカーファンとしてその内容を楽しみつつも、J2、J3のチームからしたら少し寂しい思いをしているんじゃないかな、と感じたことがありました。やっぱりJ1からJ3まで全56クラブを含めてJリーグですし、私の勉強不足でまだ知らないチームの魅力もたくさんあります。私自身の勉強も兼ねつつ、皆さんにもっとJ2、J3を知ってもらいたいと思い、北から順番に全チームの紹介を始めました」
ブログが更新された当日、八戸はクラブ公式ツイッターで「ご紹介ありがとうございます。そして活動復帰おめでとうございます。これからますますのご活躍応援いたします! 私どもも頑張ります」と感謝のメッセージを綴った。ツイートを担当した八戸・取締役事業統括本部長の菅原康平氏は、クラブとしても“驚きの展開”だったと明かす。
「第1回が北海道コンサドーレ札幌さんで、順番的にはJ1のベガルタ仙台さん、J2のモンテディオ山形さんを皆さんも想像していたであろうなかでヴァンラーレだったので、我々が一番びっくりしたのが正直なところです(笑)。J3に昇格して2年目の我々のことも取り上げて頂いて、しかも戦術とか、確実に試合を見て頂いたなかで感想が書かれている内容の濃さ。ヴァンラーレのことを多くの方に認知してもらう機会になったので、本当にありがたかったです」
「初めて知ることも多くて、こんなにおもしろい部分があるんだと発見を楽しんでます」
「多くの方」の中には、これまでサッカーに縁が深くなかった新規の層も多く含まれており、“新たな輪”が広がったことへの喜びを菅原氏は語る。
「それまで新型コロナウイルスの影響で試合がなく、露出も少なかったなかで、お礼のツイートをしてみたところ、クラブ歴代2番目のいいね!(3167件/7月23日時点)を頂いて、フォロワー数もかなり増えるなど、とてつもない反響がありました。青森在住で日向坂46のファンの方はたくさんいらっしゃいます。ヴァンラーレは知らなかったけど、日向坂46は知っているという県内の方々から、『誇りだ』と声が上がるツイートをいくつも目にしました。ネガティブなニュースが多いご時世なので本当に嬉しかったです」
J3はJ1・J2に比べると情報量が圧倒的に少ない。連載では「#3」でいわてグルージャ盛岡、「#5」でブラウブリッツ秋田、最新の「#7」で福島ユナイテッドFCが取り上げられているが、影山さん自身、新しい発見の連続だという。
「J3は情報が少なくて、ネットや雑誌の過去の記事やハイライトを観たりしていくと、1チームを調べるのに3〜4日かかってしまった、なんてこともあります(笑)。でも、今回調べて初めて知ることも多くて、こんなにおもしろい部分があるんだと発見を楽しんでいます」
八戸の注目選手に挙がったMF新井山祥智とMF安藤翼は、7月5日のリーグ第2節・岩手戦でともにゴールを挙げ、2-0の勝利に貢献。影山さんの着眼点の確かさを実証する結果となった。
岩手の広報を務める阿部大樹氏も、「影山優佳のWE LOVE Jリーグ」に感謝するとともに、影山さんの“サッカー愛”をひしひしと感じると話す。
「影山優佳さんのブログを通じて、少しでも『いわてグルージャ盛岡』という存在を知って頂く良い機会だったと考えています。今後クラブとしての価値をもっと上げていかなければいけない我々に関しても取り上げて頂いたことについては、本当にサッカーがお好きなんだなと感じました。幣クラブの(マスコットである)キヅールのぬいぐるみがブログの写真に上がっていて、大事にして頂いているんだなと感動しました」
若い層や女性ファンの新規開拓に貢献「私みたいな人もいるんだよ、くらいな感じで」
また、今年から秋田の広報としてサッカーの仕事に携わる鈴木菜奈美さんは、同じ女性として、影山さんが情報発信する効果の大きさについて、このように見解を述べている。
「ブラウブリッツのある秋田県は、サッカーを見る世代は中高年層が多い印象がありました。今回若い女性アイドルの影山優佳さんが発信してくださったことで、県内の若い層や女性にも興味を持ってもらえるきっかけになると思います。サッカーの世界はまだまだ女性が中心となって情報発信していくのが少ないので、同じ女性として率直に凄いなと感じました。私自身、今年からこの仕事をしていて、サッカーを知らなかった自分としてはアイドルの女の子がサッカーのことを発信していたら、自分がファンだったら気になりますし、女の子が詳しいという意外性もあって素晴らしいと思います」
もっとも、影山さんはあくまでJリーグへのアプローチは人それぞれで、「いろんな楽しみ方があるということを伝えられたら嬉しいです」と思いを込める。
「私はブログを通じて(サッカーの)情報を皆さんにお伝えする役目で、そこから先はサッカーファンの方、サッカーを知らない方、日向坂46を好きな方、それぞれがサッカーを介してコミュニケーションを図ったり、楽しんでもらえたらいいなという思いがずっとありました。特に女性の方はいろいろな楽しみ方があると感じていて、例えば戦術的に見るのも、ユニフォームを着て応援するのも、どちらも答えの一つだと思うんです。私みたいな人もいるんだよ、くらいな感じで、新たに女性ファンの方が見てくださる時は自分なりの楽しみ方を見つけてもらえれば嬉しいです」
J3の活性化、ひいてはJリーグ全体の認知度アップへ――。熱のこもった「影山優佳のWE LOVE Jリーグ」は、その一翼を担っている。
[PROFILE]
影山優佳(かげやま・ゆうか)/2001年5月8日生まれ、東京都出身。日向坂46一期生。16年5月、欅坂46に続いて結成された「けやき坂46」(通称ひらがなけやき)の一期生オーディションに合格。18年8月、学業に専念するため活動休止。20年5月26日に活動再開を発表した。かつて男子に交じって地元サッカークラブに所属し、サイドやボランチでプレー。サッカー4級審判員の資格も持ち、戦術にも精通する。自身の公式ブログでJリーグ全56クラブを紹介する「影山優佳のWE LOVE Jリーグ」が好評連載中。
(続・コンテンツ予定)
第4回:ドルトムントの怪物ハーランド&サンチョの魅力
第5回:”思い出のあの選手”ミキッチへ贈る言葉
第6回:日向坂46”サッカー選抜”(Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)