中学校に入ってから苦労する子の特徴とは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「小学校の大事なところが小学生のうちにできていないと、中学校での学習についていけない」と言うのは、「百ます計算」で知られる、隂山英男氏です。

子どもが4月から中学生になるが、「子どもが全然勉強しない!」「子どもは中学校のテストを甘く見ている」と、不安に思っているご家庭もあるのではないでしょうか。

小学校6年生の今に最適な、最高の中学スタートダッシュへの最短ルートとは何か、隂山氏に聞きました。

なぜ中学校から落ちこぼれるのか?

私(隂山)は、小学校4年生までを純粋な小学校の学習期間、5・6年生は4年生までの学習を生かして中学校の学習をより楽にする準備期間と位置づけてきました。そのため、小学校高学年の学習を進める際は中学校の先生の助言を精いっぱい聞き、指導の中に取り込んできました。

その中でわかったのは、小学校で悩んだところこそが、中学校の学習の重要なポイントにつながるということです。

小学校での「難所」を確実に押さえる。これを中学校の入学前にしておくことは、中学校の学習を進めるために決定的に重要です。

では、中学校に入ってから苦労する子の特徴と、その対策を、算数・国語・理科・社会・英語の科目別に解説していきましょう。

算数は、まず計算力、次は「分数」「割合」

小学校においては、文章題を解くことが重要でした。しかし中学校では、同じような問題を方程式で解くように変わります。中学入学前に、文章題を頑張って極めても、中学の数学では残念ながら役に立ちにくいのです。

では中学入学に向けて、何をするべきか。重要なのは「計算がさっとできること」です。

計算を苦手にしていると、中学校以上の問題を解く場合に、簡単につまずいてしまいます。ですから、小学校の段階で、「算数の計算が正確に速くできる」ようにしておくべきなのです。

そして、最も重要なのは、「分数や割合」の考え方です。これらは比例の考え方が土台となって、実際の数とそれらを割合に表す問題に発展していきます。

分数や割合は、小学生が最も苦手とする分野ですが、中学校では最も必要な力となってきます。的確に解いていく力を身に付けるとよいでしょう。

また、できない子の特徴として、面積の求め方のような公式を覚えていないことが見受けられます。覚えていても、適切に活用できない子もよくいます。これらを単に暗記するだけではなく、適切に活用していく力が必要です。

国語で小学生のうちにやっておくべきことは、学校で習うレベルの漢字の読み書きです。それができるようになっておかないと、中学校では「教科書が読めない」事態になってしまいます。中学校は「心情理解」を扱うようになりますが、それに太刀打ちできない確率も高くなります。

国語は、言葉の意味が大事

国語の文章の読み取りで最も大切なのは、一つひとつの言葉の意味を適切に理解することです。日本語の場合は、その重要なものが漢字によって構成されています。また、四字熟語のように独特の言葉の使われ方が、意味理解において重要になることがあります。

こうしたことからも、小学校で習う漢字をまず確実に読み書きできることが必要なのです。

そのためには、問題集の選び方にもコツがあります。多くのテストでは、難易度を上げるために「バラバラの形式」で出題しています。例えば、次の2つの出題例を見てください。

●例1:出題形式がバラバラな例
問1「〜を書きなさい」
問2「ア〜エから1つ選びなさい」
問3「間違っているものを、ア〜エから選びなさい」
問4「〜の図をふまえて、〜とは何か答えなさい」
問5「〜について、〜字以内で説明しなさい」

●例2:出題形式に一貫性がある例
問1「ア〜エから1つ選びなさい」
問2「ア〜エから1つ選びなさい」
問3「ア〜エから1つ選びなさい」
問4「ア〜エから1つ選びなさい」
問5「ア〜エから1つ選びなさい」

学力をはかる、差をつけるという意味では、前者のようなテスト形式もいいのですが、「大事な部分を復習する」「大きなモレなく、確実に80点をとれるようにする」ためには、「ぜい肉をそぎ落とした形式」で学習するほうが効果的です。

つまり、「本当に大事なところをおさらいする」ときには、「ノイズ」が少ない問題集を選べんだほうが、集中力や学習スピードが格段に変わります。

国語においては、ほかに、事実関係を把握する説明文と、人間の感情を読み解く物語文とではその読み解いていく構えが違っており、こうした基礎と読み取りの違いを念頭に学習を進められるとよいでしょう。

理科のできは、算数に影響される

理科は、社会のように覚えておくことがそれほど多くはありません。ただし、中学校の理科は小学校の内容が前提となり、自然の中の法則や原理につながってきます。

また、「液体を混ぜる際の濃度の問題」など、算数・数学に関わるテーマの基本が理解できていないと苦労します。

私が中学校の先生に助言を求めた際、中学校の理科の先生から「液体を混ぜる際の濃度の問題に関して、比例や割合の知識は徹底してできるようにしておいてほしい」と言われたことが印象的でした。

先述のとおり、算数の割合は、小学生が苦手とすることが多い分野でありますが、そういった分野を確実に押さえておくことが、中学校でのつまずきの予防につながるのです。

社会は独特の言葉をちゃんと押さえる

社会においても、中学校の教科書は小学校で出てきた言葉の意味がわかっているものとして教材が作られていますから、専門的な社会科用語でも基本的なことは理解し、覚えていなければいけません。

社会の授業は暗記ではない、ということが理想論として語られますが、その暗記ができておらず授業ではただボーッとしているだけ、という中学生は多くいます。

社会ではまず、産業や現代社会に対する理解が必要です。また、6年生で習う歴史は中学校での歴史学習の基礎となっており、これも完全に理解し、なおかつ覚えておかなければなりません。

これらの社会科の知識は、小学校で習っていない漢字なども使われながら、社会科独特の用い方をします。意味をしっかりと理解しておくことが、社会科学習全体の理解を促すことにつながっていきます。難しい漢字などがあっても、骨子となる重要語句はちゃんと覚えておくことを心がけてください。

英語も言葉が大事

今は小学校でも英語の指導がなされ、それが土台となって中学校の英語学習が始まっていくようになっています。ところが、この小学校の英語で問題なのは、各学校によりその指導のレベルに違いがあり、中学校の英語を学習するときのスタートが切りやすい学校とそうでない学校に分かれているのです。

ただレベルの高い指導がされていればいいというものでもありません。指導のレベルが高いためについていけず、英語に苦手意識を持ってしまう子どもたちもいるからです。

やはり大事なのは基礎を固めることです。重要な英単語の意味の理解を確かなものにし、できれば暗記しておくことが、中学校での英語学習をスムーズにスタートできることにつながるでしょう。

小学校の総復習で心がけるべきポイント

学習は多くの時間をかけるということがいいのではありません。むしろ多くの内容をより短時間に効果的に学習していくことが大事です。


中学校の入学まであとわずかですが、今からポイントを押さえてやれば間に合います。この時期に、小学校の総復習をして、最高の中学スタートダッシュを切ってください。

また、すでに中学生になっている、高校受験を控えている方にも、小学校の総復習は有効です。

例えば、都道府県名は小学校4年生で習いますが、高校受験を控えた中学校3年生になっても、47都道府県を正確に言えない、書けない子もいると聞きます。

中学校での成績が伸び悩んでいるときこそ、小学校の大事な部分をおさらいしてみてください。