新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け、パブリッシャーは数々の特別プロダクトを世に送り出している。ニュースレター、ライブブログ、それにもちろんポッドキャストだ。

2月末、CNNは「コロナウイルス:事実とフィクション(Coronavirus; Facts vs Fiction)」と題する、デマの撲滅をめざす10分間の番組を毎日配信しはじめ、開始から1週間で100万ダウンロードを突破した。リリースの数日後にAppleのポッドキャストランキングで3位に食い込み、ニュースカテゴリーの首位を獲得した。ガーディアン(The Guardian)は、健康関連のポッドキャストを配信するバーティカルメディア「サイエンス・ウィークリー(Science Weekly)」でコロナウイルスに関する特別エピソードを公開し、さらに毎日配信するニュースポッドキャスト「トゥデイ・イン・フォーカス(Today in Focus)」でもウイルスに関するエピソードをリリースした。ガーディアンは、公開から日が浅いため、それぞれのダウンロード数を明かしていないものの、1月24日に配信された初のコロナウイルス特集ポッドキャストはサイエンス・ウィークリー史上屈指の人気だという。同様に、BBCワールドサービス(BBC World Service)も3月に入って「コロナウイルス・グローバル・アップデート(Coronavirus Global Update)」と題する毎日配信のポッドキャストを開設した。

視野を広げてみると、1月22日以降、ポッドキャストネットワークのAcast上には「corona」または「covid」をタイトルに含むエピソードが650本も配信された。ガーディアンやフィナンシャルタイムズ(Financial Times)とも提携する同プラットフォームによれば、これらの総ダウンロード数は1600万回にのぼる。個々のエピソードをみても、30万回以上再生されたポッドキャストはたくさんある。もっとも注目が高まった3月5日には、Acastのネットワーク全体で、コロナウイルス関連のポッドキャストが87万5000回以上も再生された。

「パブリッシャーも消費者も、非常に迅速に更新可能な、信頼がおける長尺の情報源に回帰している」と、ポッドキャスト専門コンサルタント企業、4DCでグループマネージングディレクターを務めるピーター・ミッチェル氏はいう。通常パブリッシャーは月ごとに配信予定の番組の内容を決めると関係者はいう。「ニュースはポッドキャストのジャンルのなかでもっとも急成長している。成長していることは驚くことではない」。

広告主はさほど警戒していない

2月、ガーディアンのコロナウイルス関連記事は合計で1億を超えるページビューを叩き出した。アウトブレイクがはじまった時点からの合計で、BBCのコロナウイルス関連記事は2億1700万ページビューを獲得した。広告主の多くは「コロナウイルス」をキーワードブロックリストに入れている。けれども番組単位でみると、ポッドキャストにはこのような意味に基づくコンテンツ認証やブロックの手法は存在しない。広告主は、政治やニュースといったジャンルに特化したバーティカルへの広告提示を止めることはできるが、Acastによれば、ブランドはシリアスなニュースのポッドキャストの隣に表示されることをさほど警戒していない。

「広告主にはバーティカル全体から手を引く選択肢もあるが、これまでも現状もそうした事態は起きていない」と、Acastの英国コンテンツディレクター、サム・シェタビ氏は話す。

それどころか、健康への懸念の高まりをうけて、健康関連の音声広告の数は増加していると、音声広告プラットフォームのベリトニック(Veritonic)でCEOを務めるスコット・シモネッリ氏はいう。ヘルスケア・健康用品、衛生用品に関連する音声広告(うち約20%がポッドキャスト広告)は、1月以降ほぼ倍増した。ただし、これらの一部は通常の風邪やインフルエンザの季節に応じたものだ。具体的に「ウイルス」に言及した広告は、ここ2週間でゼロから20にまで増えた。さらにシモネッリ氏によれば、健康関連広告の関連性スコアは10〜15%増加したという。

「私がブランドや広告主なら、この事態をどう利用するか考える。人々の健康への意識が高まっている情勢を意識して、健康用品の利点をアピールするだろう」と、シモネッリ氏は話す。

パブリッシャーサイドの考え方

しかし、パブリッシャーはウイルス(のパンデミック)を食い物にしていると見られることに抵抗感を覚えている。Acastネットワークのパブリッシャーの多くは、コロナウイルス関連の番組から広告を外している。「それが誠実な公衆衛生サービスのあり方だと、パブリッシャーは考えているのだ」と、シェタビ氏は語った。

広告が提示されたとしても、そこからの収入は微々たるものだ。Acastの場合、スポット広告のCPMは12〜18ポンド(約1560〜2340円)で、価格は市場とターゲティング能力によって決まる。あるポッドキャスト番組が30万回再生された場合、そこからの広告売上は、スポット広告で推定およそ5000ポンド(約65万円)だ。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)