鈴木杏樹

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「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。

第37回 鈴木杏樹

 2016年以降、芸能人の不倫報道が続いていますが、全員が同じペナルティーを受けているわけではないということにお気づきでしょうか? レギュラー番組を降板して休業に追い込まれる“ヤバ不倫”もあれば、特におとがめなく、場合によってはテレビでそれをネタにする“ヤバくない不倫”もあるのです。

【写真】意外と地味めな鈴木杏樹の私服、直撃時もメイクばっちりの斉藤由貴など

 つまり、不倫のペナルティーは一律ではなく、「人それぞれ」なわけですが、ここに一定の法則性があるように私は感じています。

 2月13日号の『週刊文春』が女優・鈴木杏樹が新派の俳優・二代目 喜多村緑郎との不倫を報じたとき、「この不倫はヤバくないやつだ」と思いました。例によってワイドショーはこのネタを話題にしましたが、杏樹はラジオ番組こそ降板したものの、それ以上のペナルティーを背負う気配は今のところありません。

 それでは、芸能活動休止に追い込まれる“ヤバ不倫”と“ヤバくない不倫”の境目はどこにあるのか、考えてみたいと思います。

ビートたけしや渡辺謙の不倫は好意的に受け止められる

■不倫の法則の大原則:男性芸能人は“ヤバ不倫”にはならない

 矢口真里やベッキーは不倫のために、レギュラー番組を降板し、芸能活動を休業せざるをえなくなりましたが、2016年に始まった不倫報道がもとで、休業に追い込まれた男性芸能人はいません。不倫はほめられたことではありませんが、同じことをしても、男女ではペナルティーの重さが違いすぎる。これは日本が女性の貞操に厳しい国であることの表れと言えるのではないでしょうか。

■不倫の法則(1)
カネを稼げるオトコの不倫はおとがめなし

 芸能界は売れている人が高額なギャランティーをもらう世界ですが、そういう仕事のできる男性の不倫が案外、好意的に受け止められています。

 例えば、タレントで映画監督のビートたけしは2月8日に18歳年下のビジネスパートナーの女性との再婚を発表しましたが、前妻との結婚時からこの女性との交際、つまり不倫を『週刊文春』が報じています。しかし、番組降板などの動きはありませんでした。

 国際的に活躍する俳優・渡辺謙も同様です。前妻である女優・南果歩の乳がん闘病中に元ホステスと不倫していたことを『週刊文春』に報じられました。「よりによって妻がいちばん夫のサポートを必要とするときに裏切りやがって」と言いたいところですが、この人も特に大きなおとがめはありません。

 これは「オトコは遊ぶもの」という日本の男尊女卑的な発想と、売れている人には文句を言いにくいという、芸能界の「勝てば官軍」体質を表しているでしょう。もっとも一般人でも、勤務先の社長や重要な取引先の人が不倫をしていたとしても、「それはヤバいですよ!」という人はいないでしょうから、長いものに巻かれるのは、どこの世界も同じなのかもしれません。

■不倫の法則(2)
カネをかけない不倫もおとがめなし

 俳優・袴田吉彦のグラビアアイドルとの不倫を『週刊新潮』が報じました。袴田はこの女性と10回ホテルに行き、そのうちの7回はアパホテル。メンバーズカードでポイントをためていたそうです。

 俳優・原田龍二の不倫は、カネをかけないという意味ではさらに上を行きます。逢瀬(おうせ)の場所は、原田の車。『週刊文春』によると、「女性と待ち合わせをすると、自分が後部座席に移ってきて、下半身をポロン。終われば最寄り駅まで送られてバイバイ」だったそうです。

 袴田・原田からは、「カネをかけずにセックスしたい」という気持ちが伝わってきます。このような「欲求さえ満たせればいい」という精神性の低さが明らかになると、相手の女性側は「単にカラダ目的のオトコに遊ばれた」とみなされることもあります。女性から見ると、ちっともうらやましくない不倫ですし、袴田・原田とも既婚であることを公にしているので、妻子持ちと知っていて応じた女性も非がないとは言いきれないでしょう。こういう不倫は炎上しません。

矢口真里やベッキーは1年以上の休業に追い込まれた

 それでは、女性芸能人の不倫はどうでしょうか。

■不倫の法則(3)
女性タレント、アイドル、女子アナは未婚・既婚問わず“ヤバ不倫”になる

『週刊女性』が報じた元モーニング娘。の矢口真里の不倫。夫の出張中に男を自宅に引っ張り込んだところ、予定より早く仕事を終えた夫が帰宅して、鉢合わせ。非難が殺到し、約1年5か月の間、芸能活動を休止しました。

 ベッキーは『ゲスの極み乙女。』のボーカル・川谷絵音と不倫関係に陥り、妻を差し置いて、川谷の実家に二人で帰省する姿を『週刊文春』に撮られています。好感度の高いタレントとして、CM契約も多かったことからすぐに会見を開いて不倫関係を否定しますが、「(記者会見で二人の関係を)友達で押し通す予定!」というLINEが流出。ウソをついて不倫関係を維持し、略奪婚をたくらむ腹黒さを露呈してしまいました。このLINEが火に油を注ぐ形になり、約1年の休業に追い込まれてしまいました。

 フジテレビの秋元優里アナは『週刊文春』に妻子あるプロデューサーとの、野外での密会を撮られてしまいます。秋元アナも既婚者で幼い子どもがいましたから、W不倫ということになります。騒動の責任を取って、フジテレビは秋元アナのテレビ出演を見合わせると発表します。秋元アナはアナウンス室から総合事業局コンテンツ事業センターコンテンツ事業室に異動しますが、この人事に不倫が無関係とは言い切れないでしょう。

 この3人は不倫をしたことで、休業したり、仕事を手放すはめになっています。これは彼女たちの主な支持層が男性だからではないでしょうか。女性芸能人にだけ“清純派”というカテゴリがあることが示すとおり、女性芸能人は「世の中の汚れを知らないこと」、具体的に言うと、「(性的に高い魅力を誇りながら)性的な経験が少ないこと」が求められます。そのイメージから逸脱するような行為を「手ひどい裏切り」だと感じる男性もいるのではないでしょうか。

 また、女性にとっては、自宅に間男を連れ込むという矢口のズルさ、いい子アピールしながら、虎視眈々(こしたんたん)と略奪婚しようとしたベッキーのしたたかさ、幼い子どもをほっぽり出しての秋元アナの不倫は、彼女たちの「ウラの顔」を垣間見たような気がして、嫌悪を感じるのだと思います。バッシングが過熱するのは、男女双方の神経を逆なでしたからかもしれません。

 しかし、叩かれない女性芸能人もいるのです。

■不倫の法則(4)
オバサンの不倫は叩かれない

 女優・斉藤由貴は『週刊文春』に医師との不倫を報じられました。男性が斉藤の待つマンションを訪れ、手を恋人つなぎしての映画デートなど、状況証拠的には「これは不倫してる」感マンマンだったのですが、会見で斉藤はあくまでも医師と患者との関係であると不倫を否定しました。しかし、『FLASH』に、二人のキス写真や医師が斉藤のものと思われる下着を頭からかぶっている写真が掲載されます。斉藤は不倫を認め、謝罪します。

 女優・藤吉久美子も『週刊文春』に50代のテレビ局プロデューサーとの密会を撮られ、号泣謝罪会見を開きました。

 ミス慶応を経て、NHKに入局した與芝由三栄(よしば・ゆみえ)アナウンサーは、映画監督と腰に手をまわしながら花見をし、マンションの一室に消えていったと『週刊文春』が報じています。二人とも既婚者ですから、W不倫です。

 が、この3人は休業に追い込まれてはいません。斎藤は大河ドラマや契約中のCMの降板はありましたが、その後も多くの仕事をしています。このように女優や女子アナといえども、オバサンの不倫は注目を集めないと言えるのではないでしょうか。

斉藤由貴の不倫に憧れを抱く女性も

 若くない女性の不倫に対し、女性は是非を問うのではない見方をするようです。斉藤由貴の不倫について、SNSで「あの年齢で、お医者さんと恋愛できるのがうらやましい」という書き込みがありましたが、女性の加齢に厳しい国だからこそ、オバサンで恋愛している人が尊敬されることもあるのです。

 鈴木杏樹もこのカテゴリです。「芸能人なのにオジサンと海できゃっきゃして、帰りにラブホによるなんて、若者みたいだな。よっぽど恋しているんだな」と思う人もいるでしょう。正面きって支持する人はいないけれど、それほど叩かれもしない。つまり炎上しない不倫になります。

 しかし、オバサンの不倫はおとがめなしと言っても、その女性の夫が有名人で愛妻家ウリしていたり、富豪だったりすると話は別になってくるのではないでしょうか。こうなると「うらやましい」を通り越して、「あんないい夫がいながら、不倫するなんてひどい、ズルい」とバッシングがものすごくなる可能性はあります。

 つまり、女性の不倫が叩かれるかどうかは、「ズルい」と「うらやましい」のさじ加減で決まると言えるのではないでしょうか。

 何かとリスクの大きい女性芸能人の不倫。それでも、やめられないくらい、甘美なものなのかもしれません。せめて、休業に追い込まれるような“ヤバ不倫”だけは避けてほしいと思うばかりです。

<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」