インスタグラム(Instagram)がeコマース機能を強化するなか、インスタグラムのアプリ内決済機能であるチェックアウト(Checkout)を利用しはじめるブランドが増えている。

インスタグラムでは、すべてのブランドやビジネスが自社のアカウントで商品タグを利用したり、デジタルストアを構築したりできる。だが、eコマースサイトへ移動せずにインスタグラムアプリ内で買い物ができるチェックアウトを利用できるのは、一部のブランドに限られている。アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)やホリスター(Hollister)が最近になってチェックアウトの利用をはじめるなど、この機能を利用できるブランドは数週間ごとに増えているようだが、現時点でどのブランドが利用できるのか、将来すべてのビジネスが利用できるようになるのかといったことはわかっていない。

チェックアウト機能には、まだ不明点がたくさんある。半年ほど前にインスタグラムと話し合いを行ったという比較的小規模なD2C(Direct to Consumer)ブランドのマーケターは、チェックアウトを利用するメリットがデメリットを上回ることはないと述べている。このマーケターは、数週間のやり取りの末、チェックアウトを使用しないことに決めた。ほとんどの小規模ブランドにとって、この機能を利用する意味はあまりないというのが、この人物の見解だ。

匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回はこのD2Cブランドのマーケターに、インスタグラムのチェックアウト機能が新興のD2Cアパレルブランドにフィットしない理由について語ってもらった。

◆ ◆ ◆

――そもそも、あなたが自社ブランドでチェックアウト機能を利用するというアイデアに惹かれた理由は?

私は当初、この機能を使って多くの見込み客を顧客に転換したり、ブランドを成長させたりできると考えていた。もちろん、それにはコストがかかるだろうが、大きな規模になっていた可能性もある。我々の顧客はすでに(インスタグラムを)利用しており、チェックアウトを使ううえでの障害は少なかった。我々のサイトを使うより少ないほどだ。顧客が(すでにチェックアウトを使っている)ほかのブランドから商品を購入していれば、配送先住所やクレジットカードなどの情報がすべて登録されているため、その顧客はチェックアウトボタンをタップするだけで買い物ができる。それに、先発優位性があることも魅力的だった。当時、15〜20社ほどのブランドが候補にあがっており、我々も初期メンバーの1社になれる可能性があった。

――では、最終的に利用しないことに決めたのはなぜ?

統合プロセスを検討していたときに、非常に気になる点が出てきた。それは、インスタグラムが5%という高額の取引手数料を徴収することだった。彼らがますます多くの顧客をもたらしてくれることを考えれば、理解できなくもない。だが、考えてみれば、ほとんどのブランドは決済プロセッサーのストライプ(Stripe)を利用し、取引1件につきおよそ2.9%プラス30セントの手数料を支払っている。したがって、すでに支払っている手数料にさらに2%の金額が上乗せされるわけだ。いまの顧客ベースから多くの売上がもたらされるようになっても、その損失を負う価値があるのかどうか疑問だった。

(Facebookの広報担当者は次のように語っている。「インスタグラムは5%の販売手数料をテストしているところだ。この資金は、チェックアウトを可能にするためのプログラムや製品の開発に投じられるほか、取引に関わるコストを補填するために使われる。チェックアウトはクローズドベータの段階であるため、販売手数料もこのテストの対象であり、今後変更される可能性がある」)。

また、(チェックアウトの)カスタマージャーニーとプロセス、そしてマーケティングに及ぼす影響についても考えるようになった。インスタグラムは常々、「あなた方が顧客に対してマーケティング活動を行うことはできないし、取引に関するメールを送ることもできない」と述べていた。つまり、注文確認メールや配送確認メールをブランドから送信することは一切できない。それを行うのはインスタグラムだ。マーケティングの観点からみれば、このような機会はすべてチャンスであり、タッチポイントでもある。たとえ単なる取引確認であっても、ブランドが(顧客と)コミュニケーションする機会なのだ。そのような機会を我々は取り上げられることになる。それでは全体的に見て最高の体験とはいえないため、我々は(チェックアウトを)使わないことにした。

――インスタグラムはどのようなデータを提供すると説明していた?

注文処理に必要なデータは提供してくれる。だが同時に、そのデータを使って行っても良いことと良くないことを彼らから指示されることになる。購入客へのマーケティング活動が許可されないなら、その客はもはや我々の顧客とはいえない。インスタグラムの顧客だ。こういった問題はAmazonでも見られる。彼らは顧客データを保有し、そのデータを利用する権利を保持する。その反面、注文処理では極めて厳格なルールが(インスタグラムによって)定められている。たとえば、顧客から(返金リクエストや注文の問題に関する)問い合わせがあったら、ブランドは48時間以内に返信する必要がある。もちろん、我々もぜひこのような対応を行いたいと思っているが、クリスマスシーズンや大規模セールの時期など、注文が多いときにはすぐに返信できないことがあるだろう。そのほかにも、注文処理(のルール)では顧客が注文してから3日以内に商品を出荷することが求められる。(インスタグラムが)協力してくれるとは思うが、小規模な広告主やブランドで、アカウントやユーザーネームが停止され、アクセス手段や救済措置が一切提供されない事例が見られるため、私はそのような事態を懸念した。

――自らの経験に基づいて、チェックアウト機能に関して、ほかの小規模ブランドに知っておいてもらいたいことは?

我々のブランドは十分な資本力があるし、我々と同規模の企業の多くは、小売店やカタログを活用したオフラインマーケティングを適切に実行したり、そうした戦略へ移行したりすることができる。だが、もっと小規模なブランドの多くは、Facebook、インスタグラム、Snapchat(スナップチャット)といった有料プラットフォームに大きく依存している。そうしたブランドがチェックアウト機能のようなものを利用すると、自社のビジネスがインスタグラムやFacebookのマーケティングに依存する(ことになる)。したがって、すべての卵をひとつのカゴに盛ることになるのだ。チェックアウト機能を使うと、顧客ソースがインスタグラムによって管理されるようになる。しかも、単にマーケティングのためにインスタグラムと提携していたときより、はるかに厳格に管理されるようになる。

また、チェックアウト機能を利用するには、ショッピファイ(Shopify)との統合が必要になることもわかった。しかも、いったんチェックアウト機能を利用すれば、この統合を取り消す方法はない。そのため、5%の手数料やマーケティングと注文処理に関するルールに縛られるようになる。

(Facebookの広報担当者は次のように語っている。「我々はあらゆる規模のビジネスがチェックアウト機能のテストを行うためのさまざまな方法を提供している。独自開発のコマース管理ツールを使用したり、さまざまなプラットフォームから選択したり、APIと直接統合することも可能だ」)。

KATIE RICHARDS(原文 / 訳:ガリレオ)