2点のリードを守り切れず、2−3で逆転負けを喫した青森山田。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 絶対王者が決勝で敗れた。

 強豪揃いのブロックに組み込まれながらも、大会前から優勝候補の最右翼だった。前回王者で今季は12月にU-18高円宮杯プレミアリーグ・ファイナルを制覇。青森山田の力が、頭一つ抜けていたのは間違いない。しかし、ファイナルでは2点のリードを守り切れず、静岡学園に屈した。許した3ゴールのうち、ふたつはセットプレーから。しかも、前後半の残り5分を切ってからの失点だった。守備に定評がある青森山田”らしくない”取られ方だった。

 試合後、黒田剛監督が敗因に挙げたのも失点の場面。「徹底できなかったことが悔やまれる」と振り返った通り、青森山田が掲げる守備のコンセプトを貫けなかった故の結果だった。古宿理久(3年)も、「セットプレーから失点したのは痛かった。90分通して継続出来なかったことが敗因」と唇を噛んだ。

 青森山田には相手ボールになれば、“ゴールを隠す”決まりがある。クロス対応に関しても、跳ね返すことに相当なこだわりを持ってやってきた。しかし、そのコンセプトが最後に綻んだ。

 今年は春先から失点を重ね、夏以降はより顕著に守備の問題に頭を悩ませた。8月以降、プレミアリーグEASTでは5戦未勝利。複数失点を喫し、試合終了間際に失点する試合も少なくなかった。

 指揮官もその課題を改善しようと、最後まで手を尽くした。だが、簡単に事は運ばない。大会1週間前に非公式でトレーニングマッチを行った際も、終了間際に失点。それも“ゴールを隠す”約束事を守れずに許した得点だった。

 本大会開幕後は、3回戦まで攻撃陣が好調。2試合で10得点を奪い、守備の脆さにフォーカスされる機会が少なかった。ただ、準々決勝の昌平戦では3点のリードを奪ってから2失点。うちひとつはパスミスからの失点で、危惧していた悪癖が顔を覗かせた。「守備の山田とは言いながらも平常心を失い、相手にゴールを献上する場面がいくつか見えた。そこが優勝を手繰り寄せられなかった要因」と黒田監督が話したのもそのためだ。
 ただ、この1年間が無駄だったわけではない。黒田監督は言う。

「武田(英寿/3年)以外はレギュラーが全て入れ替わった。昨年の優勝したチームと比べられながら、その中で彼らも力の無さを自覚しながら、日々成長を重ねてくれました。プレミアリーグも全敗してもおかしくない危機感を持ってスタートした中で、EASTを制してチャンピオンシップも優勝できました。彼らがここまで伸びて、こんなにも変われる。様々なプレッシャーがある中で彼らは連覇のプレッシャーと戦いながら、準優勝だけど最高の1年を過ごしてくれたと思います。この悔しさを次につなげてほしい」

 挫折を幾度も味わいながら、チーム力を高めてきた。そして、ファイナリストになった今回の選手権。その先輩たちの姿は後輩たちの目に焼き付いている。

「今回の経験を残された1、2年生が準優勝と優勝の違いを知ってもらいたい。もう1度青森に帰って、来年の強化につなげたいと思います」とは黒田監督の言葉だ。選手権の決勝は直近4年で3度目。ファイナルで勝つ喜びも負ける悔しさも知った。

 青森山田が来年どんなチームになるのか。決勝のピッチに立った藤原優大(2年)、松木玖生(1年)を中心に覇権を取り戻せれば、今回の敗北は決して無駄ではない。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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