ハイレベルな小学生プログラミング作品に審査員も驚嘆!  未来を切り拓くのは身近な人を助けたい子どもたちの「優しさ」だ

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●審査員も驚くアイデアと技術力! 小学生プログラミングコンテスト
NECパーソナルコンピュータおよびレノボ・ジャパン(以下、NECレノボ)は2019年12月7日、都内にて小学生のプログラミング技術を競う「第2回 キッズプログラミングコンテンスト」を開催しました。

2020年度からは、小学校、中学校および、高等学校にてプログラミング教育が必修化されます。
プログラミング教育の目的は、プログラミング技術を学ぶことだけではありません。
「物事を順序立てて考える力」である「論理的思考力」を養う、という大きな目的があります。
プログラミング技術自体は、論理的思考力を養う手段として用いられるだけにすぎません。

しかしNECレノボをはじめとした国内のPCメーカーや通信関連企業は、
論理的思考力を養う手段としてのプログラミング教育をさらに発展させ、未来のエンジニア育成に役立てようとしています。


コンテストでは教育機関向けマイコンボード「micro:bit」(マイクロビット)が使用された


今回のコンテストでは、全国から選ばれた8人の小学生がエントリーされました。
・自由にアイデアを披露する「自由部門」
・身近な問題を解決するためのアイデアを競う「課題解決部門」
この2部門で競われました。

エントリー作品は以下の通りです。

■自由部門
・マイクロビットバランスボード:遠藤最(えんどうかなめ)さん
・無線リモコンクレーンゲーム:網野瑛仁(あみのえいと)くん
・micro:bit messenger:秋山快誠(あきやまかいせい)くん
・りょうまのボクシングゲーム:松本遼馬(まつもとりょうま)くん


・ブザーロボット:中尾碧杜(なかおあおと)くん
・メダカのためのえさやり機:近藤結実(こんどうゆうみ)さん
・水出しビット:磯山弘樹(いそやまひろき)くん
・ぜったいにおきるめざまし時計:谷内皇太(やちおうた)くん

今回のコンテストの特徴は、単純なプログラミング技術を競うのではなく、
電子工作も含めた工学的アイデアがふんだんに盛り込まれていたことです。

例えば「無線リモコンクレーンゲーム」では、
ゲームセンターなどにあるクレーンゲームの動きを再現するために、多数のモーターを制御する必要があります。
網野瑛仁くんは、そのための制御基板やリレー回路まで製作しました。

また「メダカのためのえさやり機」では、
マイクロビットによる制御で複数回の餌やりを行うため、遠隔操作および、遠隔監視可能な装置を、レゴブロックで製作しています。

コンテストの作品はいずれも子供らしく、常識にとらわれない独創的なアイデアが満載でした。作品に触れた審査員も終始、感嘆の声を上げていたほどです。


審査員に無線リモコンクレーンゲームの操作や動作原理を教える網野瑛仁くん



メダカのえさやり機は様々な動作トラブルを創意工夫で解決。審査員もそのアイデアに思わず唸る



PCからマイクロビットへメッセージを転送し、天井や壁に投影する「micro:bit messenger」を創った秋山快誠くん。プリングルスの空き箱など、身近な素材をうまく利用したアイデアが素晴らしい



「健康器具が大好きだけど、『子どもはダメだよ』とお店で言われてしまったので自分で作ってみた」と話す遠藤最さん。「マイクロビットバランスボード」の完成度は絶妙で、審査員も夢中になって試していた



●まれにみる高レベル作品に審査も嬉しい難航
表彰式には、NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長 兼 レノボ・ジャパン 代表取締役社長のデビット・ベネット氏が登壇されました。

エデュケーション分野への取り組みとして、
・草の根からの教育活動
・成果を発表する場創り
・ロールモデルの育成サポート
これら3点を掲げ、キッズプログラミングコンテストを「子どもたちの未来を応援する」場として考えていると述べました。


NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長 兼 レノボ・ジャパン 代表取締役社長 デビット・ベネット氏


表彰は部門ごとに行われ、
・マイクロビット教育財団賞
・スイッチエデュケーション賞
・マイクロソフト賞
・最優秀賞
各賞が発表されました。

受賞内容は以下の通りです。

■自由部門
・マイクロビット教育財団賞:マイクロビットバランスボード
・スイッチエデュケーション賞:micro:bit messenger
・マイクロソフト賞:無線リモコンクレーンゲーム
・最優秀賞:りょうまのボクシングゲーム

■課題解決部門
・マイクロビット教育財団賞:ブザーロボット
・スイッチエデュケーション賞:ぜったいにおきるめざまし時計
・マイクロソフト賞:水出しビット
・最優秀賞:メダカのためのえさやり機


「りょうまのボクシングゲーム」に表示された「win」の文字の通り、見事に最優秀賞を獲得した松本遼馬くん



受賞の決め手はゲーム性の高さ。マイクロビットの加速度センサーなどを使ったゲーム性は、家庭用ゲーム機のフィットネスゲームのような楽しさだ



デビット・ベネット社長とともに記念撮影を行う近藤結実さん



審査員が唸るほどの完成度だった「メダカのためのえさやり機」は、アイデアだけでなく、ギミックなどの総合力が高く評価された



審査員を務めた、東京大学大学院 情報学環教授の越塚登氏は、
コンテストの総評として、

越塚登氏
「前回(のコンテスト)よりもパワーアップしていて審査が難しかった。

無線のシステムを使っているものも多くあり、作りが非常に高度だった。すべての作品で完成度が高かった。

10年前に私たちが取り組んでいたことを、小学生の段階でできている。今後も問題を解決するためにプログラミングを役立て、大人になった時、日本や世界を救って欲しい」

このように述べ、子どもたちの技術レベルの向上に驚きつつ、その発展に大きな期待を寄せました。


審査員一同。左から、レノボ・ジャパン 開発オペレーションズ 事業計画管理 中村鉄平氏、スイッチエデュケーション 代表取締役社長 小室真紀氏、東京大学大学院 情報学環教授 越塚登氏、NECパーソナルコンピュータ 代表取締役執行役員社長 兼 レノボ・ジャパン 代表取締役社長 デビット・ベネット氏



●子どもたちの純粋な愛や想いを大切にした教育を
本コンテストを振り返ると、自由部門、課題解決部門ともにアイデアの幅が広く、工学的にも非常に完成度の高い作品が揃っていました。

さらに、もう1つ特徴的だったことがあります。
それは「身近な家族への愛情」、「生活環境への優しい想い」です。

越塚登氏が「家族やペットへの愛や、親子の絆を感じられる作品が多かった」と評したように、
「りょうまのボクシングゲーム」は、お母さんのダイエットのために作られていました。
「ぜったいにおきるめざまし時計」は、朝なかなか起きられないお父さんのために作られていました。
「micro:bit messenger」は、遠くに住むおばあちゃんにメッセージを届けたくて作られていました。

「誰かのために」という暖かく優しい想いが、子どもたちの想像力とチャレンジ精神に火を灯し、完成度の高い作品を生み出したのです。


微笑ましく、優しさに溢れた「ぜったいにおきるめざまし時計」の開発経緯の発表に、会場からは大きな笑いと拍手が起こった


今回のコンテストを通して改めて感じたことは、
子どもたちの「純粋で暖かく、優しい想い」を実現させる手助けこそ、私たち大人が今、すべきことなのかもしれない、ということです。

プログラミング教育とその学習方法は、子どもたちの未来を広げる手段として、大きな一助となります。

越塚登氏が語った
「大人になった時、日本や世界を救って欲しい」
この言葉は、決して大げさな言葉ではありません。
誰かを助けたいという想いがなくては、広大な世界を救うことなどできないからです。

NECレノボは今後もこのコンテストを継続的に開催すると述べ、
さらに今回コンテストに参加した子どもたちのような高度なスキルを持っていなくても楽しめる、全国の図書館を利用したプログラミング活動も実施していくとしています。

デビット・ベネット氏はこのコンテストについて、
「ビジネスではなく、ほぼボランティア」
このようにも語っています。

営利企業がビジネス目的ではないコンテストを開く意義と大義こそ、子どもたちの純粋な「想い」が創る未来への希望なのかもしれません。


執筆 秋吉 健