ストリートウェアの世界では、日本が文化的なレベルで存在感を増している。

スニーカーの愛好家、いわゆるスニーカーヘッズたちにとって、藤原ヒロシやNIGO®(二ゴー)のような日本人デザイナーは崇拝の対象だ。日本の文化やデザイン的な感性は、アディダス(Adidas)とファレル・ウィリアムスのコラボ製品や、ストリートウェアと村上隆のような日本人アーティストによる多くのコラボレーションにはっきりと見て取れる。

アジア市場への事業拡大の中心と言えば中国だが、スニーカー市場の活況を背景に、スニーカーブランドにとって日本は、中国に代わる魅力的な選択肢となりつつある。

「東京は発想の源だった」

直近の事例は、スニーカーズエンスタッフ(Sneakersnstuff)だ。スニーカーズエンスタッフはスウェーデンで設立されたスニーカーの小売業者で、ヨーロッパと米国に店舗を展開しており、12月中旬に日本初となる東京店をオープンした。

「1999年に創業して以来、スニーカーとリテール事業全般のいずれにおいても、東京はいつもインスピレーションの源だった」と、スニーカーズエンスタッフの共同設立者である、エリック・ファーガリンド氏は言う。「年に何度か東京に来ている。世界進出を決めたとき、まっさきにフォーカスしたのは、ニューヨークと東京だった。というのも、私たちは常に、このふたつの都市からもっとも多くのひらめきを得てきたからだ。とはいえ、スウェーデンの企業として、東京店のオープンを準備するに先立ち、まずはヨーロッパで、会社として成長し、成熟する必要があった」。

東京店は、ストックホルム、ロンドン、ベルリン、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルスに続く第7店、アジアでは初の出店となる。日本のコーヒーチェーンのキャメルバック(Camelback)と共同経営するカフェを併設し、ニューヨーク店に併設したバー同様、イベントや展示会を催す予定という。

ファーガリンド氏の話では、事業拡大のビジョン全体のなかに、すべての市場で何百もの店舗を展開する考えはないという。最終的なプランとしては、世界中の戦略都市で10から20程度の出店を予定している。報道によると、スニーカーズエンスタッフの今年の売上は1億ドル(約109億円)に達する見込みだ。また昨年は、米国とアジアでの事業拡大に備えて、パートナーのFSNキャピタル(FSN Capital)と共同でSNSホールディングス(SNS Holdings)という持株会社を設立している。

日本に注力するナイキ

日本のスニーカー人気のおかげで、現地での出店がスムーズに運んだと、ファーガリンド氏は打ち明ける。同社が扱うスニーカーブランドも、日本でのプレゼンス拡大に関心を持っているからだ。実際、ナイキ(Nike)とアディダスはスニーカーズエンスタッフが販売する2大ブランドで、もっとも大きなパートナーでもあるのだが、両者ともに日本での事業拡大へ意欲を示している。

ナイキは、今年第3四半期にデジタル部門で36%の収益増を達成したおりにも、その原動力としての日本に、強い期待感を表明した。今年、ナイキは日本でふたつのモバイルアプリをリリースしている。ひとつはナイキブランドのアプリで、もうひとつはストリートウェアに特化したSNKRSアプリである。

「SNKRSアプリとNikeアプリは、どちらもランニングシューズに強いこだわりを持つ日本の顧客から大きな共感を得ている」と、ナイキのマーク・パーカー最高経営責任者(CEO)は3月の投資家向けの収支報告で述べている。ストリートウェアとランニングウェアには重なる部分が大きい。近年、人気の出てきたストリートウェア系のスニーカーモデルのいくつか、たとえばナイキのエピックリアクトフライニット(Epic React Flyknit)や、あるいはソールにブースト技術を使用した多くのアディダス製品のどれをとっても、そこではこれらふたつの世界が交差する。

「以来、我々は日本でナンバーワンのランニングシューズメーカーとなっている」と、パーカー氏は語る。

中国市場の影で日本も

ファッションの世界では、アジアをめぐる熱量のほとんどが中国に注がれてきた。バーバリー(Burberry)にしろグッチ(Gucci)にしろ、高級品分野のブランドは、こぞって中国に重点的な投資を行ってきた。スポーツ用品やスニーカーのブランドも、中国一辺倒で事業全体を構築しており、たとえばゴート(GOAT)などは中国の購買層向けに専用のモバイルアプリを提供している。

成長に関して言えば、日本は中国ほどの活気はない。中国はここ数年でとてつもない成長を遂げており、ドイツの統計会社スタティスタ(Statista)の調べによると、アパレル製品の売上は2015年から2019年の4年間で、2600億ドル(約28兆円)から3200億ドル(約35兆円)に増加した。一方、日本のアパレル市場は相対的に停滞気味だが、規模としては依然、感嘆すべき大きさで、前述の4年間、毎年660億ドル(約7.2兆円)前後を維持している。

反面、日本のスニーカー市場は活況が続いている。NPDグループ(NPD Group)の調べによると、2014年から2016年の間に、日本におけるスニーカーの売上は13億ドル(約1420億円)から17億ドル(約1860億円)近くまで伸びている。

日本における成功の鍵

ほかのブランドによる中国や中東への進出に見る通り、ファーガリンド氏は、スニーカーズエンスタッフの日本での出店を成功に導く鍵は、現地のパートナーとの連携にあると見ている。

「純粋にビジネス的な観点でも、また、これはもっと重要かもしれないのだが、文化的な観点でも、日本のコンサルタントたちと連携している」と、ファーガリンド氏は説明する。「我々は都市としての東京に大きなリスペクトを持っている。日本での出店を、適切に、そして敬意をもって行うことがとても重要だと考えている」。

DANNY PARISI(原文 / 訳:英じゅんこ)