音を振動と光で感じられるデバイス 富士通の「Ontenna(オンテナ)」! 目指すのは、ろう者と健聴者が共に楽しめる未来

写真拡大 (全5枚)

富士通の「Ontenna(オンテナ)」は、音を身体で感じるデバイスだ。
Ontennaは、音が聞こえない人(ろう者)向けに開発された製品である。
健聴者が耳で聞こえる音を、256段階の振動と光に変換して確認することができる。

これまでも音を振動や光に変換するデバイスはあった。
しかし時計のアラームやドアホンなど、変換できるのは特定の音に限られていた。

Ontennaは、あらゆる音に反応して変換できるため、汎用性が高く、様々な分野での応用が期待されている。

■音のリズム、パターン、大きさが身体でわかる
Ontennaは、音を振動と光で感じることができる。
約60〜90dBの音をマイクで拾い、256段階の振動と光の強さで表現してくれるのだ。

Ontennaを髪の毛や、耳たぶ、手など、音を感じやすい身体の部分に取り付けると、音のリズム、音のパターン、音の大きさを振動と光で知ることができるという。

また音ズーム機能を利用することで、
・人が集まる場所は大きな音(約80〜90dB)
・静かな場所は小さな音(約60〜90dB)
音を拾う範囲を環境や状況にあわせて変えることもできる。


充電器で充電しているOntenna


Ontennaの操作には、
・シンプルモード
・スマートモード
この2つのモードが用意されている。

シンプルモードは、
Ontenna本体のマイクで拾った音を、振動や光で感じるモード。
鳥や虫の鳴き声だけでなく、自分で演奏するリコーダーの音を確認したいときにも使用できる。

スマートモードは、
Ontennaコントローラーと通信をして、音を振動や光で感じるモード。
Ontennaコントローラーの丸いボタンを押し、複数のOntennaの利用者に合図(振動と光)を送ることができる。またOntennaコントローラーに接続したマイクに太鼓などの楽器を繋げれば、その楽器の音を複数のOntennaと共有できる。


丸い大きなボタンが特徴的なOntennaコントローラー。


OntennaとOntennaコントローラーとの無線通信には、920MHzの周波数帯が採用されている。電波干渉も多く、機器と正常に繋がらないこともある一般の無線LAN 2.4GHzとは異なり、安定した接続を実現している。見通し50m以内であれば、複数のOntennaと通信ができる。

実際にOntennaを体験すると、
音が鳴ると普段聞き慣れている音が、音の大きさに合わせて、振動と光の大きさが変わる。
この体験は、不思議な感覚だった。


Ontennaコントローラーにマイクを接続すれば、太鼓の音をOntennaで体感できる。


Ontennaは今年(2019年)の6月に発表。8月に発売されたばかりだが、学校への導入もあり、数千台がすでに出荷されている。

Ontennaの本体サイズは、W65×D24×H15mm、重さ18g。
バッテリーは内蔵型で、98%までの充電は約4時間、満充電までは約8時間。
満充電後、Ontennaコントローラーのボタンを1秒押して、2秒静止するのを繰り返した場合、約3時間の連続使用が可能だ。
本体は、子供が落としても簡単に壊れない作りになっている。
価格は2万4,800円(税別)
充電スタンド付。Amazonで購入が可能。

Ontennaコントローラーは、本体サイズがΦ68×H22mm、重さが33g。
価格はコントローラー 2万9,800円(税別)
充電スタンド付。Amazonで購入が可能



■様々な分野に応用できるデバイス
Ontennaは、富士通マーケティング戦略本部の本多達也氏が開発した。
Ontennaというユニークな発想は大学時代から持っていて研究を続けてきた。
富士通に入社した際、当時の役員が本多達也氏を評価し、Ontennaの研究を続けさせてくれたという。その後、3年間のフィールド実証などの研究を重ね、ようやく今年、製品化にこぎ着けた。

Ontennaは開発当初、光の変革のみだったが、現在は振動も加えたという。
振動を発生するモーターは、スマートフォンに内蔵されているモーターと基本的に同じとのこと。

振動には肌(触覚)で直接感じられるという大きなメリットがある。
振動は、聴覚と比べて衰えづらく、障害の有無、言語の違いに関係がなく、誰でも同じ体験ができるからだ。

富士通は今年の7月、能楽協会とパートナーシップ契約を締結。能楽でOntennaを試したところ、舞台の音の広がりを体感できたという。
また、Ontennaコントローラーをパソコンに繋げてOntennaを制御するアプリケーションがすでに開発されているという。これを使えば、救急車の音のような特定の音(周波数)にも反応できるそうだ。ゆくゆくはOntenna単体で、それができるようにしたいとのこと。

来年には「東京2020オリンピック・パラリンピック」も開催されるが、富士通ではOntennaをとおして、ろう者と健聴者が共に楽しめる未来を目指しているという。


一部のろう学校では、発話の練習や音のマナーの学習でOntennaが利用されている。


Ontennaは、このほか、Jリーグやe-Sportsなどのスポーツイベントへの応用が期待されている。


ITライフハック 関口哲司