作業服チェーン「ワークマン」が好調だ。既存店売上高は24カ月連続で前年越え。店舗数は843店で国内だけならユニクロを上回っている。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「ワークマンは一般客向けの新型店を増やしはじめたばかり。ユニクロとの店舗数の差は今後さらに広がっていくだろう」と分析する--。
写真提供=ワークマン
ワークマンプラス川崎中野島店 - 写真提供=ワークマン

■既存店売上高が24カ月連続で前年超え

ワークマンの快進撃が止まらない。9月の既存店売上高は、前年同月比16.1%増と大きく伸びた。前年超えは9月まで24カ月連続だ。既存店売上高の2019年4〜9月累計は前年同期比27.8%増と、大幅な増収となっている。

特に大きく伸びたのが8月だ。54.7%増と驚異的な伸びを見せている。猛暑日が続いたことから、空調ファン付きウエアや冷感機能付きウエアなど夏物商品が好調だったことが寄与した。

なかでも空調ファン付きウエアは、アウトドアやスポーツ観戦などでも着用できるカジュアルデザインのラインアップを増やしたことが奏功し、売り上げを大きく牽引したという。

ワークマンの空調ファン付きウエアは、腰の部分に付いている小型のファンが服の中に外気を入れ込み、体の表面に風を流し込むことで暑い日でも涼しく快適に過ごすことができる仕様になっている。

赤や黄色、青といったポップな色のものを取りそろえ、作業服感を払拭することに努めたカジュアルライン「ウィンドコア」は、ジャケットタイプがファンとバッテリーのセットで1万5900円(税込、以下同)、ベストタイプが1万4900円。プロ客向けの屋外作業用空調服がセットで2万円を超えるのと比べても割安だ。

■作業服をスタイリッシュにして一般客にヒット

この空調ファン付きウエアのヒットが、ワークマンの強さを端的に示している。ここ数年の猛暑を受けて、作業現場などで空調ファン付き作業服が広がっているが、ワークマンはアウトドアやスポーツ観戦などでも着られるスタイリッシュなデザインのものを開発して一般客向けにも販売し、ヒットさせることに成功した。こうした芸当はワークマンならではだ。

ワークマンはもともとは建設現場などで働くプロ客向けの作業服を得意としていた。そこに、ファッション性の高い作業着を開発することで新たな顧客の獲得に成功したわけだ。

結果、「業務用の防寒着がバイクユーザーに」「プロ向け雨具が登山ユーザーに」といった現象が起きるようになり、裾野が広がっていった。こうした変化を受けて、一般客向けの衣料品も扱う新型店「ワークマンプラス」を18年9月から展開している。

■一般客向けのプライベートブランドを充実

ワークマンの成長の原動力となっているのが、プライベートブランド(PB)だ。アウトドア向けの「フィールドコア」、スポーツ向けの「ファインドアウト」、レインスーツの「イージス」の3ブランドを主力に、約1000アイテムを展開している。PB商品の19年3月期の売上高は前期比44%増の368億円と大きく伸びており、全体における売上比率は40%にも上る。一般客向けを強化したことが奏功した。

今期(20年3月期)も強気の姿勢だ。PB売上高は前期比45%増の536億円を見込む。フィールドコア、ファインドアウト、イージスの3ブランドで310億円とした。

今年の夏は空調ファン付きウエアに注目が集まったが、この秋冬に注目すべきは「着るこたつ」になるだろう。

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「ウィンドコア ヒーターベスト」(9800円) - 写真提供=ワークマン

商品名は「ウィンドコア ヒーターベスト」(9800円)で、ベストの中に電熱線が入っており、スイッチを入れると暖かくなる仕様になっている。温度は50度、45度、40度の3段階で調節できる。まさにこたつを着るかのようだ。空調ファン付きウエアと同様にヒット商品になるとの見方がもっぱらだ。すでに口コミなどで人気を集め、店舗の在庫は品薄あるいは完売になっているという。

■ベーシックなデザインで大量生産を実現

ワークマンはこういった機能性が高い商品を低価格で販売することで成長を遂げた。近年はファッション性も高まっており、競争力が大きく高まっている。

PBの3ブランドで低価格を実現できているのは、一般客もプロ客も利用できるベーシックなデザインが中心だからだ。それゆえ10万着単位での大量生産ができる。生産コストを大きく低減したうえで、プロ客向けの店舗でも販売ができるため、全国800店超の店舗網を存分に活用できる。

実はワークマンの店舗数は、ユニクロ(国内)よりも多い。8月末時点の店舗数はユニクロが817店なのに対しワークマンは843店だ。ユニクロの店舗数は減少傾向にあるが、ワークマンは増加傾向にある。

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ワークマンプラス テラスモール松戸店 - 写真提供=ワークマン

特に増えているのが一般客向けの「ワークマンプラス」で、全国843店のうち31店を占めている。展開から約1年でこれだけ増えているのだ。ワークマンは「2025年1000店体制」を目指しているが、今後の出店はほぼ全てワークマンプラスで行うという。ユニクロとの店舗数の差は今後さらに広がっていくだろう。

■ワークマンとユニクロの共通項

ワークマンとユニクロは似ているところが多い。特に共通するのが「機能性の高い衣料品を低価格で販売する」というコンセプトだ。

またビジネスモデルも似ている。ユニクロは製品の企画・開発から生産、物流、販売まで一貫して手がける製造小売り(SPA)として知られているが、ワークマンもSPAを志向している。自社開発製品の割合は35%とまだまだだが、年々高まっている。

一方で店舗展開の方式は大きく異なる。ユニクロは直営店がほとんどでフランチャイズ店は5%ほどにすぎない一方、ワークマンは直営店が少なく、9割程度がフランチャイズ店だ。ただ、この違いは成長を遂げる上では大きな意味を持たない。どちらも一長一短があり、どちらか一方が優れているということではない。単に手法が違うというだけだ。

■ファーストリテイリングも堅調

ワークマンと、ユニクロを展開するファーストリテイリングの業績はともに好調だ。ワークマンの19年3月期単独決算は、売上高が前期比19.4%増の669億円、営業利益は27.6%増の135億円、純利益は25.1%増の98億円だった。積極的な出店で店舗数が増えたことに加え、既存店が好調だったことが寄与し、大幅な増収増益となった。

一方、ファストリの19年8月期連結決算(国際会計基準)は、売上高が前期比7.5%増の2兆2905億円、営業利益が9.1%増の2576億円、純利益が5.0%増の1625億円だった。

このうち、国内ユニクロ事業の業績は、売上高が0.9%増の8729億円、営業利益は13.9%減の1024億円だった。既存店売上高が1.0%増と堅調だったため同事業の売上高は増収となったが、暖冬の影響や春夏商品の早期の在庫処分により粗利益率が低下したことが響き営業減益となった。

■ワークマンの課題は売場効率の向上

ワークマンとユニクロは「機能性が高い衣料品を自社で開発して低価格で販売することを強みとしている」という点で共通しており、それが急成長の大きな原動力となってきた。この一致は偶然ではないだろう。同業他社は学ぶべき点が多くあるのではないか。

もっともユニクロは国内では飽和に達しつつあり、今後は大きな成長が望めそうもない。一方、ワークマンはこれからだ。店舗数はユニクロを上回っている。今後、1000店体制となるのも十分ありえる話だ。当面の課題は売場効率の向上だろう。店舗数に比べて、ワークマンの売上高はユニクロよりもはるかに小さい。ユニクロと競合するような駅前立地に出店した場合に、十分な売り上げを確保できるか。今後の展開を注視していきたい。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)