大打撃!「外食の税率10%」を乗り切る新常識
10%に消費税が値上がりましたが、少しでも外食を安く済ませるにはどうしたらいいでしょうか?(写真:プラナ/PIXTA)
いよいよ消費税10%時代がスタートした。今回の増税では、2人以上の現役世代家族の場合で、年間4万円程度の負担が増えると試算されている。月に直すと3400円〜3600円ほどだ。居酒屋で仲間と飲んだら1回そのくらいではないだろうか。
今回、飲食料品が軽減税率の対象だが、外食や飲み代は対象外。外食が多めの家庭にとっては、いっそう負担が増すことになる。
「節約したいもの」で「外食」はトップ
この増税にあたり、さまざまな企業がアンケート調査を行っている。外食が軽減税率の対象外であることは広く認識されており、「消費増税後に節約したいものは?」という問いには外食が上がることも多い。
例えば、電子チラシサービスShufoo!(シュフー)が行った消費税増税に関する意識調査でも、節約したいものについて複数回答で聞いた結果は「外食」が53.4%とトップだったという。
外食にはフードコートなどでの飲食も含まれる。コンビニのイートインスペースでの飲食も10%だ。
これを決めた政府の偉い人は、残念ながらわかってない。今や共働きがあたり前の時代、主婦だって手をかけて料理を作る暇はない。そういうときは、フードコートでササッと夕飯を済ませたいこともあるのだ。外食は一概に高くつくわけではない。逆に、野菜の値段が高騰したりすると手作りするより安上がりだったりもする。
さらには一人暮らしの高齢者にもこうしたフードコートは心強い味方だ。平日の昼間に、大手スーパーを覗いてみればいい。いかに多くのご老人たちが、イートインやフードコートでお昼を食べているかがわかるから。外食=生活必需品ではなく贅沢品というのは、お役人たちが高級な外食ばかりしているからなのかと勘繰りたくもなる。
オフィス街のコンビニでは、おにぎりとカップ麺をイートインスペースに運んでいるビジネスパーソンも多いのだ。このささやかなランチタイムすら、それは外食ですから10%いただきますと言われたら立つ瀬がないのではないだろうか。
同じ祭りでも肉フェスは10%、お祭りの屋台は8%?
せっかくなので、この“摩訶不思議”な軽減税率の境界線について、もう少し語ろう。さすがに国も説明不足だと思ったか、8%なのか10%なのかの線引きについて国税庁(国税庁消費税軽減税率制度対応室)が106ページにも及ぶQ&Aで説明している。
「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」というもので、実に細かい。先ほどのスーパーの事例では、フードコートやイートインスペースが外食扱いなのは、食品の販売者が飲食のためにイスやテーブルを用意しているから、というのが理由だ。イートインスペースではない、店内の休憩用のベンチで食べたとしても、やっぱり10%となるという説明だ。
しかし、バックヤードでスーパーの店員が買ってきた食品を食べることがあっても、それは8%でいい。お客が飲食に利用しないバックヤードは、飲食を提供する施設にはあたらないからという理由らしい。
この「飲食を提供する側」が肝で、肉フェスなどのフードイベント等で、食事の提供業者が自ら(あるいは使用許可を得て)飲食用のテーブルやイスなどの設備を設置していると、やはり10%対象となる。逆に、テーブルやイスを備えていないなら軽減税率の対象でよいので、この理屈を当てはめれば、お祭りの屋台で綿あめを買ったときは8%でいいはずだ。しかし、同じ屋台で焼きそばを売り、お客のためにと親切心でうっかりイスを置いてしまうと10%だと指摘されかねない。情けが仇になってしまうというわけだ。
よく話題になるテイクアウトとイートインで、「同じ商品なのに税率が違う問題」もややこしいが、これには新しい動きが起きている。お客のマイナスイメージを払拭するために、税込み価格を統一するチェーンが増えてきているのだ。
ファストフードでは、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、バーガーキングは、「店内での飲食」と「お持ち帰り」の税込み価格を統一するとした。しくみとしては増税になる店内飲食の本体価格を値下げすることで対応している。
他の飲食チェーンでも、「すき家」「松屋」「天丼てんや」が統一価格方針(一部商品の場合もあり)。タリーズコーヒーは本体価格表示を採用、税率は持ち帰りと店内で異なることになったが、本日のコーヒーSやカフェラテSなどの人気商品は本体価格そのものを値下げするという。10月31日までの期間限定だが、日高屋でも人気メニューの餃子(6個入り)を210円(税抜)から155円(税抜)に値下げして販売する。
こう見ていくと、外食産業への逆風は増税だけでなく、利益率も圧迫しそうだ。これらの身近な外食チェーンは所得が簡単には増えない庶民のよりどころでもあり、数円でも値上げすれば客にそっぽを向かれかねない。事業者としては、税率が10%になります、すみません、では済まないのだ。消費者としてはありがたいことだが、その結果、値下げ圧力が強まり、ますますデフレに拍車がかかりそうな気がするのは筆者だけだろうか。
「ホットペッパーグルメ外食総研」が発表した、増税前に外食で食べておきたいものに関する調査によれば、1位「焼肉・ステーキ」、 2位「すし」となったそうだ。やはり単価が高いものに重税感があるといえる。
しかし、もしかすると、それは逆かもしれない。今回政府が行うキャッシュレス還元策が恩寵となるかもしれないのだ。
高級外食ほど5%トクになる?
この「キャッシュレス・消費者還元事業」では、中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店等でキャッシュレス支払いを行った場合、5%の還元が受けられるという話はご承じのとおり。サービス業なら資本金または出資金の総額が5000万円以下、従業員数は100人以下だ。個人経営の飲食店はバッチリ該当するはずだ。
例えばカリスマオーナーシェフが切り盛りするような予約を取りにくい人気店だって、企業の規模で言えば中小だ。しかも、高級店であればたいていカード払いに対応している。新しく設備を導入する必要も少ないだろう。
2020年6月いっぱいまでのキャッシュレス還元期間なら、チェーンの低価格の店より個人経営のこだわりレストランのほうがオトクに還元が受けられる可能性が高いということになる。ただし、その店が今回の事業に登録している必要はあるが、店が費用を負担するわけではないので、そこはプライドは捨てていただくよう勧めたい(ちなみに条件に合っていても課税所得15億円を越えるとダメだそうだが、そんなに稼いでいるオーナー経営者ならもっと節税対策もしっかりやっていると思われる)。
高級外食なんて利用しないよ、という人もご安心を。先日、経産省がリリースした還元対象店を地図上で表示する公式アプリを手に、渋谷の繁華街を歩いてみた。すると、居酒屋も焼肉屋もイタリアンも、そしてカラオケボックスも、対象店としてどっさり表示されたのだ。
そもそも店が還元対象になるためには、支払い手段となるキャッシュレス事業者が代行して登録を済ませる手続きになっているが、かなりその営業力が発揮されているとみた。この分では、飲み代の税額アップには悩まされずに済みそうだ。
さて、ではその還元対象に入りそうにない居酒屋チェーンなどはどうなるか。
これも決済事業者が頑張っている。例えば楽天ペイは、この事業の対象になっていない加盟店であっても5%還元を行うキャンペーンを発表した。この中には白木屋・魚民などモンテローザ系の居酒屋も含まれている。還元の期間は10月1日から2020年6月いっぱいと、国の事業と同じ期間だ。
これはあくまで予測だが、今年の忘年会シーズンは「早期予約で10%還元キャンペーン」など、客を呼び込む実質値下げが行われるのではと思う。ネットの予約サイトも、今年はポイント付与率を引き上げるなどして猛アピールするのではないだろうか。
しかしながら、考えてみれば外食こそ景気に左右される支出といえる。不景気になれば真っ先に削られるお金なのだ。ここに税率を重くするのは、余計なお金は使うなと言わんばかりの策ではないか。もし政府が本気で消費増税により税収を上げたいのなら、こうした楽しみに使うお金こそ税率を軽くすべきだと思うのだが、いかがだろう。