インタビューを受ける姫野選手。オフタイムは自宅やカフェで過ごすことが多いという

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9月20日に開幕したラグビーワールドカップ。日本は初戦でロシアに勝利し、目標である決勝トーナメント進出へ向けて弾みをつけた。その試合でナンバーエイトとしてスタメンでフル出場し、力強いプレーで勝利に貢献したのが姫野和樹選手だ。日本代表のキーマンのひとりが語った、ラグビーワールドカップの魅力とは。

【写真で見る】「持てる力をフルに発揮できれば、優勝だって決して夢ではない」と宣言する姫野選手

■ ハードなトレーニングで突破力に磨きをかける

 7月27日に行われたワールドラグビーパシフィック・ネーションズカップ2019のフィジー戦で、日本代表は世界ランキング上位の実力国を相手にベストパフォーマンスを発揮し、34対21で快勝。姫野選手もゴール前のモールから相手選手2人のタックルをはねのけて、豪快にトライするなど活躍を見せてくれた。「僕の一番の強みはボールキャリア。ボールを持ったらゲインラインを突破して、1m、1cmでも前に進むことが自分に課せられた役割だと思っています。合宿ではタックルの猛練習をしたおかげで、ディフェンスにも自信がつきました。ワールドカップでは先発で出るか、途中からの出場になるか状況によって変わると思いますが、とにかく出場したら与えられた仕事をきちんと全うすることで、チームに貢献したいと思っています」。

■ W杯開催の好機を生かしラグビーの魅力を広める

 姫野選手は愛知県名古屋市の出身。本格的にラグビーを始めたのは中学生の頃だというが、まさか十数年後に地元でラグビーワールドカップが開催されることも、自分自身が日本代表メンバーに選ばれることも、夢にも思っていなかったという。メンバー決定前には「日本でワールドカップが開催されるのは本当にすごいことで、このタイミングで日本代表として試合に出られることは、とても幸運なことだと思っています。ラグビーを始めたこの地で日本代表として戦うことは、とても感慨深いです。当時の自分に、“日本代表になってこの地に戻ってきたぞ”と伝えてあげたいです。活躍する姿を見せることで、自分をここまで育ててくれた方々、支えてくれた方々への恩返しになると思っています」と話す。

今やすっかり日本代表の顔となった姫野選手だが、選手としてだけでなく、ラグビーを愛する者のひとりとして、このように胸の内を明かしてくれた。「本場ヨーロッパと比べると、日本でのラグビーの知名度はまだまだ低いと言わざるを得ません。ひとりでも多くの人にラグビーというスポーツの楽しさ、魅力を知ってもらい、ラグビーを愛してほしいです。ラグビーを文化として定着させるために、地元開催のワールドカップは絶好のチャンス。観客に勇気や感動を与えるようなプレーをお見せするのはもちろん、日本が勝つことがとにかく重要です。僕らが活躍することで、ラグビーをより身近に感じてもらえれば。この機会に皆さんもぜひ、ワールドカップの雰囲気を肌で感じてください」。

■ 地元の豊田スタジアムに世界に名だたる強豪が集結

 10月5日(土)の日本対サモア戦をはじめ、姫野選手の地元である愛知の豊田スタジアムでは4試合が行われる。優勝候補の筆頭で3連覇を目指すニュージーランド、過去2度のワールドカップ制覇の実績を誇る南アフリカなど、世界に名だたる強豪国のプレーを間近で見るまたとないチャンスだ。「豊田スタジアムで行われる試合はどれもおもしろいと思いますが、一ファンの立場で言うと、やはりオールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)の試合は見逃せませんね。とくにハカという試合前の儀式は鳥肌ものです」と話す姫野選手。試合のチケットを入手するのは難しいが、豊田スタジアム近くのスカイホール豊田には「ファンゾーン」があるため、ここで豊田スタジアムの試合をはじめ計20試合を大型スクリーンで観戦でき、たくさんの人たちと盛り上がることができるだろう。

■ 2つの目標達成に向けてコンディションは万全!

 過去8回開催されたワールドカップのすべてに出場している日本代表だが、ただの1度も予選を突破できないままでいる。初戦で南アフリカを破る大金星を挙げ、3勝を挙げる大躍進を遂げた前回大会ですらも、決勝トーナメントへの進出はままならなかった。

 前回大会のイングランド以外、予選を突破できなかった開催国はなく、今大会の日本代表にとって準々決勝への進出は開催国としての最低限の義務ともいえる。ただし、予選で対戦するのは、いずれ劣らぬ強豪国だ。中でも一番の高い壁となるのは世界ランキング2位(2019年9月24日時点)のアイルランドだろう。2018年には常勝国ニュージーランドを破り、今大会でも優勝候補のひとつに数えられている。アイルランドと同じくヨーロッパの強豪チームであるスコットランドは、前回大会で10対45と苦杯を喫した相手であり、派手さはないが堅実な試合運びには定評がある。また、身体能力の高い選手をそろえたサモアも、世界ランキングでは日本より下位に位置するが、侮ることのできない相手であることに変わりはない。姫野選手もそのことは十分に心得ているようで、ワールドカップ開幕前にはこう語っていた。「少しも気の抜けない相手ばかりです。日本代表が持てる力の100%を発揮しなければ勝つことはできないでしょう。どの試合でも自分たちの持っている力をすべて出し切りたいと思います。そのためには、ホームでゲームができるという地の利を活かして、しっかりした準備をしなければなりません」。

 そう話す一方で、姫野選手はこんな見方も示してくれた。「言い方を変えると、日本代表が持てる力をフルに発揮することができれば、格上のアイルランドやスコットランドにだって負けるはずはないと、僕は思っています。それどころか、優勝だって決して夢ではありません。やるからには本気で優勝を目指していますし、日本代表はそれだけのポテンシャルを持ったチームだと胸を張って言いたいと思います」。声高らかに優勝を目指すと宣言した姫野選手。決勝トーナメント進出と、ワールドカップ優勝という2つの目標に向かって、25歳の若者は力強く駆け出していく。

(情報提供「aispo!」)(東海ウォーカー・鶴哲聡)