NTTドコモ 通信の要塞「NOC」は日々進化している! 日常生活を守るためAIやドローン、VRまで導入

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●NTTドコモがネットワークオペレーションセンター見学会を開催
NTTドコモは8月30日、報道関係者向けに「ネットワークオペレーションセンター」(NOC)の見学会を開催しました。

NOCはNTTドコモの通信ネットワークを保守・管理する東日本エリアの拠点です。
このNOCは、各種の通信障害や自然災害にも対応しています。

今年の日本も、佐賀県を襲った「令和元年8月九州北部豪雨」、首都圏を直撃した台風15号など、甚大な被害をもたらす自然災害が相次いでいます。
とくに台風15号では、送電線網が破壊されて千葉県内の多くの地域が長期間停電し、通信インフラ網も寸断される事態となりました。

自然災害は常に私たちの身近にあります。
普段は使えて当たり前と思っている通信網も、断絶された状況に直面して初めて日常での「繋がる」ことの有り難さと大切さを思い知らされます。

NTTドコモでは、こういった災害に対して、どのような対策を行っているのでしょうか。
そして平時には、どのようにして「当たり前に繋がる」を実現する保守・管理に取り組んでいるのでしょうか。


「通信の要塞」NOCを見学



●通報されない故障をAIが見抜く「スマートオペレーションシステム」
一口に「通信の管理」と言っても、その中身には様々なシステムと管理業務があります。
・アクセス業務:無線基地局とその制御装置の監視
・ノード業務:交換機やIPネットワークのバックボーン監視
・リンク業務:基地局や交換局などを結ぶ伝送路の監視
・ネットワークコントロール業務:ネットワーク全体を監視し最適なネットワークの制御

これらの業務は、どれか1つでも滞ることがあれば通信の断絶を引き起こすため、止めることは許されません。
NOCではこれらの監視や制御の業務を統括し、24時間365日、休むことなく動き続けています。




壁面に敷き詰められたモニターには東日本エリアの通信障害情報が次々と舞い込んでくる


実は、平時でも通信障害は常に起こり続けています。
これはあまり知られていないことです。
何事もなく通信できているから、障害が発生していないというわけではありません。

通常故障は、全国で年間十数万件起きています。
また、通報されない「サイレント故障」と呼ばれる故障も、全国で年間に推定数万件も起こっているのです。

それでも私たちは、日常生活で何も気づかずに通信を使い続けています。

それは何故でしょうか。

障害のあった基地局や設備を迂回させ、網の目のように張り巡らされた通信ネットワークを利用して通信ができるように制御されているからです。


スマートフォンやフィーチャーフォンが繋がるために、これだけの数の装置とネットワークが運用されている


NTTドコモでは、これまで障害として自動検知できなかったサイレント故障を検知するため、今年からAIを活用した「スマートオペレーションシステム」を導入しました。

NTTドコモが保有するネットワーク設備の総数は120万程度あります。
これらすべてのトラフィック情報を集積し、AIによって正常・異常の判定を行うことで、人が検知できなかったトラブルや故障をいち早く高精度に検知することに成功したのです。


スマートオペレーションシステムはサイレント故障を8〜9割の確率で検知する


NTTドコモは今後、スマートオペレーションシステムを拡張し、
・監視のAI化
・分析のAI化
・措置のAI化
これらを2020年度末までに進めたいとしています。


●深い傷跡と教訓を残した東日本大震災
災害対策もNOCの最重要業務の1つです。
前述したように自然災害は毎年発生し、地球温暖化の影響などもあり年々激甚化の様相を帯びています。

NTTドコモではNOCのようなオペレーションセンターを東日本と西日本の2箇所に設け、大きく2つのエリアで監視・制御を行っています。
東西にNOCを設置することで、有事の際にどちらかのオペレーションセンターが機能できなくなった場合でも、もう一方のオペレーションセンターが業務を引き継げる体制を常に整えているのです。



西日本を管轄する「西日本オペレーションセンター」



万が一のバックアップがあってこそ、ネットワークは守られる


NTTドコモが、NOCに代表される災害対策の体制を強化したきっかけは「東日本大震災」でした。
東日本大震災では通信ネットワークが大きく破壊され、長期間に渡って通信網の混乱を招きました。
この反省からNTTドコモは、
・システムとしての信頼性向上
・重要通信の確保
・通信サービスの早期復旧

これらを「ドコモ災害対策3原則」としてまとめました。
そして「ドコモ災害対策3原則」を忠実に実行すべく対策を強化してきたのです。
AIによるスマートオペレーションシステムもまた、この3原則に基づいて開発・運用されています。


絶対に通信を途絶させてはならないという強い決意のもとに創られた3原則




東日本大震災は通信インフラへ大きな課題と教訓を与えた



●ドローンやVRなどの最新技術を保守・点検作業に活用
鉄塔基地局や通信設備の保守・点検業務にも最新技術が取り入れられています。
点検業務では、高所点検などで毎年作業員による事故が絶えません。
そこで同社ではドローンを活用し、安全かつ効率的に保守・点検を行える仕組みを導入しました。

ドローンによる保守・点検業務では、
・作業員の安全確保(高所作業の削減)
・作業員では目視できない部分も含めた設備全体の確認および撮影
・撮影した写真を自動的にアーカイブ化
こういったメリットがあります。

また、現在はドローンによる撮影や画像管理までの仕組みですが、こちらもスマートオペレーションシステム同様に、
今後はAIによる不具合箇所の検知や診断、さらにその解決策の提案までを行えるよう改良していく予定です。


人の手による高所点検は常に大きな危険を伴う



AIによる自動劣化判定技術は今年中にも導入予定


しかし、すべての鉄塔や通信設備の点検作業をドローンで行えるわけではありません。
ドローンの飛行が制限されている地域などでは、人の手による点検作業が必須です。
そこで、作業員の安全確保のために、VR映像を用いた高所作業の危険予知トレーニングシステムも開発しました。

このシステムは、安全なVR空間で鉄塔作業を疑似体験するというもので、正しい作業手順を踏まずに作業を行うと、鉄塔から落下するなどの映像が流れるようになっています。

高所作業では、「慣れ」からくる作業手順の省略や安全確認の怠りが、大きな事故や障害の原因となります。
このトレーニングによって、作業員に今一度、作業の危険性や手順確認の重要性を再確認させ、安全への意識向上を促すことが大きな目的です。



見学会では危険予知トレーニングを体験するコーナーも設けられた


●何事もない日常こそがインフラ業務の最高水準
現在、ラグビーワールドカップに合わせてプレサービスが行われている第5世代移動通信システム「5G」も、2020年には正式サービスの開始が予定されています。

5Gではスマートフォンを中心としたコンシューマ向けサービス以外にも、
IoT機器やビジネスソリューションでの活用が大きく期待されており、NOCの役割はますます重要性を帯びてきています。

私たちが普段通信網の安定性を気にすることがないのは、気にする必要がないほど厳格に保全されているという証拠です。
その絶え間ない監視と災害時の迅速な対応に、感謝の念を抱かざるを得ません。


執筆 秋吉 健