ファーウェイ排除は「米国の後退の始まり」、同社CEOが発言
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中国の巨大テック企業、ファーウェイに対して米国が制裁を実施して2カ月。同社の創業者でCEOの任正非氏は「ファーウェイを閉め出すことは、米国の後退の始まりだ」と述べ、米国政府の対応を非難しました。

任氏は7月20日、米Yahoo Financeによるロングインタービューに応じ、米国政府による制裁への受け止めについて語りました。

任氏は以前、GoogleによるAndroid OSの提供停止の影響を受けて、その発表から2週間でスマートフォン売上が通常の40%まで落ち込んだと明らかにしています。しかし、任氏は今、「もはやファーウェイはすべてのコア製品について米国への依存を完全になくすことができる」と自信をみせます。

米国によるファーウェイ制裁の真意について、任氏は「ファーウェイの高度な技術を封じ込めること」が目的だという認識を示します。この制裁発動のきっかけの1つには、1月に米司法省がファーウェイに対して起こした訴訟があります。訴訟ではファーウェイに米国企業の技術盗用と、米国の経済制裁を破ってイランへの技術供与を行った疑いがかけられています。

任氏はファーウェイが米国に対してセキュリティ上の脅威をもたらすとは考えていないとした上で、「米国にはファーウェイのネットワーク機器を販売しておらず、5G製品を販売する予定もない」と説明。「トランプ氏の行動は私たちに影響をもたらさない。ファーウェイに対する制裁を外交カードとして使いたいようだが、中国がそれを引くとは思えない」と見解を示しました。

一方で、米国の技術発展を阻害する可能性も指摘。「たとえスーパーコンピューターや超大容量の接続技術を保有していても、米国には5Gの超高速接続の技術がないため、遅れる可能性がある」として、「ファーウェイを締め出すことは、米国の後退の始まりだ」と述べています。

制裁により、ファーウェイが米国の技術を使うのを防げるかもしれませんが、米国にとっては、中国の会社から得られていたであろう利益を失う事態になりかねません。任氏はインタビューの中で、米国に拠点を置く、ファーウェイの研究開発子会社Futurewei社の従業員を解雇したことを認めています。

また、任氏は当の米国との紛争に翻弄されている立場であるにも関わらず、米国の法制度を信頼しているとYahoo Financeに話しています。

任氏は以前、米制裁後の事業展開について、興味深い発言をしています。6月に「A Coffee with Ren」と題したイベントで講演し、「たとえ300億ドル(約3兆3000億円)の費用をかけたとしても、ファーウェイは"製品の切り替え"を完了し、今後数年間で業績を回復させるだろう」と述べています。

この壮大な"切り替え"がどのようにして実現されるかは不透明ですが、ファーウェイが今なお、米国の制裁に対して厭戦することなく、強気な姿勢でいることは明確です。一方で米国は、中国との和解ムードが高まるにつれて、ファーウェイ製品の輸入について「深刻な国家保安上の問題」に関わらないものに限定して認めるなど、制裁緩和の姿勢を見せ始めています。

ファーウェイ問題がこの先どのような結論に行き着くかは未知数ですが、この問題が2つの超大国間の不安定な関係性に注目を集めたと同時に、セイバーセキュリティの重要性にスポットライトを当てたのは間違いないでしょう。

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