しかし同社が真に狙うのは、20年を契機に広がるBツーB(企業向け)システムの市場。井戸も「五輪のおかげで、この技術が世に出たと言われるような種まきをしたい」と力を込める。ターゲットは観光、スポーツ、スマートシティー(次世代環境都市)だ。

 観光は訪日外国人がカギを握る。17年の訪日旅行者は、最高を更新した16年の約2400万人超えが確実視され、政府は20年に4000万人へ増やす計画だ。同社は多言語翻訳、避難誘導用デジタルサイネージ(電子看板)、電動車いすなど、旅行者をもてなすシステムやサービスを多数実用化している。

 一方、政府が成長を後押しするスポーツ産業向けは、16年のブラジル・リオ五輪から始めた式典運営のほか、スタジアム内店舗支援、競技分析なども提案中。五輪でシステムとサービスを組み合わせたソリューション事業の実績を積み上げ、新設や改修が計画されるスタジアム、国際会議施設などの受注を狙う。

 スマートシティーは、自社工場跡地を活用した街を情報通信技術でつなぐ。住宅、福祉、物流といった事業者と街づくりを進めるプラットフォーム型事業だ。この事業モデルは、観光やスポーツ向けシステムにも不可欠。18年に始める外国人旅行者向け手荷物配送サービスは、JTBやヤマト運輸にクラウドサービスを提供する裏方の役割を担う。

 BツーBのソリューション事業で成功するには“黒子”に徹することも必要だ。20年の東京五輪はこうした力を身に付ける最高の舞台。18年の創業100周年よりも重要な転機になり得る。
(敬称略)
日刊工業新聞2017年12月13日

「五輪後」に技術は根付くか
 競技会場の建設が急ピッチで進む中、世界的なイベントに向けて日本の最先端技術を披露しようと、水素インフラやロボットなど官民挙げた取り組みが進む。技術のアピールだけでなく、2020年以降を見据えた普及のための経験値を蓄積していく狙いもある。

水素インフラ 世界を魅了する機会
 東京五輪が開催される20年をめどに、福島県浪江町で世界最大規模の水素製造を始めるプロジェクトが進む。東芝や東北電力、岩谷産業、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が太陽光パネルで作った電気で水素製造装置を稼働させ、燃料電池車(FCV)1万台分の燃料に相当する年900トンの水素を製造する。

 “福島産水素”は都内に運び、五輪会期中にFCVで使う。世耕弘成経済産業相は6月、福島県の内堀雅雄知事と会談し、「五輪は復興をアピールする象徴的な出来事であり、しっかり取り組む」と伝えた。