楽天ペイから「Suica」発行可能に、2020年春から
楽天ペイメントとJR東日本は、楽天ペイSuicaの連携を発表しました。2020年春をめどに、Androidの「楽天ペイ」アプリから「Suica」を発行できるようになります。

当初はAndroidのみ対応し、iPhone(Apple Pay)での対応については今後検討するとしています。Suicaとしての決済の仕組みはそのままで、おサイフケータイ対応のスマートフォンのみで利用できます。

楽天ペイアプリからのSuicaのチャージにも対応。アプリ内からのSuicaチャージには楽天スーパーポイントが付与されます(還元率は今後公表予定)。

■モバイルSuicaアプリを追加すれば定期購入も


楽天ペイアプリ上から、JR東日本の定期券やグリーン券を購入することはできません。JR東日本の「モバイルSuica」アプリを追加導入し、同アプリから購入する形になります。

また、オートチャージ機能については、楽天ペイアプリでの対応予定は無いとしています。


▲JR東日本 IT・Suica事業部長の野口忍氏(中央左)と楽天ペイメントの中村晃一社長(中央右)

楽天ペイ:「インフラアプリ」を作っていきたい


楽天ペイにとって、今回のJR東日本アプリとの連携は、初の楽天グループ外の連携となります。同社の中村晃一社長は「小さなパイを取り合うのではなく、本質的な市場の拡大を考え、 オープン戦略を取ろうとしている」と説明。楽天ペイというアプリをベースに、日常生活でのキャッシュレス決済をカバーする、複数の決済手段を取り込んでいく方針を示しました。



楽天ペイメントではSuicaと同じFeliCaベースの電子マネー「Edy」を運営しています。そしてEdyは今後、Android向けの楽天ペイアプリと統合する予定が発表されています。一方ではSuicaには交通系に強いという独自の特徴があります。

中村氏は「現在の日本のキャッシュレス決済比率は約20%と言われている。これを40%まで伸ばしていく中で必要な努力は並大抵ではない。さまざまなプロトコル(決済手段)に対応していく戦略をとる」と説明。「一過性のブームで終わらない『インフラアプリ』を作っていきたい」と表明しました。

楽天が目指すのは、日常生活の中でも重要な「交通」をカバーすることで、ユーザーの利便性を向上させること。その先には、アプリで全体としての利用を増やし、楽天経済圏を拡大する狙いがあります。


■JR東日本:板Suicaからモバイルへの移行促す


JR東日本の狙いは、従来のプラスチックカード型SuicaからモバイルSuicaへの移行を促すことにあります。

JR東日本がプラスチックカードからモバイルSuicaで切り替えを促す理由は2つあります。1つはモバイルSuicaに移行したユーザーの方が、利用額が大きくなるという事情です。



同社IT・Suica事業部長の野口忍氏は「モバイルSuicaではチャージやサービスの利用が便利になることもあり、明らかに利用が増える傾向にある。さらに楽天ペイSuicaでは楽天ポイントが付与されるというメリットもある。交通利用に限らず、今以上にご利用いただけるようになると期待している」と述べました。

モバイルSuicaでは、定期券をスマートフォンから購入できる仕組みを備えています。つまり、ユーザーがモバイルSuica定期券に移行すれば、その分、駅に並ぶ人が減り、駅の設備を簡略化できます。

そして、JR東日本が楽天と組むのは、今までアプローチできなかったユーザーにモバイルSuicaを提供できるから。Suicaを少額しか利用しないユーザーにとって、これまでのモバイルSuicaの定期券が追加できるなどのメリットは、訴求しづらいものでした。

楽天のオンラインショッピングなどを幅広く展開しており、そのユーザー層は交通事業者であるJR東日本とは異なっています。楽天ペイにモバイルSuica機能を搭載することで、そうしたユーザーに新たなメリットを提示してモバイル移行を促せる、というわけです。

■サービス開始はなぜ9か月も先?


今回の発表から実際にサービスが開始する時期までは、実に9か月のタイムラグがあります。その理由はJR東日本のSuicaシステムにあります。

Suicaシステムはもともと外部企業との連携を想定したものではなく、システム連携の結節点となるAPIなども用意されていません。Suicaシステムについて個別の企業ごとに連携の仕組みを追加する必要があり、その最短スケジュールが来年2020年春だった、というわけです。

一方で、JR東日本はApple PayやGoogle PayからSuicaを発行できる仕組みを整えていたり、直近ではみずほ銀行と提携して「みずほ Wallet」でSuicaを使えるようにしたりと、Suicaシステムの他企業との連携を進めています。今後Suicaシステムが更新される際には、他企業との連携も見据えた設計になる可能性が高いと言えるでしょう。
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