少しの工夫で医療費を節約する方法がある。3人の識者に、7つのテーマにわけて具体的な手順を聞いた。第5回は「ジェネリック」について――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の掲載記事を再編集したものです。

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■不安があるなら「お試し調剤」を

「ジェネリック」医薬品は、いまや知らない人はいないほど広く浸透している。新薬と同じ有効成分を含む後発の医薬品で、厚生労働省の認可を得て製造・販売されているものだ。

写真=iStock.com/Yulyu

「2017年9月時点、薬局で調剤される薬剤の約65.8%は後発品になっています。さらなる医療費削減のため、国は2020年9月までには80%までシェアを引き上げることを目標にしています」(医療分野に詳しいフリーライターの早川幸子氏)

厚生労働省の資料によると、アメリカでは91.7%、ドイツでは86.3%、イギリスでは76.6%(2016年)と、先進国のジェネリックのシェアは高い。日本はまだ59%。これからますますジェネリックの需要が上がっていくと思われるが、医療の現場に携わる長尾氏はこの認識に警鐘を鳴らす。

「アメリカではジェネリック局というものがあって、厳しい審査がなされています。対して日本のジェネリックの中には、一流もあれば三流もあるのが現状です。ある1つのAという先発薬に対し、10種類、20種類のジェネリックが出ていて、製造しているのは、私も聞いたことがない会社ばかりといったこともあります。なかには、ほとんど効き目がない薬だってあるかもしれない」(長尾氏)

ただ、長尾氏はジェネリックに対し否定的な見方をしているだけではない。

「たとえばヘルペスの薬。先発薬はものすごく高いのですが、ジェネリックだと半額ですむうえに効果はほとんど変わらないんです。国がジェネリックの質と信頼性を高めることにもっと力を入れたら、こういった安かろう、よかろうの後発品がたくさん出てくるでしょう」(長尾氏)

とはいえ長尾氏は、現段階では「1円、2円くらいしか価格が違わないなら、先発薬を選んだほうがいい」と語る。

一方、早川氏は「もしジェネリックに抵抗があるなら『お試し調剤』を試してみては」と提案する。

「正式には『後発医薬品分割調剤』と言います。たとえば2週間分の薬のうち最初の3日分だけジェネリックを試せるんです。服用してみて『効いたな』と思えばその後もジェネリックを使えばいい。『合わない』と思えば先発薬に切り替える。この方法はあまり知られていないため、薬剤師でもよくわかっていないケースがあります」

いずれにせよ、薬剤師にジェネリックにするかどうかを聞かれたら、「どれくらい価格差がありますか?」「効き目はどうですか?」「薬剤師さんなら、どちらを服用しますか?」と率直に質問してみるのがよさそうだ。やはり餅は餅屋。薬については薬剤師がなんといっても詳しいのだから。

一方、長尾氏は「ジェネリック誘導政策の前に、多くの種類の薬を処方することが問題となっているポリファーマシー対策を優先するべき」と指摘する。

「たとえば10種類もの薬を飲んでいる人は、副作用の危険度が高まります。ただ、薬を多く出してくれると安心する患者さんはいまだに多く、多剤投与の弊害に無知、無関心な医師も少なからずいるということなんです。まずは、10種類の薬を4種類、3種類へと減らすような治療を考えることが大切です」(長尾氏)

患者の側でも、薬をなるべく減らす努力をすることが、お金の面だけでなく、健康面でも重要なことだ。もし、薬の量に不安を感じたら、薬局で薬剤師の意見を聞いてみるといい。本音を聞き出すコツは、「あなたならこんなにたくさんの薬を飲みますか?」とこっそり聞いてみること。意外な話が聞けるかもしれない。

結論:「あなたなら飲みますか?」と薬剤師に聞く

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長尾和宏
医師、長尾クリニック院長
1984年東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。95年長尾クリニック開業。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、指導医。『その医者のかかり方は損です』など著書多数。
 
 

早川幸子
フリーライター
女性週刊誌やマネー誌を中心に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を手がける。著書に『読むだけで200万円節約できる!医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』。
 

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(小澤 啓司 撮影=永井 浩 写真=iStock.com)