というわけで、政府は借り入れた当座預金を担保に「政府小切手」を発行し、公共事業等の支払いを企業に対して行う。もっとも、政府小切手を受け取った企業も、そのままでは給与等の支払いができない。

 企業は政府小切手を銀行に持ち込む。銀行は持ち込まれた政府小切手という「借用証書」と引き換えに、銀行預金というおカネを発行する。ようやく、おカネは民間が「自由に使えるおカネ」へと姿を転じた。企業は銀行振り込みで従業員に給与を「分配」する。銀行預金というおカネが、企業の銀行口座から、家計の銀行口座に移る。

 上記が、国債発行により家計の銀行預金が増えるまでの一連の流れになる。

 ついでに書いておくと、政府小切手を持ち込まれた銀行は、日本銀行で決済をする。日銀は政府小切手と引き換えに、日銀当座預金というおカネを発行する。さらに、日銀は政府小切手と「政府の日銀当座預金(政府預金)」を交換し、決済完了となる。

 日本で「財政破綻! 財政破綻」と叫び、
「今は家計の預金があるから政府の国債発行は可能だが、そのうち政府の借金が家計の預金を越えて破綻する!」
 といったでたらめを吹聴している連中は、果たして図の「国債発行」のプロセスを理解しているのだろうか。断言するが、間違いなく知らない。

 何も知らない連中が「財政破綻!」と叫び、国民が嘘の財政破綻論に染め上げられ、日本国を小国化する緊縮財政が継続している。要するに、緊縮財政を主導する財務省は、国民や破綻論者の「無知」を巧く活用しているのである。

 というわけで、財政や国債発行に関する正しい知識を身に付け、財政破綻論や緊縮財政を打破するべく、政治を動かしてほしい。

 わが国が繁栄する道は、他にはない。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。