顧客対応時のマスク着用の是非は?

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「顧客対応時のマスク着用論争」が過熱しています。空気が乾燥し、風邪やインフルエンザが流行するほか、花粉が飛散し始めるこの時期は、誰しもマスクを着用したいという気持ちが高まります。湿度を保ち、さまざまな相手からの罹患(りかん)を防ぐ防衛目的で着けたい人もいれば、仕事を休むほどではないものの咳などの症状があり、相手に懸念を与えたくないと着用する人もいるでしょう。

 一方、管理者は、顧客対応をする社員がマスクを着用していると表情や声が伝わりづらく、顧客満足度が落ちるのではないかという懸念を持つものです。さらに、顧客の中には「接客社員のマスク着用は失礼だ」と思う人がいれば、逆に「マスクを着用していないと衛生上問題だ」と思う人もいて、議論は混沌(こんとん)としてきます。そこで、この論争に終止符を打つべく、安全衛生面と顧客満足度を両立できる方法を解説したいと思います。

安全衛生と顧客対応の相反する問題

「ただいま、マスクを着用して業務を行っています」という掲示をして、全員がマスクを着用してカウンター業務をしている都心のターミナル書店もあれば、個々の社員の判断に任せ、結果として多くの社員がマスクをしている企業もあります。逆に「原則マスク禁止」で窓口対応をさせている市役所や金融機関もあります。

 そうした事例が記事になるたび、読者から多くのコメントが寄せられます。コメントのほとんどは「マスク支持派」ですが、そもそも、コメントを投稿しない管理者世代やシニア世代には「マスク反対派」も多数いるように思えます。

 安全衛生を取るか、顧客対応を取るかの論争は過熱するばかりです。延々と続き、決着しないのではないかと思えるほどですが、そんなマスク着用論争を決着させる方法があります。要は「マスクをしたまま、マスクをしていない状態と遜色のない顧客対応をして、顧客を巻き込み、顧客に好感を持たれ、顧客満足度を高めること」ができればよいのです。

 そんな、うまい方法があるのかと思われるかもしれませんが、あるのです。

マスク着用表現スキルの習得

 それが「マスクをしていても、顧客に見えている部分」「マスクをしていても、駆使できる部分」を使った表現力で、顧客を巻き込んでいく方法です。マスクをしていても顧客に見えている部分とは、顔の上半分です。マスクをしていても駆使できる部分とは、顔全体、体全体です。

 相手を最も引き付けやすいアイコンタクトの秒数▽視線をそらす方向だけでメッセージを伝える方法▽顔と体の向きの動かし方で相手の関心度や集中度を高める方法――によって、相手を各段に引き付けることができるようになります。

 例えば、相手の目を見る(アイコンタクト)時間は人によって違いますが、2〜3秒程度が「自分に対して一生懸命話そうとしている」印象を与えやすい適切な長さです。さらに「視線を外す際は下にそらす」と、相手に対してうなずいているように見えてポジティブな印象を与えられ、「顔だけでなく体全体を聞き手に向ける」ことも相手の関心を高めます。

 加えて、顔の向きや声のトーンなど、顧客に好感を持たれたり、顧客の満足度を高めたりする要素を見極めて、それに合った話法やアクションを提供できるよう努めましょう。これらによって、マスクで顔の下半分が隠れているという、いわばハンディキャップがあったとしても、それを上回るアドバンテージを享受できるようになります。

 このように申し上げると、「そのようなスキルの習得に取り組んでいるうちに、インフルエンザの流行や花粉の時期が終わってしまい、宝の持ち腐れになってしまうのではないか」と思う人もいるかもしれません。

 しかし、このスキルは短時間でも習得できるので心配は無用です。事前に自撮り用のカメラ(スマホで可)をセットすれば、自分がマスクを着用したまま表現力を発揮し、どの程度顧客を巻き込むことができるかを確認できます。

 顧客対応時のマスク着用の是非について、ああでもない、こうでもないと考えあぐねたり、延々と議論し続けたりすることよりも、マスクを着用した状態で顧客満足度を向上させる方法を習得する方がはるかに生産的です。さっそく実践してみてはいかがでしょうか。