ネット動画全盛時代、CM制作会社はピンチかチャンスか
低価格帯も無視できない
一方、低単価の動画制作もCM制作各社にとって無視できない事業機会だ。東北新社はそれに対応する大きな一手を打った。10月にネット動画を中心に手がけるモバーシャル(同渋谷区)を関連会社化した。東北新社の福田好孝シニアマネジメントは「広告主から低単価の動画を求められるケースが増えてきた。我々はそれに向き合わなくてはいけない。モバーシャルは低単価の動画制作で収益を上げるためのノウハウなどを持っており、それらを学びたい」と力を込める。
技術の進化は追い風か
ネット動画広告市場は今後、更なる激変が予想される。特に影響を与え得るのが5Gだ。テレビ制作各社の多くはその新時代に期待を寄せる。ネットワークが進化し、動画が今以上に低コストでモバイル視聴できる環境になり世の中に動画があふれるとすれば、その中での差別化策として高品質な動画への需要が高まる可能性がある。各社は「動画があふれかえる世界で我々のクリエイティブ力は一定の評価を得られる」(AOI TYO HDの中江社長)や「高単価の広告を作っていた経験によって(5G時代は)チャンスが広がる」(東北新社の福田シニアマネジメント)と展望する。
一方、技術の進化は逆風の予感も漂わせる。ネット広告業界の関係者は「ネット広告のターゲティングの精度は日々進化している。今まではターゲットを決めてクリエイティブを当てていた。今後はそもそも、それぞれのネット利用者の興味関心を惹くようなクリエイティブでないと、利用者に届きさえしないということが起こり得る。(同じブランド広告であっても)動画の種類やキャスティングを変え、数十個のパターンを作らなくてはいけない世界がくる」と予想する。そうなればCM制作会社が得意とする高単価のブランド広告を少数制作する仕事の価値が発揮されにくくなるかもしれない。
ネット広告大手のサイバーエージェントはそうした市場の到来を予測し、体制を整える。同社インターネット広告事業本部の淵之上弘統括は「我々はインターネット広告市場に詳しいのが強み。(ネット動画広告市場の変化の)先を想定して動くことを繰り返し続ける」と強調する。
