日本を代表するミニマムクロカン4WDであるジムニーが、20年ぶりにフルモデルチェンジされました。フラットなパネルを多用したボディワークは原点回帰を感じさせるもので、ジムニーのフルモデルチェンジを待ちわびていた人たちに大歓迎されました。

 

新型となったジムニーは従来どおりのフレーム式プラットフォームを用いています。フレームは2本のクロスメンバーと1組のXメンバーで強化されました。サスペンションも従来通り3リンクリジッドコイル、ホイールベースも前後トレッドも変更はありません。

 

搭載されるエンジンは660ccの3気筒ターボですが、先代がオーバースクエアのK6Aであったのに対し、新型はロングストロークのR06Aになりました。最高出力は従来どおりの64馬力ながら最大トルクは96Nmと若干のダウン。ですが、VVTが装着されたこともあり燃費的には優位になるはずです。

試乗車は5MTモデルでした。オンロードで加速をしていくとトルクダウンしているとは思えないフィールを感じます。先代は一生懸命エンジンが回っている印象でしたが、新型はエンジンのトルクがしっかりとタイヤに伝わっている印象で軽薄感がありません。低速トルクの厚みが増した感じがあり、低めの回転数でシフトアップしていっても粘り強くエンジンのトルクが付いてきます。

軽自動車にしては比較的長めのストロークを持つクラッチペダルは扱いやすい設定です。ペダルストロークを短くしたほうが操作が素早くなり、街乗りでは楽でしょうが、ゆったりと乗ることが似合い、クロスカントリー走行もある程度ペダルストロークがあったほうがゆっくりとしたシフト操作となるので、好ましいものとなります。

フレームの剛性がアップしたことやボディマウントのゴムブッシュが大型化されたこともあり、乗り心地の快適性はアップしています。サスは固定式ですが良路面でも快適。ストロークはしっかりとありますし、ロール時の安定性も高いです。

今のクルマの多くが扁平率の低いタイヤを履きますが、ジムニーのタイヤは175/80R16としっかりとしたエアボリュームを持ちます。このタイヤだけで十分な快適性を確保できています。

クロスカントリー走行では、サスペンションストロークを生かしたジムニーの真髄が見えました。ジムニーは2WD(FR)と4WDを切り替えるパートタイム4WDです。さらに副変速機を備えていて、ローギヤを使うことができます。左右にこぶのあるモーグル路面でもフロアをこすることはなく安定して前に進むことができます。

 

なによりも感動するのがスタックしそうな場面で働くブレーキLSDによる駆動力の効果です。空転したタイヤにブレーキを掛けることにより、接地しているタイヤに積極的に駆動力を配分し、スタックから脱出します。このブレーキLSDはローギヤモードのみで作動します。

また、坂道発進時に最長2秒ブレーキをかけ続けるヒルホールドコントロールや、下り坂でブレーキを自動制御し低速走行ができるヒルディセントコントロールも備え、イージーなクロスカントリードライブが可能です。

(文/諸星陽一 写真:前田惠介/諸星陽一)

スズキジムニー試乗】軽自動車としてではなく「ジムニーとして」指名買いされる、その実力に納得(http://clicccar.com/2018/08/22/620017/)