By Christoph Scholz

Facebookは今後、「メッセンジャー」アプリの機能を拡張してリアルタイムで銀行口座の残高情報などを確認できるようにする方針であることが判明しました。この報道を受けてFacebookの株価は一時4%の上昇を見せるなど市場からは好意的に受け取られていますが、ユーザーレベルではプライバシーに関する懸念も広がりつつあります。

Facebook to Banks: Give Us Your Data, We’ll Give You Our Users - WSJ

https://www.wsj.com/articles/facebook-to-banks-give-us-your-data-well-give-you-our-users-1533564049

フェイスブック株が上昇、銀行との関係強化に期待高まる - Bloomberg

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-06/PD1W3U6S972A01

Facebookは2018年8月6日、「メッセンジャー」アプリの新機能として銀行口座とリンクすることで口座残高やレシート、配送情報といった取引データをリアルタイムで把握できるようにする方針を明らかにしました。この取り組みの狙いについてFacebookは、「それらの情報でユーザーエクスペリエンスを可能にすること以外の目的では使用しておらず、広告その他の目的はない」としています。

Facebookは既にアメリカの大手銀行との協議に入っているとWall Street Journalは報じています。この手の動きはFacebookに限ったことではなく、GoogleやAmazonもそれぞれ「Google Home」や「Amazon Alexa」などで同様の取り組みを始めています。また、いくつかの銀行は既にIT各社との取り組みを実践に移しており、30以上の銀行が送金アプリ「Zelle」と提携することでPayPalに対抗するリアルタイム送金サービスを提供するなど、スマートフォンアプリを活用したオンライン決済サービスの競争は激化の様相を見せています。

今回のFacebookの発表は、この競争に参入することを明らかにしたものであるといえます。マーケットからの反応は好意的なもので、Facebookの株価は一時4%の上昇を見せて7月25日の株価急落をいくらか取り戻すものとなっています。

Facebookが時価総額13兆円超を失う株価の急落を体験、1日での減少としてはアメリカ史上最大 - GIGAZINE



Facebookの発表によると、この機能はユーザーが利用を許可する必要がある「オプトイン方式」であるとのこと。また、あくまでユーザーが自分の口座情報をメッセンジャーアプリで確認できるようにするためのものであり、その他の広告などのツールとして活用されることはないとしています。

ユーザーの利便性は上がり、投資家からも好意的に受け止められている一方で、プライバシーをめぐる過去のできごとから「Facebookと銀行の連携」について同様にプライバシーを懸念する見方が挙がっているのも事実です。

Forbesは「まず間違いなく銀行口座データにアクセスしてくる前にFacebookを脱会しよう」という刺激的なタイトルの記事を掲載しているほか……

Quit Facebook Before It Inevitably Accesses Your Banking Data

https://www.forbes.com/sites/curtissilver/2018/08/06/quit-facebook-before-it-inevitably-accesses-your-banking-data/



ザッカーバーグCEOの顔に強烈なコラージュを施した画像とともに「Facebookと銀行が協力:ユーザーの金融データをくれたら、Facebook上での銀行取引を可能にしてあげますよ」というタイトルで記事を公開しているメディアもあります。

Facebook to banks: give us our users' financial data and we'll let them bank with Facebook / Boing Boing

https://boingboing.net/2018/08/06/surveillance-finance-capitalis.html



企業としての成長が使命であるFacebookにとっては自然な流れの1つであるといえる今回の銀行との提携の方針ですが、一方でユーザーのプライバシーがないがしろにされないかどうかはよく注目しておく必要がありそうです。