DeNAのウェブページ内のコーポレートロゴに関するページより。

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DeNAのロゴマークの左端には「:」という記号が付いている。これにはどんな意味があるのか。グーグルで検索をすれば、答えはすぐにわかる。だが経営コンサルタントの小宮一慶氏は「考える前に検索することがクセになると、思考力がどんどん低下してしまう」と警告する――。

■「:DeNA」の「:」にはどんな意味があるのか?

私は講演会などでビジネスパーソンの皆さんに、どんな時代であろうと「思考力」と「実行力」は絶対に必要だとお話します。「思考力」は考える力です。「実行力」は考えたことを具体化する力です。いずれも、ごく「当たり前」のスキルで、人から改めて言われるまでもないと思う方も多いでしょう。しかし、肌感覚として、その力がない人、もしくは衰えている人が増えていると思うのです。

まず、「思考力」について。今の時代、人工知能(AI)やコンピューター、ロボットなどがどんどん進化し、ますます便利な時代になっています。自分(人間)があまりものを考えなくてもいろんなことができます。こんなラクチンなことはありませんが、これこそが人の「思考力」を減退させる大敵なのです。

たとえば、いまでは交通系ICカードで電車に乗る人が大半だと思います。しかし、かつては電車に乗る際に路線図を見て料金を確認して切符を買うのが当たり前でした。定期券を持っている場合でも、普段と違うところに行くときには、小銭で精算する必要がありました。今ではピッと改札を通ればそれですべて完了です。私は今、この原稿を福岡空港のラウンジで書いていますが、Wi-Fiを接続する際に、なにか作業をする必要はありませんでした。自動的にパソコン自身が接続してくれるのです。

便利な社会は、モノを考えなくていい社会です。つまり、普通に暮らしていると、いつの間にか思考力がどんどん落ちていくのです。

▼「:」は目、「D」は口で笑っているように見える

昨年、こういうことがありました。私はテレビでプロ野球の日本シリーズを観ていて、セ・リーグ代表DeNAのロゴマーク「D」の左隣に、コロンのような「:」という記号が付いているのに気づきました。「:DeNA」となっているのです。若いスタッフに「ディーと音が濁るから、その濁点の意味があるのかな」と話すと、「いいえ、あれはスマイルマークを横にしたものです」と言われました。顔を90度左に傾けて「:D」を見ると「:」は目、「D」は口で、人が笑っているように見えるわけです。

 

■「疑問点は即スマホ検索して解決」ではバカになる

聞いた瞬間、私は「あ、なるほど」と思うよりも先に「これは危ないな」と思いました。
なぜかというと、その若いスタッフはロゴの意味を手元のスマホで検索して答えていたからです。

同社のウェブページによれば、このロゴは<私たちのサービスで世界中の人々を喜ばせたい、楽しませたいという思いを込めて、「Delight」(人を大いに喜ばせる、うれしがらせる)という言葉と「DeNA」の共通の頭文字である「D」をデライト・マークにすることで表現しました>とあります。

スタッフの「回答」は正しい。でも、そこには思考力が働いた形跡はありません。グーグルの検索窓に言葉を入力し、クリックした結果を見ただけです。

▼正解のない問題でも意思決定できる力とは

私は、今、7つの会社の社外役員と5社の顧問をしています。社員12人ほどの小さな会社の経営者もしています。それらの会社の意思決定に多かれ少なかれ関与しています。経営コンサルタントとして、それ以外の会社の意思決定にも関与しています。

そうした際に、あらかじめ正解のない問題についても意思決定をしなければなりません。子会社を売却するのかそれとも合併するのか。A国に進出すべきかB国にすべきか。人員拡充かそれとも減員か。当然ですが、これからの個別案件をグーグルに聞いても答えは出てきません。意思決定するには、自らの頭を稼働させなければなりません。

ふだんの生活で、これは何か? なぜそうなのか? と感じることがあったとき、的外れでも、勘違いでもいいので自分で考える習慣が重要なのではないでしょうか。そうでないと、脳=思考力は確実に退化します。

好むと好まざるとにかかわらず人々の生活はより便利になり、「単純化」されています。一方で、社会の仕組みはより「複雑化」しています。本来は、複雑なことを複雑なままに考える「思考力」が必要ですが、ほとんどの人は「複雑化」のほうは無視するか放っておいて、「単純化」のほうだけ積極的に採用しています。これは怖いことです。「単純化」を採用する人は、考えるのをサボるので、当然、考える力が落ちていきます。逆に、複雑なことを複雑なままに考えられる人は思考力が少しずつ高まり、そのような人の脳の価値は以前よりも格段に上がっていく可能性があるからです。

■たまには難しい本でも「斜め読み」せず「熟読」する

「思考力」は筋肉を鍛えるのと同様、訓練や習慣によって高めていくことができます。先ほどの「:DeNA」の例で言えば、検索する前に、一度、自分で考えてみるということです。グーグルのような便利なツールが存在しなかったときは、これが普通だったのです。

それと、ときには難しい本を読んでみることです。難しい本が売れなくなっているという話をよく聞きますが、それは多くの人の思考力が落ちているからかもしれません。

しかし、最初はゆっくりでいいので、1段落ごと、1ページごと理解できるまで読みこむようにするのです。私自身、1ページをしっかり理解するために30分くらいかけて読むこともあります。前のページを振り返ったり、言葉のバックグラウンドに思いをはせたりしながら、「完全」とまではいかなくとも、著者が考えるレベルに近づくまで読み込むのです。
この「熟読」の習慣が思考力を育てていきます。

「斜め読み」や「速読」では思考力は絶対に身につきません。訓練だと思って、(1)すぐに正解を検索せずまずは自分で考える、(2)難しい本をじっくり読むこと、を心がけてください。

▼「思考力」だけでは不十分。「実行力」も鍛える

ビジネス世界で生きていくには、「実行力」や「行動力」はとても大切です。思っているだけ、口先だけでは何も変わりませんし、誰もついてはきません。まずは、自分で道をひらくことが大切なのです。

「実行力」を鍛えるために、私が有効だと思っていることは、「言ったことをやる」ということです。単純明快です。誰かと飲みに行く約束をしたら、それをやる。子供とかわした小さな約束も必ず実行する。自分が社長で、社員に「海外旅行に連れていく」と言ったら、それも実行するのです。

言ったことを守ることで、「実行力」が高めるだけでなく、人の信用を得ることもできます。私は、交わした約束が小さなものであるほど即座に手帳にメモするようにしています。忘れないで実行するためです。実現のための具体的な第一歩を踏めば、その後のプロセスはスムーズです。

■思ったこと、言ったことは「必ず実行する」習慣

さらに言えば、私が大切にしているのは「思ったことはやる」ということです。先に「言ったことはやる」と述べましたが、それなら言わなくなる人がいるからです。言わなくても思ったことをやるわけです。たとえば、「○○に行きたい」と心の中で思ったら、そこに行く。「△△が欲しい」と思ったら、手の届く範囲であれば、それを買うのです。

心の中のもやもやした願望を果たすことなく、何もしない、実行しない。それが習慣化すると、最悪の場合、一生その調子で終わります。

だから「思ったことは、やらなくてもいいこと」というような思考パターンを持たないことです。思ったことも必ず実行していけば、「実行力」も確実に鍛えられるのです。

「思考力」も「実行力」も、ふだんの暮らしや仕事の進め方によって、強化することができるのです。

(小宮コンサルタンツ代表、経営コンサルタント 小宮 一慶 写真=iStock.com)