15日放送、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、卓球の石川佳純に密着取材。一度はどん底も味わった女王の、苦悩を経ての変化を伝えた。

2012年のロンドン五輪で、日本選手として初めてシングルス4位に輝き、団体で銀メダルも獲得した石川。しかし、「金をとらないと成長したとは認めてもらえない」環境となり、強気の卓球が鳴りを潜めるようになる。

加えて若手が台頭し、「年下の選手に1回負けたら世代交代と言われる」と、石川は変化や挑戦を恐れてためらうように。気持ちと立て直せないままリオデジャネイロ五輪を迎え、まさかの初戦敗退に終わった。

いまだにそのときの試合のビデオを見られないという石川だが、世界の舞台でかつてないほどの惨敗を経験し、どん底を味わったからこそ、変わることが強さになると気づく。

そのひとつが、ボール素材の変更に伴うプレースタイルの変化だ。

セルロイド製から回転がかかりにくいプラスティック製になったのは、石川とロンドン五輪を戦った平野早矢香が「私引退かも」と思ったほどの変更。石川も昨年1月の全日本選手権で平野美宇に敗れ、4連覇を逃すなど影響の大きさを痛感した。

回転の計算ができず「パニックになってしまった」という石川は、より早いタイミングで打つ「高速卓球」へと、思い切ったスタイル変更に挑戦。そのためにフォームの大幅改良にも着手し、もともと嫌いな筋力トレーニングにも励んだ。

9月のアジアカップ3位決定戦で平野に逆転勝利し、結果へとつなげた石川だが、この大会でも準決勝で中国の強豪に敗れた。変わらなければ「中国選手だったり、世界のトップ、一番には絶対なれない」との想いから、石川は恐怖に立ち向かいながら変化に挑み続ける。

10月のワールドカップでは、4年間一度も変えていなかったラケットも変更した。

調整が間に合わず、負けたことがなかった格下を相手に初戦敗退に終わった石川だが、「1回の負けをつくっても得たものは大きい」と後悔せず。「自分がやりたいことをしっかりやる、やれば結果は必ずついてくる」「そっちのほうがやっていて楽しいし、進歩も早い」と前を向いた。

変化に対して積極的な気持ちになれていることが一番うれしいという石川は、「一番最後に笑った人が勝ち」と言う。「最後まで自分が目標としているところまでは必ず諦めない。絶対に諦めないというのは心に決めています」と力強く語った。

「世界チャンピオンになれたら完成するのかも」と、先は長いと話す石川だが、11月の大会ではほとんど勝ったことがなかった中国の強豪に圧勝。2つの大会で3人の中国選手を破る快挙を果たしている。

石川は「自分に挑戦し続けて結果を出し続けること」がプロフェッショナルだとコメント。「期待に応えること、自分の最高のプレーをすること」が、プロとして大事で必要なことだと述べた。