内田篤人がウニオン・ベルリンに移籍しておよそ2カ月がたった。ここまで9試合を終えて、フル出場1回、途中出場1回、1アシスト。出場機会を求めて、かつてシャルケでともに戦ったイエンス・ケラー監督率いる2部のチームに移籍したことを考えれば、満足とは言い難い数字だ。

 そうは言っても、2015年3月からほとんど公式戦に出場していなかった選手に、現実はそれほど甘くない。それは本人だって承知のことだろう。10月15日のレーゲンスブルク戦でも、内田はベンチ入りしながら、出場機会はなかった。それでも、試合後のミックスゾーンでは明るく現在の状況を話してくれた。そのやりとりを、ほぼそのままお伝えすることにしたい。


練習試合で軽快な動きを見せる内田篤人(ウニオン・ベルリン)

――最近はどんな感じですか?

「どんな感じって言われても……。(引越し先の)家のWi-Fiがつながらず、ストレスがめっちゃ溜まってる(笑)。今、岩政(大樹)さんが取材に来ていて、明日、練習後に来てくれるんだけど、『今日も取材するよ』って言われて。試合後にスタンドの人とハイタッチしたら岩政さんだった(笑)」

――状況的には出場機会をじっくり待とうということですか?

「うーん、しょうがないよね、チームが勝っていれば(選手を)代えられないのは普通だから。攻撃の選手ならチャンスはあるけど、ディフェンスラインだからしょうがない。いいじゃん、じっくりちゃんと練習できると思えば。でも、この状態があまり長く続くようなら考えなくちゃいけないけど」

――え、早くも次を?

「そりゃそうでしょ。俺には時間がないから」

――焦りはありますか?

「いや、どうかな。しょうがないから、こればっかりは。(ウニオン・ベルリンは)CLがあって週2ペースで試合があるわけでもないし。この間、90分出た試合(ザントハウゼン戦)では勝てなかったし、俺もあまりよくなかった。代えるきっかけにはならなかった、ということだと思うよ。もともとこのチーム、いい選手が揃っているからね」

――現在のレギュラー右SB(クリストファー・)トリンメルのような守備的スタイルを求められているのか、それとも内田選手のスタイルでいいのか。

「と、思うけどね。それがダメなら出ていくだけじゃない?」

――それがダメなら獲得されてないですよね。

「たぶんそうだと思う。多少は合わせなくてはいけないところはあると思うけど。まあ何試合か見ていても、俺が(自分のプレーを)やれれば、やれるなというのはあるからね。あとは俺次第で、それが時間との勝負」

――出場機会が得られるのは早いほうがいいですね。

「早いほうがいい。でもチームが勝っているし、週に1回しか試合がないからしょうがないって感じ。でもね、流れってあるから。俺がシャルケに行った最初のころがそうだったけど、流れってあるからね。絶対、その時が来るから」

――現状、どういうところに不安がありますか。ケガの状態よりもゲーム体力ですか?

「ハリルホジッチが口にしたからかどうかわからないけど、ゲーム体力とか試合勘とか、今、結構よく使う言葉だと思うんですよ。そういうのも大事だと思うんですけど、そんなのは1試合、2試合で変わるので、結果が出ちゃえば関係ないというのもあるので、あまり気にしてないというか。もちろん、俺はちょっとみんな(他の日本代表候補の選手たち)とは違って、あまりにも長い間やってないから、試合数をこなすというのが大事かなと思っている。でもチーム状況もあるし、この前の90分出た試合の出来はチームも俺もパッとしなかった。それは自分の責任。しょうがないかなと」

――シャルケの最初のころと似ていますか?

「シャルケの場合は、1試合、バイエルン戦(2010〜11シーズン第15節。シャルケが2-0で勝利)をやってリベリーを抑えたとか、スタメンに定着するきっかけがあった。そういうきっかけがあれば……。ずっと練習もしているし、今の右SBのトリンメルもすごくいい選手だけど、俺もやれるかなと。でもその機会がね(なかなか来ない)。覚悟して、知っている監督というので(チームを)チョイスしたつもりだし、プレースタイル、いい時の自分を知ってくれている監督だから、使いどころはある程度、見極めてくれると思う。でもそれがあまりにも遅くなるなら、俺は考える」

――代表招集の報道が出ましたが?

「いや、ヤフーに載っていたヤツでしょ? それによるとレターは来ているようだけど、他の選手と違って、試合やってなさすぎるからね。でも練習してる期間は長いから。なんだかんだ、もう1年くらいやっているからね。復帰して1年と言ったら言い過ぎだけど」

――チャンスをうかがいながらの耐えどきですね。

「そうそう。試合をこなせばやれる。自分がベンチで思い描いているプレーが表現できればやれる。その機会がちょっと回ってこないだけかな」

――その表現をするには瞬発力が必要になる?

「でも、練習やっていてもそうなんだけど、よくなってきた気がするんです。最初こっちに来て、すげー疲れたんだよ。ボールが足につかない感じがしていたんだけど、最近、ちょっと落ち着いてきたんだよね」

――やはり時間が必要なんですね。

「時間って必要なんだって思った。ちゃんと合宿をやって、チームを作ってというところに、俺、遅れて入ってきたから。やっぱりディフェンスラインに割って入るのは難しいんだな。やっぱり時間なんだなと、あらためて(思った)。でも、俺には時間がないから。判断するときは判断する。次の出場機会、いつくるかな? 来週のポカール(ドイツ杯)かな? 相手はレバークーゼンなんだよね。俺にとっては難しい試合になるよな」

――でも、チャンスはそういうものですよね?

「そうなんだよね。自分の『ここでチャンスがきたらいいな』というポイントでないところが多いよね。ケラー監督がやっているのを知って来たからね。最後に拾ってくれた形だし、チャンスがきた時にやるしかないね」

 なかなかチャンスは回ってこないが、自分のプレーをできればやれる。その自信の裏付けにはシャルケで積み重ねた経験がある。チームの先発に定着することと、その先にある代表招集を、内田は確実に見据えていることはよくわかった。どのようなタイミングでチャンスを得て、それをどう掴んでいくか。すべては「俺次第」だろう。

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