【理系研究室訪問】千葉大学園芸学部植物細胞工学研究室に潜入! 教授と学生に研究・ゼミについて聞いてみた【学生記者】
こんにちは! 中央大学3年のわこです。
▼わこさんの記事をもっと見る
https://gakumado.mynavi.jp/student_reporters/452
▶理系大学生300人がぶっちゃけ! 「文系より理系のほうがすごい」と思うこと5選
文系のみなさんは理系の研究室でどのようなことが行われているか知っていますか? 文系の私には、理系の研究がどのようなものか想像がつきません。理系の人にとっては当たり前でも、文系の人にとっては馴染みがなく「実はおもしろい」というものもいろいろあるはず。そこで今回は、実際に理系研究室に潜入し、教授や学生さんに普段の研究についてお話をいろいろ聞いてきました!
千葉大学園芸学部に到着! いよいよ研究室へ!
今回訪れたのは千葉県松戸市にある 「千葉大学園芸学部園芸学研究科 植物細胞工学研究室」。こちらの研究室では、ソメイヨシノの原木とされる木を発見した中村郁郎教授を中心に、植物の遺伝子組み換えの研究を行っています。それではさっそく潜入してみましょう!

▲植物細胞工学研究室がある研究室棟はおしゃれな外観!

▲植物細胞工学研究室の入り口。
想像通り!? まさに「理系研究室!」な光景が!

今回は、植物細胞工学研究室の井川智子助教に研究室を案内してもらいました。研究室内は、珍しい機器がたくさんあり圧倒されましたよ!
最初に案内していただいたのは 「第一研究室」。こちらは主に、遺伝子組み換えや実験の準備をするときに使用するそう。この部屋に設置されていたのは窓付きの不思議なデスク。

井川助教:これは、「クリーンベンチ」という機械です。フィルターが上に設置されていて、そこを通ることによって、このガラス窓の向こう側には無菌の風が流れてきます。空気清浄機のような仕組みですね。ここを使用するときはUVライトも点け、殺菌しながら研究をします。

▲技術員の方が実際にクリーンベンチを使っていました! 使用した器具も毎回火で炙って消毒してから使用するとのこと。徹底されています!
なにやら洗濯機のような、怪しい機械を発見!
井川助教:こちらは「オートクレーヴ」といい、高温度と高圧力によって実験用具を殺菌します。仕組みは、圧力鍋と似ていますね。実験に使用するすべてのものは、最初にオートクレーヴに入れるんですよ。
わこ:すごい! 圧力を殺菌に利用するんですね。
井川助教:オートクレーヴで殺菌した後、そのまま置いておいてしまうと、空気に触れて結局菌が入ってしまいます。外に置くときは必ずアルミホイルを上から被せて空気に触れないようにしています。
わこ:なるほど! いつも菌が入らないように細心の注意を払っているんですね。
続いて、机の上に置かれている機械を発見。こちらは……?
井川助教:この機械は「パーティクルガン」と言います。「パーティクル=粒子」、「ガン=銃」という意味ですね。その名の通り、金の粒子にDNAをコーティングさせて植物に銃のように打ち込みます。
わこ:へえ! ちょっと怖いけどすごい……! では、この機械を使ったあとその植物には、自分のDNAと別の生物からのDNAの2つが存在することになるんですか?
井川助教:そうなりますね。新しく入れた遺伝がどのように影響され、変化していくのか経過を見ていきます。
次に、潜入した部屋ではかなり驚きの光景が! 文系の人たちもわくわくしてしまうはず!
植物がズラリ! P1研究室へ潜入!

▲入った途端、目に入ってくるガラス瓶に入った植物たち!

▲これはタバコ。たくさん並べられていてかっこいい!
ここでは、玉ねぎやタバコなど研究用の植物のほか、学生たちが学園祭で販売するためのかわいい植物なども育てているそう。
井川助教:この部屋では蛍光灯で培養した植物を育てています。植物に効率的に栄養吸収をさせるため、土の代わりに培地で植物を育てるんですよ。
わこ:そうなんですね! 見た目がプルプルしていて寒天みたいです!
井川助教:これは、玉ねぎの植物の細胞の塊です。植物には細胞から元の植物に戻ろうとする仕組みがあります。この仕組みを利用して私たちは遺伝子組み換えに取り組んでいます。
わこ:まるでiPS細胞みたいですね。すごい!
井川助教:他にも、土の中に存在する「アグロバクテリウム」という細菌を植物に感染させ、その植物にアグロバクテリウムの中の遺伝子を移してもらって遺伝子組み換えをすることもあります。その後アグロバクテリウムを殺す抗生物質によって植物だけを生かします。
レンズだけで100万円! 細胞のミクロな部分まで見られる顕微鏡室へ
わこ:この部屋には顕微鏡がたくさんありますね。顕微鏡はどのような条件で使い分けていますか?
井川助教:細胞を光らせて観察するんですが、「拡大顕微鏡」だと60倍が限界だったりします。しかし、別の1000倍の顕微鏡を使えば、細胞の中身まで見ることができるんです。観察したいものよって使う顕微鏡も変えているんですよ。物によっては、レンズだけで100万円するものありますね。
建物の外にも! 園芸学部ならではの特徴がたくさん!
研究室を案内していただいた後は園芸学部を一周してきました!
わこ:外にはいっぱい温室が並んでますね!
井川助教:そうなんです。私たちの研究室だけではなく、他の研究に使用しているものあります。植物工場といって、一年中トマトを育てながら収穫量についての研究を行ったりしている研究室もあるそうですよ。

▲中には稲が植えられていたり……

▲研究というよりも学生たちの趣味? サボテンや多肉植物も。
井川助教:この温室の水やり当番は学生が順番でやります。外の草むしりなんかも、学生が担当するんですよ。私も元々はこの園芸学部の大学生だったので、草むしり当番は大変でした(笑)。
わこ:たしかに夏の草むしりは特に大変そうですね……。
ハウスから研究室に戻る途中には、素敵なお庭が! なんとキャンパス内に フランス式庭園やイギリス式庭園もあるんです。とってもきれい! 池には、ザリガニもいたりするので小学生がザリガニ釣りに訪れることもあるそうです。植物の研究をするための環境が整っていますね。

▲手入れの行き届いたフランス式庭園
研究室内は見たことのない珍しい機械がたくさん置かれていて、驚きの連続! そして、同じ研究室でも研究内容によって実験に使用する機械も異なることがよくわかりました。では、そんな植物細胞工学研究室で研究を続ける学生さんにもお話を伺ってみました。
所属学生はどんな生活を? 研究についても聞いてみた!
植物細胞工学研究室の学生のみなさんにも、お話を伺ってみました!
わこ:こちらの研究室には何人の学生が所属されていますか?
学生A:約20人ですね。ナイジェリアからの留学生もいますよ。男女比もだいたい半々です。
わこ:なぜこの研究室を選んだのですか?
学生B:僕はもともと、理工学系の学部にいたのですが、大学院からこの研究室にきました。やっていることが理学と農学の中間なのでできることが幅広いなと思ったんです。研究室を選ぶときに教授の話を聞いたんですけど、テーマがおもしろそうだと思いましたね。
学生C:あとはやっぱり雰囲気のよさですね。理系の学生は実験などがある分、やっぱり研究室にいる時間が長いので、研究室の雰囲気は大切です。先生と学生の距離の近さも魅力的に感じました。
わこ:普段こちらにいるときはどのように過ごしているのですか?
学生A:もちろん研究室にある機械を使って実験している時間もありますが、一度機械にかけてしまうと、結果が出るまで2~3時間待つことも少なくありません。そういう待ち時間は、ここで話したり遊んだりもしています。この部屋は、休憩室的な役割も果たしているので生活できるくらいのキッチン用具などが一通りそろっています(笑)。

▲食器や水道、冷蔵庫など、まるでお家のキッチン!
わこ:そうなんですね! 待っている時間でおしゃべりしたりするのは楽しそうですね! 一週間に平均どのくらいの時間に研究室にいますか?
学生C:理系研究室は一般的に「コアタイム」というのがあります。「コアタイム」とはだいたい朝8時から夜10時頃までなど、必ず研究室にいなければならない時間のことです。しかし、うちの研究室にはそういった決まりはありません。そのため、週5だったり週3だったり人によってさまざまですね。朝早いときもありますし、夜遅いときもあります。
わこ:なるほど! では、この研究室の特徴があれば教えてください。
学生D:やはりコアタイムがないことにもつながりますが、いつ研究室にいくか自分で自由に組み立てられるので「自由な雰囲気」というのが一番だと思います。やりたい! と誰かが思ったことは何でもできますし、研究には直接関係のないこともアイディアを出せば実行することができます。実際、この間は竹を切るところから自分たちでやって流しそうめんをしましたね。その他にも、たこ焼きパーティーをしたり、和気あいあいとして本当に楽しいですよ!

▲漫画もおいてあるなど、まるでサークルの部室のよう?
わこ:では、みなさんの現在の研究内容や取り組みについて教えてください!
学生A:僕は植物の受精の研究をしています。米や稲もすべて受精の結果でうまくいかなければ食に困ってしまうことになるかもしれません。受精の研究をすることで食べ物の生産性を安定させたいです。
学生B:僕は、たばこやポプラを使って植物そのものを大きくする研究をしています。植物が大きくなれば収穫量も増え、食品自給率UPにもつながると思っているので。
学生C:私は、組み換え技術によって防虫の植物を作る研究をしています。最近は農薬が効かない虫も出てきましたし、農薬を使わずに植物自身で防虫ができるようになったら素敵ですよね。
学生D:私は、桜の親を見つける研究をしています。日本にあるソメイヨシノは実は全てクローンなんです。父親は見つかったのですが母親がどの品種なのかまだ見つかってないんですよ。歴史的根拠に基づいて中村先生が目星をつけた場所にあるソメイヨシノの遺伝子を日々解析しています。

▲学生のみなさんの実験ノート。一年間の研究で3冊の大学ノートがいっぱいになることもあるそう。
わこ:細胞工学研究と一言でいっても、人によって研究内容はさまざまですね! 研究中なかなか思うような結果が出なかったときはどうしているのですか?
学生A:先生や先輩に聞いて研究方法を工夫しています。でも、研究に失敗はつきもので、当然のこと。なので、落ち込むというより次につなげようと思うようにしています。
わこ:たしかに、失敗も結果の一つっていいますからね。では、この研究所での研究の魅力ややりがいは何ですか?
学生D:いまだ誰も解明していない分野を研究しているところが魅力です!
わこ:たしかに! 桜の研究なんかは特に大発見につながりそうですもんね。逆に研究室に所属しているからこその悩みはありますか?
学生C:うーん、水やり当番ですかね(笑)。担当制でいつでも必ず一人はやらなければならないので、年末年始やクリスマスにも当番が回ってくることがあります。そんな日だからこそ、逆にテンションを上げて担当の人と一緒に盛り上がるというのもありますね(笑)。
植物細胞工学研究室中村教授に研究・学生への思いを聞いてみた
最後に、この研究室で長年学生たちをサポートしアドバイスをしながら、ご自身の研究も続けていらっしゃる中村教授に話をお聞きしました!
わこ:現在の研究テーマについて教えてください。
中村教授:私は、稲などを用いながら遺伝子組み換えによって病気や虫などに抵抗性がある植物を作る研究をしています。他にもこの研究室では、植物の個体を大きくする研究だったり、植物の生殖システムの解明にも取り組んでいます。
わこ:この研究の難しさはどこにありますか?
中村教授:遺伝子組み換えができる植物、つまり実験のために外部から遺伝子を入れられる植物はまだまだ限られていることですね。いまは主にシロイヌナズナという小さな花が付く植物を使用することが多いのですが、これは花自体が小さいことと遺伝子的に扱いやすいという理由から使用しています。もっと他の植物も使えれば幅が広がりますよね。

▲教授室にあったまだ育成途中のシロイヌナズナ
わこ:たしかに先程井川助教からも同じことをお聞きしました!
中村教授:あとは、やはり日本では「遺伝子組み換え」ということ自体が受け入れられていない現状があります。
わこ:たしかに遺伝子組み換えがされている食べ物とかはあまり手に取りたくないと思ってしまいます。
中村教授:そうなんです。一般の人たちには怖いと思われてしまうんですよね。
わこ:なるほど。では、研究についてこれからの目標は何ですか。
中村教授:やはり遺伝子操作に対する「怖い」というイメージを変えていきたいです。そして、より安心な植物を作っていきたいですね。あとは、植物の進化を解明したいと思っています。ある植物の遺伝子配列についてはわかっていても、その進化の過程まではまだわからないことも多いんですよ。
わこ:まだまだ研究途中のことがいっぱいあるんですね。では、最後に学生にメッセージをお願いします。
中村教授:学生のみなさんにはもっと「野心」を持ってほしいです。最近は、「こうしてやろう」と志して入学してくる大学生は少ないような気がします。有名な原理を発見して、世界を驚かせたい! というような野心を持った学生と一緒に研究をしたいですね。博士課程まで研究してくれる学生がもっと増えてくれればと思っています。
わこ:本日はありがとうございました!
千葉大学園芸学部園芸学研究科植物細胞工学研究室のみなさん貴重なお話ありがとうございました! 理系研究室には珍しい機械がたくさんありとても楽しかったです。研究には、失敗を恐れずに挑戦する心や日々のコツコツとした積み重ねが大切であるということを学びました。先生方や学生の方の研究に対する熱意がとてもかっこよかったです! 私も目の前にある学習に全力で取り組んでいきたいと思います。
文・わこ
