開幕からの6試合で4得点・5アシスト。ベベレン森岡が止まらない! (C)Getty Images

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 森岡亮太の夜だった。
 
 前半だけで2ゴール・1アシストを固めどりし、ベベレン・サポーターのハートを鷲掴みにした。オイペンを5対1で下した後、チームメートともにゴール裏まで挨拶に行くと、森岡は「席まで上がってこい」とサポーターに促され、ウルトラスの真ん中でコールリーダーとして「ウイー・アー・べフェレン!」のチャントをリード。続いてサポーターは「モーリー・オカ! モリー・オカ!」と名前を連呼した。
 
「シャイボーイなんであんまりそういうのはやりたくないんですが、(自分のコールで)『ウイー・アー・べフェレン』をやりました。あの時は『もうちょっと勘弁してよ』と思ってましたけれど、みんなもすごく喜んでくれて、認められているな、というのを感じます。すごく嬉しいですね」
 
『森岡劇場』は17分、MFイブラヒマ・セックのゴールアシストから開演する。右からの大きなクロスをファーサイドで待ち受けた森岡は空中戦で強さを見せ、右肩辺りにボールを当てて折り返し。これをセックが相手ゴールに背を向けながらボレーで蹴り込んだ。
 
 そして森岡は、CFイサーク・キーセ・テリンのお膳立てで19分と45分に連続ゴールを挙げる。最初のゴールはテリンの折り返しに、森岡がピンポイントでゴール前へ飛び込み、ダイレクトシュートで決めた。
 
「(オイペンのゴール前の守備の)スカウティングで『前線に上げたボールが入った時に、落としたところがすごく空く』というのがあったので、全速力で走ったら本当に良い形になった。相手も一瞬ポケっとしていて、そこにうまく、早く入れました」
 
 2ゴール目はテリンからの横パスをバイタルエリアで受け、狙い澄ましたシュートでマーカーの股間を抜き、強烈なグラウンダーで決めたもの。
 
「あれは練習のミニゲームで、うちのディフェンダー相手によくやっていたシュートです。ミニゲームが終わると、やられたチームメイトから『お前、それ、止めてくれ』って言われるんです。あれは結構、相手のダメージがデカいと思います。ゴールを決めた後、チームメイトが『練習と一緒のシュートだな』と笑いながら近付いてきました」
 
 この夜、生後9か月の長男が、背番号44を付けた父の試合を初めて観に来た。ゴールを決めた後の森岡が親指をしゃぶるパフォーマンスを見せていたように思えたが、本人曰く「親指はしゃぶってません」とのこと。
 
「うちの子供、お腹が減ると指じゃなくて拳を舐めるんです。だから拳を舐めてたんです(笑)」
 森岡の2ゴール・1アシストの活躍で前半を3対0で終えたベベレンだったが、後半は相手のシステム変更や疲労もあって停滞する時間帯が続いた。森岡も「後半、どうした俺!? みたいな感じだった」と振り返るほど、パフォーマンスは低下した。
 
 結局、86分でお役御免となり、観衆のスタンディングオベーションを浴びながらベンチへ退いた。森岡はこれを指揮官の叱咤激励と受け止めている。
 
「日本だと『もっと出来るやろ』という期待を込め、交代させられていた。もっと前半のように、通すところは通して、しっかりチャンスを作れないといけない。もしかしたら、それができてなかったということで、交代になったのかもしれないですね」
 
 開幕からの6試合で4ゴール・5アシストを記録しており、『今シーズンのベルギー・リーグにおけるサプライズ』との声も聞こえてくる。日本代表でのチャンスが与えられてもいい活躍ぶりだ。
 
「やっぱり、代表でプレーするというのは、みんなの夢ですからね。(ワールドカップ出場が)決まったことでチャンスが広がってると思いますし、うまいこと(本大会のメンバーに)滑り込むために、代表でやってみたいですね」
 
 森岡亮太は、今が旬だ。

取材・文:中田徹