東京・代々木公園で「パエリア祭りin 代々木公園」が開催された。このイベントでは「国際パエリアコンクール」への出場をかけた日本予選、日本一のパエリアを決める「全国パエリア選手権」などが行われる。



実は筆者、パエリアはもちろん、スペイン料理も、スペインも大好きである。冷たい雨も気にせず、足取り軽く会場へ向かった。

イベントの正式名称は「パエリア祭り〜Che que bo!〜 in 代々木公園・Spring Love 春風」。『Che que bo』とはパエリアの本場であるバレンシアの言葉で、親しい人に使うフレーズ。『おい、これウマイぜ!』というような意味があるそう。

パエリア職人世界一を目指す「国際パエリアコンクール」予選


毎年9月にスペイン・バレンシアで行われる、パエリア世界一を決定する「国際パエリアコンクール」。このコンクールに向けた日本予選が行われ、北は北海道、南は熊本まで、20チームが参加した。上位3店舗に国際大会出場権が与えられる。



作るのは伝統的な作られるパエリア「バレンシアーナ」。使うパエリアパンは直径70センチ、なんと20人前のパエリアができる。材料は持ち込み禁止で全て支給される。スペイン米1.5キロ、オリーブオイル1リットル鶏2〜3羽、うさぎ丸ごと1羽など豪快だ。

さらに、昔から伝わる薪を使った調理方法も特徴である。各チームうちわであおいだり、小枝を入れたり、薪の組み方を工夫したり、試行錯誤していた。もちろん、通常お店で作る際はガスを使うため、なかなか薪の扱いには苦労するとのこと。




決められた時間までに審査会場にパエリアを提出する必要があるため、時間との闘いである。どのチームも国際大会出場をかけ、かなり集中した雰囲気だ。声をかけるのを若干ためらうほどの緊張感が漂う。




20個のパエリアが勢ぞろい。厳正な審査開始


調理開始から約2時間半、各チームのパエリアが次々に完成する。パエリアは“おこげ”が命。最後の最後まで火加減を調整して、自ら審査受付へと運ぶ。




全く同じ材料を使っているのに、色合いなどチームによって仕上がりはさまざま。審査は「見た目・おこげ・味・色・食感」の5項目を10段階で評価する。日本パエリア協会事務局長・栗原さんに、それぞれのポイントを聞いた。

・見た目:色や具材の配置。肉や野菜のバランス。
・おこげ:全体的におこげができているか
・味:塩加減や、素材の風味など
・色:黄色すぎても白すぎてもダメ。おいしそうな茶色が理想
・食感:お米にやや芯が残る「アルデンテ」であること




審査会場にはできたてパエリアの美味しそうな香りがただよう。今回の予選では、審査を終えた20チームのパエリアを一口ずつ食べられる試食チケットも販売され、長蛇の列ができていた。



お皿がひとつなので、いろいろなチームのパエリアが混ざってしまったものの、それでも味わいや食感の違いを感じることができる。出来上がりから時間がたって、冷めてしまっていることだけが残念だが、20店舗分のパエリアを一度に食べ比べできる貴重な機会となった。



<「国際パエリアコンクール」日本予選結果>
1位 スペイン料理とワイン anocado
2位 BAR VISCA バルビスカ
3位 びいどろ銀座店 VIDRIO GUINZA

変わり種パエリアもいろいろ「全国パエリア選手権」


「パエリア祭り」では、日本各地のスペイン料理店、バルなど、約10店舗が参加してパエリア日本一を競う「全国パエリア決定戦」も開催。北海道・北見の焼肉パエリア、宮崎・炭火焼き地鶏のパエリアなど、ご当地の食材を使った自慢のパエリアが並んでいた。




そのほか、パエリア以外のドリンクやフードの屋台も出店。マタドールやフラメンコの衣装を着たスタッフもいて、スペインムードを高めている。




シードルのブースでは、高い位置からシードルを手元のグラスに注ぐ「エスカンシアドール」の技を見ることもできた。頭上の高さからきれいに液体が注がれる様子は、何度みても飽きない。最初の一滴を落とすところが一番気を付けるポイントらしい。



スペイン料理を代表するパエリア。基本的には大人数で分け合って食べるもので、なかなかこれだけの種類が一堂に集まることはない。パエリア職人たちの熱い戦いが生み出す、美味しいパエリア。そしてスペインの空気を感じられるイベントであった。










(篠崎夏美/イベニア)