贈り物などでもらうと嬉しい定番菓子、ヨックモックの「シガール」。

名前でピンとこなくとも、薄く細長く巻かれた葉巻状のかたちを見れば、老若男女問わず、大多数の人が「食べたことある!」と思うだろう。

そんなシガールから3月15日に、13年ぶりの新味として抹茶味「シガール オゥ マッチャ」が発売されるという。そこで、ヨックモックに問い合わせ、一足お先に入手することに成功。実際に食べてみた。



まずパッケージ。春らしく爽やかな色彩が施された筒状の缶は、「着物をモチーフとした」というレトロモダンなデザインで、和装シーンにも洋装シーンにも幅広く利用できるものとなっているそう。
また、シガールの個包装は通常、中身の見える透明フィルムとなっているが、「シガール オゥ マッチャ」の場合は、缶と同じデザインになっている。実はこれ、見た目の楽しさだけでなく、「光による退色を防ぐなど、抹茶の色鮮やかさや品質を守るため」、アルミフィルムを採用しているのだとか。



実際に食べてみると、薄く巻かれた抹茶のクッキー生地と、中に詰められた甘さ控えめながら濃厚な抹茶チョコとが重なり合って風味豊かで、かつ「シガール」ならではのバター感も健在である。



バター×抹茶の組み合わせがこうも合うとは。逆に今までなかったことが不思議なくらいだが、なぜ今、抹茶味なのだろうか。広報担当者に聞いた。

構想に3年かけた老若男女に好まれる抹茶味


「抹茶味を出した理由は『お客様からの声』『バターの風味との相性』『彩の美しさ』からです。構想には3年ほどかかっています。今でこそ、抹茶は老若男女が好む味となっていますが、以前は洋菓子に使用することに抵抗がある方もいらっしゃいました。しかし、今やmatchaという単語は、パリやニューヨークなど海外の主要都市では、そのままの単語で使用されているくらい、国内外でメジャーな味となってきたのではないでしょうか」

今では定番となっている「抹茶味」だが、そういえば昔は抹茶アイスや、高級な抹茶チョコがある程度だったかも。外国人が抹茶味のお菓子を大量に買って帰るというニュースもときどき報じられるように、世界的にメジャーになったことは大きいのだろう。

ただし、抹茶味のお菓子は世の中にたくさんあるとはいえ、ヨックモックが「シガール」の抹茶味開発において目指したのは「シンプルでお子様から大人まで老若男女に好まれる『ど真ん中のストレート』」だったという。
「ここにたどり着くまでには、課題がいくつもありました。まず、バターの風味やバニラの香りなどシガールらしい味わいを大切にしながら、抹茶をアピールするという絶妙なバランスを追求しなければなりませんでした。また、添加物を極力使わないなど、様々なオーダーに応えつつ、チョコレートとラング・ド・シャー生地のパターンを考え、何度も試作しました。社内からの期待は大変大きく、求められる水準も非常に高いものでしたが、食べだしたら次から次へと止まらない……、そんな商品になっていると自負しています」

17世紀の絵画をヒントにして生まれたシガール


ところで、そもそもシガールはなぜ巻かれることになったのだろうか。
「1960年代当時、量産型のクッキーは安価で日持ちのするマーガリンやショートニングを使ったものが中心だったなか、『これ以上入れると、お菓子にはならない』というギリギリの分量までバターを増やし、より高いコクと風味の実現を図りました。また、軽い口当たりと繊細な口溶けは、生地の厚さに関係しますが、バターが多くデリケートな生地を薄く焼き上げるのは至難の業。ようやく焼き上がったごくごく薄い生地は、非常に壊れやすく、扱うことすら困難を極めました。そんなとき、ヒントを与えてくれたのは、17世紀にフランス人画家により描かれた一枚の絵。『巻菓子のある静物』と題されたその作品には、紙のように薄く焼き上げられた葉巻状のお菓子が描かれていたのです」

クッキーを葉巻状に巻く発想は、なんと17世紀の一枚の絵をヒントにし、「生地を補強する」ために生まれたというわけだ。しかも、実際に試してみると、二重三重と薄い生地が重なり合うことで、独特の好ましい食感が創り出されたのである。
そう思うと、17世紀のフランス人画家の絵をきっかけに生まれ、21世紀の日本の抹茶と出会った「シガール オゥ マッチャ」。品よく味わい深いのも、納得なのだった。
(田幸和歌子)