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「お、ねだん以上」のフレーズで知られるニトリの快進撃が止まりません。業界2位のIKEA、3位の大塚家具を大きく引き離し、このまま行けば30期連続増収増益という脅威的な記録を達成する見通しです。今回の無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』では、著者でMBAホルダーの安部徹也さんがニトリの圧倒的な強さの秘密を徹底分析するとともに、現段階で無敵とも言える同社のリスク要因についても探ります。

30期連続増収増益という偉業に迫る業績好調なニトリ

ニトリホールディングスが12月22日に発表した2016年3月から11月期までの業績は、売上高が前年同期比13%増の3,790億円、営業利益は28%増の702億円、そして純利益は36%増の475億円という増収増益となりました。

ニトリは、2016年2月期の決算までに29期連続増収増益を記録しており、ほぼ30期連続増収増益を達成することは間違いないといっても過言ではないでしょう。

ニトリは1967年、創業者である似鳥昭雄氏が北海道の札幌で「似鳥家具店」を開店したことから始まります。その後紆余曲折を経たものの、1987年から増収増益を続け、2017年3月期には遂に売上高が5,000億円、営業利益は790億円に達する見込みです。

家具小売業という括りで見れば、業界2位のIKEAが2015年11月期決算で売上高780億円、営業利益9億円、そして3位の大塚家具が2015年12月期決算で売上高580億円、営業利益4億円なので、マーケットリーダーのニトリとは圧倒的な差がついていることがわかります。

果たして、ニトリのこの圧倒的な強さの秘密はどこにあるのでしょうか? 掘り下げていきましょう。

ニトリが圧倒的な強さを誇る背景には何があるのか?

1.卓越したビジネスモデル

まずニトリの強さの秘訣として、最初に挙げられるのがその卓越したビジネスモデルでしょう。

ニトリは、「製造物流小売業」という他に類を見ないビジネスモデルを築いてきました。ビジネスが成長する過程で、自社の川下、もしくは川上の事業を取り込んで効率性や収益性を高めることは、昨今では特段珍しいことではなくなりました。たとえば、ユニクロを展開するファーストリテイリングなども当初は他メーカーの商品を販売する小売業からスタートしましたが、商品を自社生産に切り替えて「製造小売業」というビジネスモデルを導入することによって、現在の飛躍的な成功の礎を築いてきました。

特にファストファッション関連ではGAPがこのビジネスモデルを生み出し、ユニクロだけでなくZARAなど世界トップレベルのブランドがこぞって採用したことでも有名で、製造小売業のビジネスモデルをSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)と呼んでいます。

ニトリの場合は、このファストファッション業界で大きな成功を収めた製造小売りのビジネスモデルに、さらに物流まで取り込んで独自のビジネスモデルとして進化させ続けているのです。

ニトリでは、価格に比して付加価値の高い商品を顧客に届けるために、原材料の調達から自社で行っています。ニトリのバイヤーは、世界各国の展示会を飛び回り、新製品や素材をチェックして低コストながらも質の高い原材料を調達。それをインドネシアとベトナムの工場へ直送し、製品の生産を行っていきます。そして、この工場で生産された様々な商品が日本全国の店舗に運ばれ、最終的にお客様のもとまで届けられることになるのです。

この究極のビジネスモデルは、顧客のニーズに即した製品開発を可能にし、売れ筋商品をスピーディーに販売できるだけでなく、コスト削減にも大きく寄与しています。

実際にニトリの営業利益率は2015年2月期で15.9%と同業の大塚家具の2015年12月期の0.8%と比較して圧倒的な収益率を誇り、収益性が高いことでも有名なユニクロを展開するファーストリテイリングの2015年8月期の営業利益率7.1%をも大幅に上回る数値をたたき出しているのです。

2.リーダーの戦略

続いて、ニトリが成長を続ける背景としてリーダーの戦略が挙げられます。ニトリは家具小売業界では圧倒的なリーダーの立場にいます。戦略のセオリーからいえば、リーダーが取るべき戦略は「全方位化」です。つまり、様々な分野に戦力を割いて、市場シェアを高めていかなければなりません。

ニトリにおいても、当初は低価格商品で大衆向けにビジネスを展開してきましたが、最近では高価格帯の製品も取り扱うなど、高級路線への進出も図り、新たな顧客層の開拓に余念がありません。

店舗網も従来は郊外型で大きな駐車場を備えた大店舗が主流でしたが、2015年にはプランタン銀座に出店するなど都市型の店舗を拡大して、これまでとは違う客層を取り込むことに成功しています。

さらに高い収益性で生み出されるニトリの営業キャッシュは2015年2月期で529億円にも上り、これは家具小売業界大手の大塚家具の総売上に匹敵する水準にまで達しています。この潤沢な資金を出店拡大などの投資に充てることによって、年間の店舗純増数は50を超え、益々2位以下を引き離すリーダーの戦略がうまく機能しているのです。

3.徹底した数値管理

ニトリはお伝えしたように家具小売業界では圧倒的なリーダーとして、業界に確固たるポジションを確立していますが、創業者であり会長の似鳥昭雄氏にまったくの油断はありません。その証拠として、徹底的な主要経営効率指標による数値管理が挙げられます。

ニトリは、経営を数値で管理するために、22のKPI(Key Performance Index=鍵になる経営指標)を設定しています。その指標には総売上増加率や経常利益増加率、商品回転率、坪あたり営業利益高など様々なものがあり、それぞれに高い目標値を設定して、毎期毎期クリアすることを自らに課しています。そして、これら22の経営指標は、決算期ごとに「勝敗」を付け、何勝何敗だったかを発表し、より高い勝率を達成すべくリーダーの地位に甘んじることなくさらに高みを目指しているのです。

果たして、ニトリに死角はあるのか?

今のところ、ニトリに死角は見当たりません。ただ、今後のリスク要因としては、一般的には日本経済の低迷による売上減少や円安によるコスト増加などが考えられるでしょう。

また、一つ気掛かりなのが、全世界で3兆5,000億円の売り上げを誇るIKEAの動向です。IKEAは日本市場では、まだまだニトリほどの存在感を発揮するまでには至っていませんが、本気を出して日本市場を攻略すべく総力を注ぎ込んでくるなら、いかにニトリが日本市場では圧倒的にリーダーだとしても、全社的に見ればニトリを大幅に上回る経営資源を有しているIKEAが凌駕することも考えられなくはありません。

ウォルマートが日本でうまくいかなかったように、日本市場は特殊な面がありますが、今後もニトリはIKEAが日本市場に多大な経営資源を投入し、攻略しようと思わせないくらいに圧倒的な勝利を収め続ける必要がありそうです。

image by: Wikimedia Commons

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著者/安部 徹也

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出典元:まぐまぐニュース!