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●最適解を学習するAI
NTTレゾナントが運営する検索/ポータルサイト「goo」の人気Q&Aコンテンツ「教えて! goo」において、AI「オシエル」を使った恋愛相談サービスを開始した。恋愛相談という、ともすれば重いテーマのサービスにおいて、AIはどのような役割を果たせるのだろうか。また、gooはどのような展開を今後考えているのだろうか。

○3000万件以上のデータから最適解を学習

「教えて! goo」の「オシエル」は、ユーザーが投稿した質問に対し、自然な文章で返答してくれる恋愛相談用AIだ。実際に恋愛相談に対する実例を見てみよう。

好きな人に振り向いて欲しいという趣旨の質問に対して、AIは「大丈夫です。脈はあると思いますよ。これからもっと丁寧にお互いを……」などと、投稿者に対して、自然で丁寧な言葉で返事をしているのがわかる。AIが書いたとは思えないほど自然な文章だ。

「オシエル」はNTTグループのAI「corevo」を活用して開発されたもので、「教えて! goo」に投稿された3000万件以上のQ&Aデータから「使われている単語の意味」「質問(Q)と回答(A)の対応関係」「質問内の文の組み合わせ」をディープラーニングで学習し、モデル(型)を生成。投稿された質問に対して、生成したモデルを用いて質問にマッチする「共感」、「結論」、「理由」を含む文を回答集合から抽出し、抽出した文を組み合わせて新たな回答を生成する。文章のスタイル(文末が「だ・である」か「です・ます」か、など)はNTTドコモの自然対話プラットフォームを利用して修正しているという。

恋愛相談とAIの組み合わせという点では、Yahoo! JapanでもQ&Aコーナーの「Yahoo!知恵袋」で、バックボーンにWatsonを使った「これって付き合える? 脈ありチェッカーβ」をAndroid用アプリとして提供している。ただし、こちらは脈の有無を%表示するだけで、質問に応えてくれるわけではない。NTTレゾナントによれば、恋愛相談や人生相談など、答えが決まっていない質問に対し、ディープラーニングを使って複数の文を組み合わせ、自然な回答を生成する技術としては「オシエル」が世界初となるという。

●AIが生み出す満足度
○AIが回答することが満足度の向上につながる?

人工知能を使い自然言語で応対するサービスは現在急速に立ち上がりつつあるが、その大半はサポートセンターのチャットbot(自動返信プログラム)など、比較的短いセンテンスのやり取りで対話し、ひとつの質問に対して明確な正解が存在するものが中心だ。

これに対し、ユーザーのQ&Aコーナーというのは、一度に投稿される文章が長く、必ずしも起承転結や目的がはっきりしないことも多い。ひとつの質問に対して多くの答えが寄せられるように、問題に対する正解が1つだけ求められるという性格のものでもない。むしろ、質問者は多くの回答から自分が納得できるものを求めている感もあり、サービスに求められるのは「素早く、できるだけ多いレスポンス」ということになる。

恋愛相談という「重い」質問に対して人工知能が回答することに対する倫理的な面での疑問もあったのだが、前述したような観点からは、AIによる自動返信であっても、それはユーザーにとってはサービスの拡充としか映らないのではないだろうか。相手が人であるかAIであるかよりも、自分が納得できる回答が得られるほうが満足度は高くなるだろう。また、回答が「共感」からスタートして相手に受け入れやすくしているというストーリー仕立てになっているのも、受け取る側のユーザーとしては心理的な障壁を下げる効果になっているように思う。

こうしたQ&Aサービスはポータルサイトでも人気コンテンツの一つだが、一方で素人同士の回答になるため、回答の質の低下という問題が常に付きまとう。その点、ディープラーニングで良質な回答を学習し、その中から近い回答を抜き出して応えてくれる「オシエル」のAIは、常時一定水準の回答を素早く提供できるという点で、ユーザーの満足度を高めてくれることになる。gooでは今後、恋愛相談以外の分野のQ&AにもAI回答の対象を拡張するという。具体的には旅行や子育て、介護といった分野が挙げられていた。

goo以外のポータルサービスでも、今後はQ&AコーナーでのAI活用が、ユーザー満足度を効率良く高める上で必須となっていくだろう。また逆に、AIが浸透することで、人間による生の意見に対する価値が高まることも予想される。全体としてはコミュニティの質向上に対してプラスに働くことが期待できるだろう。

(海老原昭)