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【朝倉秀雄の永田町炎上】

■国会議員は下手をすると自己破産

『朝倉秀雄の永田町炎上』も早いもので三年目に入った。これまで筆者の拙いコラムにアクセスいただいた読者諸氏には改めて厚く御礼を申し上げる次第である。

 筆者はかねがね自らの著書やテレビ番組で、議員だった父親が死ぬか、引退して「家業」の「政治家商売」を継がなければならなくなった世襲議員はともかく、官公庁や一流企業で順調な人生を送っている者が大金をかけ、下手をすると人生を棒に振る大きなリスクを犯してまで国会議員になろうなどという酔狂な人間はまず滅多にいないと主張してきた。

 現に筆者の友人の某衆議院議員などはともかく当選6回を重ね、まだ閣僚にはなっていないものの副大臣や常任委員長になったのはいいが、財産を蕩尽し、父親から受け継いだ豪邸は競売にかけられ、経営していたタクシー会社も人手に渡り、何億円もの借金を抱える始末だ。周囲から「センセイ」と呼ばれ、秘書に傅かれ、民間には冷淡な官僚が揉み手で擦り寄ってくる「快適な生活」を送る代償はそれだけ大きい。

 彼の口癖は「俺は落選したら自己破産しかねえ」だが、金融機関というのは、現金なもので、現職のうちは借金の取り立ても猶予してくれるが、落選した途端に容赦がなくなる。

■そもそも「良識」ある人間は政治家などにはならない

 筆者は政策秘書として与野党合わせ衆参8名の国会議員に仕え、委員会質問の原稿の作成、「出版記念パーティー」という名の政治資金集めの小道具である著作の代筆、講演会作り、資金管理団体の会見責任者として政治資金の管理や収支報告書の作成などに従事してきた。同業の「もの書き」のなかには政治記者上がりなどもいるが、政治家という人種はすこぶる狡猾で、マスコミ人の前では綺麗事ばかり宣い、なかなか本性を見せないから、彼らには政治家の醜悪な正体がわからない。

 その点、秘書として昼夜を問わず議員たちと行動を共にし、彼らの生の生態を熟知する筆者に言わせれば、国会議員を含む政治家に「良識を持て」「悪いことをするな」というのは、「プロのドロボー」に「物を盗むな」麻生副総理が大好きな「ゴルゴ13」に「人を殺すな」というのに等しい。

■法律に違反しない政治家などほとんどいない

 事実、ほとんど議員が何らかの法律に違反している。甘利前経済再生相の一件が代表するように「あっせん利得処罰法」が禁止する「口利きビジネス」はどこの議員の事務所でも日常業務として定着しているし、政治資金規正法に「使途」についての明確な規制がないのを良いことに政治資金をキャバクラ代や愛人手当てにしたり、中には女性秘書のキャミソールを買って槍玉に挙げられた某大臣のような例もある。「良識が欠如」しているのは何も舛添前東京都知事に限った話ではない。

 また中元や歳暮、香典、生花、夏祭りや花火大会への協賛金の提供など公職選挙法が禁止する選挙区内での寄付など誰も守りはしない。

 いざ選挙ともなれば、「どぶ板選挙」などと称し、公選法が禁止する「戸別訪問」などやりたい放題だ。地方議員となると、さらに悪質で、中には政務活動費を使って東南アジアで「買春」をしたり、山中温泉に行き、お座敷遊びなどの代金にしてしまう不埒者さえいる。

■毎日が死と隣り合わせの筆者の節操のない参議院選挑戦

 これまでさんざん政治家の悪口ばかり書いてきたそんな筆者が節操もなく、「何を血迷った」のか、再三、辞退した挙げ句、どうしても過去のしがらみの呪縛から逃れ難く、今夏の参議院選挙に「新党改革」から「比例区」に立候補する羽目になった。政権担当能力など皆無なのに政府・与党を非難ばかりしている多くの野党とは違い、「アベノミクスをどうしても成功させたい」という荒井広幸代表の主張に共感を覚えたからだ。

「新党改革」と言えば、かつては「悪徳政治家」の舛添前都知事が代表であったから、有権者が両者を結びつけて考えるのは致し方ないことだし、猛烈な「逆風」が吹いていることは間違いない。

 だが、舛添の数々のスキャンダルはひとえに当人の歪んだ金銭感覚と「政治的資質の欠如」によるものであって、現在の「新党改革」とは何の関係もないことを改めて強調しておこう。

文・朝倉秀雄(あさくらひでお)※ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中。