周囲との連係も少しずつ深まってきた。右サイドで縦関係を築いたDF酒井高徳(ハンブルガーSV)は、「『PKを蹴った勢いで打て!』って思ったんですけど、後ろにパスを出したので。そうやって学んでいくものだと思うし、まずはそこで彼にパスの選択肢もあったところを褒めたい。しっかり中が見えていたのはポジティブなこと」と若武者の一瞬の判断に理解を示した。

 GK西川周作は涙を流すストライカーに「本当にいいプレーをした」と声を掛けた。「浅野は『ホント、すみません……』ってみんなに言っていましたけど、これが彼にとってのいい経験になって、チームとしても最終予選で生かせられればいい。今日の後悔は力になる」。号泣する浅野に、多くのチームメイトが次々と声を掛けに行く姿には、今後への期待が感じられた。

 さまざまな経験を積んだキリンカップ。反省点もあったが、決して自信を失ったわけではない。「90分間を通して納得のいくプレーをするために、もっともっとやらないといけないと思った一方で、『やれるんだ』というある感覚はつかめた」と話す浅野の視線は、すでに先を見据えている。

 悔しさはゴールへの執念を強くする。「点を取れなくて何度も悔しい思いをした」というFW岡崎慎司(レスター)は、まさに悔しさをバネにはい上がってきたストライカー。代表歴代3位となる通算49ゴールがそれを証明している。決定機でシュートを打たずに後悔するのも一つの経験。リオ五輪の主力としても期待される21歳に失うものはない。8月のブラジルで輝くために、そして9月から始まるアジア最終予選のピッチに立つためには、今日の涙を大きな成長の糧にするしかない。二度あることが三度あっては意味がない。“三度目の正直”で結果を出すべく、浅野拓磨が強い覚悟を胸に未来へ向かって走り続ける。

文=高尾太恵子