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●風邪やインフルエンザをこじらせない!
全国各地で桜の開花を迎え春の訪れを感じる一方で、時折肌寒い日もあるのが今の時期。季節の変わり目に風邪をひいてしまった人や、花粉症に悩まされている人も多いことだろう。それらに共通する症状として「鼻水」がある。

今回は、「鼻水が止まらない! 」という症状が気になる人のために、原因となりうる鼻の病気について、日本医科大学 耳鼻咽喉科 教授(武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科 部長)の松根彰志医師にお聞きした。

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○その鼻水、「副鼻腔炎」では?

鼻水が止まらない原因の1つとして、幼児から高齢者まで世代を超えてかかる「副鼻腔(びくう)炎」という病気があります。一般的には、昔から「蓄膿症」とも呼ばれています。

副鼻腔とは、鼻の周囲にある左右4つずつの空洞のこと。通常は、粘液がたまらないように換気・排せつがよくできているのですが、ウイルス・細菌感染やアレルギー反応などによって鼻の粘膜がはれると、細菌が繁殖しやすくなって鼻と副鼻腔の間のルートがふさがってしまいます。すると、大量の鼻水をはじめ、さまざまな鼻の症状に悩まされることになります。

主な症状としては次のようなものがあります。

副鼻腔炎チェックリスト

■鼻水が止まらず、頻回にのどにも流れ落ちる(後鼻漏)

■特に夜になると咳き込んで眠れず、朝になるとのどに痰がたまっている

■鼻がつまっていて息苦しい

■黄色で粘性のある鼻水が出る

■鼻水の症状に頭痛が伴う

■いびきがひどい

■嗅覚が低下している

■頭痛や頭重感が続いている

○花粉症は「増悪因子」に

副鼻腔炎には、風邪をこじらせたときなどに起こりやすい「急性副鼻腔炎」と、もともと長期に鼻の悪い人に多く見られる「慢性副鼻腔炎」があります。ただし、急性副鼻腔炎をきちんと治療しないと、症状がぶり返したり(反復化)、長引いたり(遷延化)し、慢性副鼻腔炎に進行する場合があります。

急性副鼻腔炎の原因はウイルスや細菌の感染ですので、風邪やインフルエンザが悪化して起こることがあります。また、花粉は直接的な原因にはならないものの、「増悪因子」にはなりえます。つまり、副鼻腔炎の人が花粉症になると、症状がさらに悪化してつらい思いをする可能性があるということです。

病院では、まず原因を究明し、抗生物質による薬物治療、鼻洗浄・鼻吸引、内視鏡手術(外来手術、入院手術)などを行います。外来手術ではレーザーを使うこともあります。鼻の病気は、患っている期間が長ければ長いほど治療にも時間がかかるので、早めの治療が肝心です。そして、きちんと治さないと慢性化する可能性があるので、根気強く治療を続けるようにしましょう。

●鼻の治療中は抜歯もリスクに! その理由は?
○進行すると急激な視力低下も

抗生物質による治療を行えなかった時代は、副鼻腔炎が脳の病気(脳膿症、髄膜炎、硬膜下膿瘍など)に進行することもありました。現代では、そのような重とくな合併症は少なくなったとはいえ、副鼻腔炎を治療せずに放置すると、中耳炎や気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症など、鼻だけの症状で済まないこともあります。

そして意外と知られていないのは、目の合併症。急性副鼻腔炎が進行すると、目の疲れや視力低下が起こることもあります。怖いのは、その進行スピードです。例えば週末に「目の調子が悪いな」と思ったら、月曜には視力が著しく落ちている、というケースがあります。急性副鼻腔炎から鼻性視神経炎を発症したためです。この場合、落ちた視力は戻らないことも多いので要注意。"鼻の病気が原因の目の症状もある"ということを覚えておいてください。

○親知らずを抜くときは要注意

また、副鼻腔炎と歯の病気の関係性も見過ごせません。親知らずを抜くときに副鼻腔炎の症状がある(治療をしている)場合は、相互に影響する可能性があるので、十分に検査をしておく必要があります。親知らずではありませんが、上の歯で前から6番目の歯の付け根は副鼻腔(上顎洞)の底部にもっとも近いところにあり、抜歯することで穴が空いてしまうこともあります。そうすると、口から入れたものが鼻から出る、または逆のケースもありえます。

なお、歯が悪くなると、食事が思うようにできなくなるばかりか、咀しゃく運動(かむこと)の低下による脳への影響や、歯周病によるさまざまな病気のリスクも報告されています。自分の歯を大切にすることは、鼻はもちろん、全身の健康を守る鍵なのかもしれません。

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一年中鼻水が止まらない、もしくは風邪のほかの症状は治ったのに鼻だけが長引いているという人は、一度、副鼻腔炎の可能性を疑ってみてもよいだろう。そして、花粉症やインフルエンザなどで症状がさらに悪化することがないよう、早めの治療を心がけてほしい。

※画像と本文は関係ありません

○記事監修: 松根彰志(まつね・しょうじ)

医学博士
1984年 鹿児島大学医学部医学科卒業
1988年 鹿児島大学大学院医学研究科修了
1988年〜1990年 ピッツバーグ大学(アメリカ合衆国ペンシルバニア州)留学

NPO 花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会副理事長、事務局長
同団体は、花粉症・アレルギー性鼻炎や蓄膿症・副鼻腔炎に正しく対処するための情報発信・活動を推進しています。

日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授
日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科部長、病院研究委員会委員長
日本耳鼻咽喉科学会、日本アレルギー学会、日本鼻科学会、日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 各学会の代議員
神奈川気道炎症病態研究会 代表幹事 など

(須藤妙子)