残留が決まったものの……

写真拡大

 海外フリーエージェント(FA)権を行使し、福岡ソフトバンクホームスからメジャーリーグ挑戦を目指していた松田宣浩内野手(32)が、残留を決断したことが分かった。ソフトバンクから提示された、4年総額16億円プラス出来高払い(金額は推定)で合意したものとみられ、球団が目標と掲げるプロ野球史上初の?10連覇?に、熱い思いが傾いたとも言われている。

 12月24日に残留が正式に発表されたことで、ホークスファンには最高のクリスマスプレゼントになった。しかし、裏を返せば日本人内野手がまたメジャーでは評価されなかった側面も見えてくる。

日本人内野手は”想像以上”の低評価

 松田を巡っては、複数の球団が獲得に向けた調査を行っていたとされている。というのも、来季のメジャー球団には3塁手を補強ポイントに上げるチームが少なくなかった。その中でもっとも有力とされていたのが、サンディエゴ・パドレスだ。A・J・プレラーGMが直々に来日し、松田と会談を行うなど獲得に本腰を入れていた。しかし契約に至らなかったのは、松田に対する低評価にほかならない。MLB事情に詳しい、スポーツライターが打ち明ける。

「4年総額16億円のソフトバンクに対してパドレスが提示した年俸は、メジャー契約ではあるものの、2億円の2年契約とみられています。メジャーの内野手で1億円は控え選手の評価であり、出場機会が少ないことは明らかです」

 今シーズンはキャリア最高の35本塁打、94打点を上げるなど、パワーヒッターとしてチームを引っ張った印象が強い。しかし、この数字が高評価には繋がらない理由がある。前出・スポーツライターが続ける。

「ホームラン数が増えたことで、長距離砲としての評価が上がることはない。というのも、ソフトバンクの本拠地であるヤフオクドームは、今季から従来の外野フェンスの手前にせり出すように?ホームランテラス席?が設置されました。ホームランテラスが設置されたことで、ホームラン数は増加。松田にいたっては、本拠地でのホームラン23本中12本がテラス席へのホームランで、これは球団でもっとも多い。数字はさほど評価されませんでした。会見で?本来の三塁手以外にも、2塁手も守るように求められた?とコメントしてしますが、三塁手だけでは評価されなかったことの表れ。32歳という年齢の数字も、低評価に繋がってしまったのではないでしょうか」

日本人内野手の負の歴史

 日本人内野手では、2004年に西武ライオンズからニューヨークメッツに移籍した松井稼頭央選手(現:楽天イーグルズ)が、初のメジャーリーガーとしてプレーしている。その後、2005年に井口資仁選手、中村紀洋選手、2007年に岩村明憲選手、2011年には西岡剛選手、2012年には川崎宗則選手が海を渡るも、活躍と呼べる成績を残しているとは言い難い。2013年に西武ライオンズからオークランド・アスレチックスに移籍した中島裕之選手にいたっては、一度もメジャーで出場することなく日本球界に復帰している。

 今回、松田のメジャーでの活躍が、日本人内野手の評価を一変させてくれると期待したファンも多いはず。しかし、松田でさえもその評価を覆すことはできなかった。メジャーのダイヤモンドで、日本人内野手が躍動する日は訪れるのだろうか。

(取材・文/佐々木浩司)

佐々木浩司(ささき・こうじ)80年群馬県生まれ。スポーツ誌の契約記者を経てフリーに。現在は主に、週刊誌やビジネス誌で活動中。得意分野はメジャーリーグ、プロ野球、サッカーなど。