名監督が生まれにくい日本サッカー界。小倉隆史のステップは吉と出るか凶と出るか
監督として失敗する確率は、下積みの経験がある方が低い。だが、知名度の高い元代表選手はメディアが放っておかない。芸能系の事務所も食指を動かそうとする。その結果、どうなるかと言えば、華のあるJリーグ監督の数が少なくなる。世間の監督への関心もおのずと低くなる。
もちろん、小倉が名古屋でいきなり、よい采配を振るい、不安定だったチームを立て直すことができれば、メディアはこぞって注目するだろう。スター性のある新人監督の誕生に世間は湧くだろうが、そう簡単に事は進むだろうか。
新人監督に必要なのは、優れた参謀だ。ライカールトがバルセロナの監督に就任した時、助監督としてサポートしたテンカーテのような存在だ。ライカールトは、記者会見のひな壇には座ったが、練習場で指導を実質的に行っていたのはテンカーテ。身の丈を知っていたライカールトは、当時、オランダ国内で戦術家として知られていたテンカーテに、その役を自ら願い出たのだ。
名古屋で言えば、2008年から2013年まで監督とヘッドコーチの関係にあったストイコビッチとボシュコも、ライカールトとテンカーテの関係に似ていた。監督経験のないストイコビッチにとって、監督経験豊富なボシュコは頼れる存在だったのだ。
知名度の高い代表経験豊富な監督が誕生しにくい日本サッカー界。その中で、あるいは例外的かと淡い期待を抱きたくなるのが、今季からアビスパ福岡の監督に就任した井原正巳。その日本代表キャップ122は、遠藤保仁が記録を塗り替えるまで1位だった。井原はまさに名選手。で、新人監督だ。しかし、2009年から5年間、柏レイソルのヘッドコーチを、主にネルシーニョに下で務めてきた。そこで、きわめて地味な役割を演じてきた。
今季、J2で現在まで3位と大健闘している福岡の成績は、井原のステップが正しかったことを証明しているように見える。名選手名監督にあらずを覆すことができるか。名古屋の小倉ともども、今後に目を凝らしたいものだ。
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スポーツライター杉山茂樹氏の本音コラム。
