本田だけではない…元ミランの日本人トレーナーも懸念する伊サッカーの未来

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 4日に行われたミラン対ナポリ戦後の日本代表FW本田圭佑の発言が波紋を呼んでいる。シニシャ・ミハイロビッチ監督になってから不振の今シーズンのミランについて、厳しく批判したからだ。「マンチェスター・Cやパリ・サンジェルマンくらいのお金を使うか、そうでなければストラクチャーの部分を見直していかないとならない。経営陣、監督、選手、同時にファンも気づかないと」や「100億くらい使っているのに、なぜ選手が与えられたポジションで生き生きとプレーできないのか」、また「ファンは内容を見ないし、拍手するのは勝った時だけ」と辛辣に批判した。

 ミランに移籍して1年半が過ぎ、本田なりに考えさせられることが多いのだろう。「構造的なもの、評価基準。それをメディアからファンから全員変えることができたら、大きく再建につながるのではないか」と、メンタル面についての大改革を助言した。イタリアのサッカーはチャンピオンズリーグ(CL)出場枠を3チームに減らされて数年が過ぎた。昨シーズンはユヴェントスがCL決勝まで進出したが、イタリア代表としては2006年のドイツ・ワールドカップ優勝、そしてユーロ2012の準優勝を機に国際大会の栄光から遠ざかっている。イタリアのサッカーについて、サポートの早さやボールの動かし方などに疑問を持つ本田。最後にこう警告した。「ユーヴェが今弱くなったら……ユーヴェ自体も危ないでしょ。ほんとにイタリア自体が危ないんですよ」。

 その危機感を別の観点から感じてきたのがミランの元メディカルトレーナー、遠藤友則氏だ。セリエAで過ごした16年間の経験から次のように語る。「フィジカルについてお金をかけるレベルが他国とイタリアは違う。ブラジルがなぜ強いか。サンパウロ大学が大元でいてフィジカルドクターらが研究開発をしている。メディカルのスペシャリストが一つのグループになっていて、そこから各クラブに派遣される。結構ブラジルって新しいことをやるんですよ。ドイツだって大学が(バックに)ついている」と比較した。「イタリアのスポーツ医学? 全く進んでいない。医学部がバックにいないとダメ。グループ、国のリーグは根本的なサポートがないと難しい」と、イタリアの後れと国レベルの支援体制の必要性を訴えた。

 イタリア・サッカーの弱体化はクラブ、選手、現場スタッフだけでなく、サポーターやマスコミ、そしてイタリアの国自体にも責任があるという二人の指摘を皆さんはどう考えるか。ただ一つ言えるのはセリエA、イタリア・サッカーが分岐点、過渡期に差し掛かっているのは間違いない。

文=赤星敬子