日本人も? ホテル従業員が語る各国のトンデモ客

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パリのホテルにはさまざまな客が訪れる。そのためホテル従業員は、世界各国からやって来るゲストの文化差異に戸惑うことは日常茶飯事だ。彼らの行動の中には対応に苦慮するケースも多いという。どんな悩みが多いのか? パリのホテルで働くレセプショニストたちに、現状を聞いてみた。

ゴミやニオイ……部屋を汚す客


ホテルにとってまず困るのが、部屋を汚す客だ。汚すといっても、多少散らかしてチェックアウトするという程度ではない。市内5つ星ホテルで働くレセプショニストは言う。

「彼らの習慣なんでしょうか、中東の富裕層のお客様の場合、いらなくなった食べ物、飲み物はすべて床に捨てます。そのため部屋のあちらこちらで食べ残しの料理が床に散乱し、チェックアウト後の清掃に入ると、カーペットには捨てられた飲食物が染み込んでいます。そこから元の状態に戻すには、かなりの時間と費用を要します」

タバコのにおいを取り除く作業も大変だ。

「パリは屋内での喫煙は法律で禁止されています。ただし5つ星ホテルの場合、お客様のことを考え、客室内の喫煙はある程度は大目に見られることがあります。そのタバコのにおいを抜く作業も、とても手間がかかります」

においはタバコだけではない。スパイスの香りもホテルを困らせる。市内チェーン系ホテルのレセプショニストは語る。

「私が働くホテルはキッチン付きのアパートメント型ではないのですが、インドのお客様がご宿泊された時に、部屋の中で何か調理をされたのか、スパイスの香りが強く残っていました。次に入るお客様のチェックイン時間も迫っていましたし、におい取りには時間がかかりますし、本当に困りました……」


困った客は外国人とは限らない。フランス人宿泊者の身勝手さも、悩みの種だ。

「以前、フランス人のお客様がチェックアウトされた後、部屋のベッドが尿で濡れて使えないような状態になっていたことがあります。ご宿泊されていたのは大人のカップルでしたので、不慮のお漏らしとも考えにくいですし……結局ベッドを取り換えました。においもそうですが、備品を壊されたわけではないので安易に請求もできず、困惑することは多いです」

予約と違う人数で来る客


予約人数と当日の人数が異なることも日常茶飯事だ。

「大人2人で予約して、当日子供2人を含めた4人でお越しになるお客様がいます。お客様は『子供だから』と主張されますが、2歳以上(ホテルによって異なる)は1人とカウントされますし、部屋の収容人数は法律で決められています。そのため2人部屋に4人は入れられません。追加のベッドを入れられる場合でも、そのようなお客様は、追加ベッドの料金も納得してくれません。特に夏季のバカンス時に多いですね」

予約の際にも難題を押し付けられるフランス人は多いそうだ。

「当ホテルは3つ星で1泊100ユーロ(約1万3700円)を超える価格設定ですが、予算が1泊50ユーロしかなく、それでなんとかしてくれという電話が、フランス人のお客様からかかることが頻繁にあります。予算が明らかに低いため、どうにも対応できません」

特に騒々しい中国人・イタリア人団体客


団体客の扱いも大変だ。宿泊客の中でも、特に騒々しいのが中国人とイタリア人だという。市内4つ星ホテルのレセプショニストは述べる。

「ホールにそれら国籍の団体客が入ると、お客様との会話は筆談しないといけないくらい騒々しくなります。中でも中国人のお客様の場合、順番を待つということがあまりなく、他のお客様と対応している最中でも、横から中国語で話しかけようとします。『今、他のお客様に対応中ですので少々お待ちください』と英語で言うと、中国語で怒られますし心労は絶えません」



細かい要望が多い日本人団体客


日本人客はどうだろうか。部屋を比較的きれいに使う点は歓迎されるが、特に団体客の場合、細かな要望がとても多いという。

「この部屋は気に入らないから変えてくれ、という要望がとにかく多いです。希望は直接伝えてこず、すべて添乗員を経由して行われます。また、これはパリ・イル・ド・フランス観光局が出す冊子でも指摘していますが、要望があってもその場で言わずに、帰国後にネットに不満を書くケースがとても多いです」

時には客以外のトラブルも


問題が起こるのは客からだけではない。従業員によるストライキにも備えなければいけない。一度ストが起こると、レセプショニストは客とストとの板挟みになる。

「以前、私のホテルの清掃部門がストライキに入ったため、清掃員の数が足りず、チェックインまでに客室の清掃が間に合わないことがありました。清掃部門がストに入っているということはお客様にお伝えできませんし、一方で決められた時間までにチェックインを済ませられないため、お客様をお待たせすることになりますし……」

「レセプショニストの仕事の第一は、とにかくお客様に謝ることです」と言われる皆さん。お勤めご苦労様です……! 
(加藤亨延)