カフェインの摂取で慢性ストレスを軽減できることが判明
By Alex
コーヒーやエナジー飲料などに含まれる「カフェイン」を摂取すると、人間の体にはさまざまな効果や問題が生じます。そんなカフェインには「慢性ストレス」を軽減する効果があることが新たに判明しました。
Caffeine acts through neuronal adenosine A2A receptors to prevent mood and memory dysfunction triggered by chronic stress
Caffeine could limit damage of chronic stress | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2015/06/caffeine-could-point-the-way-to-limiting-damage-of-chronic-stress/
心身に負荷がかかった状態である「ストレス」には、急激な変化や危機的状況に陥った際に起こる「急性ストレス」と、持続的にかかる心身への負荷である「慢性ストレス」の2種類があります。カフェインを摂取することで慢性ストレスを軽減でき、「うつ」や「記憶力の低下」などの慢性ストレスからくる悪影響を減少させることが可能だそうです。ストレス軽減のためにいつもよりも多くカフェインを摂取してしまう、という行動は想像以上に効果的だったというわけです。
By trophygeek
カフェインが慢性ストレスを軽減するのに効果的である、と発表したのはコインブラ大学のCentre for Neuroscience and Cell Biology(CNC)で働く研究チーム。論文は米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表されました。研究チームでは人間の体内のシグナル伝達を丹念に調査し、カフェインが脳にどのような影響を与えているのかを調べています。
慢性ストレスは脳の海馬にある神経回路を変化させてしまうことがあります。これが起きると人間の気分は減退し、記憶力は低下、そしてその他の感情も落ち込んでしまうそうです。CNCの研究チームでは、人間と同じように慢性ストレスにさらされたハツカネズミの脳ではどのようなことが生じるのかを確かめる実験を行っており、「長期的なストレス」にハツカネズミをさらすため、ケージを傾けたり、おがくずを濡らしたり、ケージを頻繁に入れ替えたりしたそうです。
実験の結果、ハツカネズミも慢性ストレスにさらされることで体重の減少や記憶力の低下が生じることが判明しています。また、慢性ストレスにさらされたハツカネズミは無気力かつ刺激に対しても敏感でなくなっていったそうです。さらに実験では、慢性ストレスの効果を実証したのちにハツカネズミにカフェイン入りの水を摂取させることで、カフェイン摂取が慢性ストレスに与える効果についても調査しています。調査の結果、カフェインを摂取したハツカネズミでは、抑うつ症状が少しずつ解消されていき、記憶障害も改善していったそうです。
By Keirsten Marie
慢性ストレスが心身に与える効果とカフェインが慢性ストレスに対してどのように効果を発揮するのかを実証したのち、なぜカフェインを摂取することで慢性ストレスを軽減させられるのかを調べるため、研究チームは人間の脳にあるアデノシン受容体で起きる変化を調査。脳のアデノシン受容体にはA1、A2A、A2B、A3という4種類の受容体が存在し、カフェインはこのアデノシン受容体のタンパク質に作用するといわれています。
受容体の変化を調査した結果、慢性ストレスにさらされることで、神経伝達機能は分子が受容体に結合するのを妨害する物質として知られるアンタゴニストに変化し、アデノシンA1受容体を減少させA2Aを増加させることを発見。さらに、アデノシンA2A受容体がカフェインの慢性ストレスに対する効果をまねることも発見し、慢性ストレスに対してA2A受容体が重要な役割を果たす、と結論づけています。
