USENの宇野康秀社長(資料写真:吉川忠行)

写真拡大

USEN<4842>が19日発表した2006年8月期通期の連結決算で、本業のもうけを示す営業利益は前期比63%減の35億3000万円、経常損益は36億4000万円の赤字(前期は62億7400万円の黒字)に転落した。最終損益は88億8900万円の赤字(前期は277億円の赤字)だった。

 同社によると、監査人であるトーマツから保守的な会計方針への変更を指摘され、将来的に予想されるコストを損失計上したため、4月に下方修正した業績予想に対して大幅に未達。ライブドア事件以降の新興企業に対する監査側の厳しい姿勢が浮き彫りとなった。

 従来予想で営業利益を50億円と見込んでいたが映画配給子会社ギャガ・コミュニケーションズで収益の見込めない公開前のコンテンツについて映像権評価損20億円を計上して利益が減少、10億円の黒字を予想していた経常損益は金融機関に支払うシンジケートローン組成手数料23億円の一括償却や棚卸資産の減損処理などで大幅赤字に繋がった。

 最終損益も株式上場を想定しているメディア、KLabの2子会社など保有株の評価損45億円や、将来的に発生が予想される有線放送事業の電柱撤去費用58億円の引当金などがかさみ従来予想を99億円下回った。

 同日、東京都中央区の東証で会見した佐藤英志常務は、業績悪化について「本社の業績が大きく変わって、下がったということではない」と説明した。

 また同社は、通常、決算発表の前に行う業績予想の修正を、決算と同じ午後3時10分に開示した。その理由について、佐藤常務は「(会計方針をめぐって)今日まで監査法人との折衝が続き、最終的な決着が直前となった」とした。

 売上高は前期比18%増の1820億円。5月に買収した自動精算機販売のアルメックスの連結化やブロードバンド通信事業の好調などが寄与した。

 一方、業績の足かせとなった無料インターネット動画放送「GyaO(ギャオ)」は配信するコンテンツの調達・制作への先行投資がかさむ一方で、収益源の広告売上げが伸び悩んだ。同事業単独の業績は、売上高が20数億円、営業損益が80億円の赤字。佐藤常務は、原因として社内体制と広告主の認知度不足を挙げた。すでに始まっている07年8月期は売上高70億円、営業損益は20〜40億円の赤字に改善したい考え。

 07年8月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比54%増の2800億円、営業利益が3.7倍の130億円、経常利益が70億円、純利益は30億円と、いずれも黒字回復を達成し、増収増益を見込んでいる。ブロードバンド通信事業や映像コンテンツ事業の売上げ増や人材紹介子会社のインテリジェンス<4757>の連結化などを増益要因としている。

 同日の記者会見には同社の宇野康秀社長は欠席。会見後、社長が出席して都内で行われた業績説明会は機関投資家のみ対象で行われた。同社では、個人投資家に対しては同日発表の決算短信に加え、来週初めにも同説明会の映像を同社ホームページ上で公開するとしている。【了】

■関連記事
ヒルズ族企業の秋彼岸