2006年1月、6月の2度、司直のメスが入った六本木ヒルズの森タワー(撮影:吉川忠行)

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国内最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「mixi」を運営するミクシィ<2121>が東証マザーズに上場した14日、東京証券取引所内の記者会見場は、笠原健治社長(30)が見据える事業戦略を聞こうと多くの報道陣で溢れかえった。同社株には買い注文が殺到し、最終的な公募・売り出し価格155万円の2倍以上の気配値のまま、初値が付かないほどの人気ぶりを見せた。翌日ついた初値での時価総額は、マザーズ2位の2079億円となった。

 1976年前後に生まれたネット起業家を表す「76世代」という言葉とともに、かつて「ビットバレー」とも称された若い起業家が集まる渋谷に再び注目が向けられている。生き馬の目を抜く新世代のネット企業の台頭で、新興株式市場が1月のライブドアショック以来となる活況の兆しを見せる中、六本木ヒルズに入居する“先輩企業”の変節を伺った。

20階 村上ファンド

 20階に入居する投資会社「M&Aコンサルティング」。代表を務めていた村上世彰被告がインサイダー取引事件で6月に逮捕されて以来、大口の機関投資家の相次ぐ契約解除もあって、運用資産4400億円としていた関連する投資ファンド(通称・村上ファンド)では保有株の現金化を進めている模様だ。

 21日には、松坂屋株など5銘柄の一部を売却したとする大量保有報告書を関東財務局に提出した。阪神・阪急の経営統合をめぐり攻防戦を繰り広げた5月の大型連休中に、保有比率5%まで一気に取得したサークルKサンクス株は、15日時点で2.18%に低下。そのほか、7月20日から今月15日にかけて断続的に売却して、住友倉庫株が16.42%から8.17%に、GMOインターネット株が6.45%から1.26%、ホシデン株が8.1%から3.73%までそれぞれ保有比率を引き下げた。

 7月27日時点で7.05%保有していた松坂屋株は3.66%に低下。松坂屋は7月24日から8月14日まで自社株公開買い付け(TOB)を実施したが、応募株は2.47%にとどまっていた。8月下旬には、村上ファンド側は、3.99%分の買い取り価格について松坂屋と折り合わず、価格決定を名古屋地裁に申請した。松坂屋広報は「裁判の状況については現段階で話せない」としている。

 東京地裁は19日、かつての首領、村上被告への公判前整理手続きの適用を決め、1回目協議の期日を10月16日に指定した。

18、19、21階 楽天

 楽天<4755>は21日、新興市場での時価総額がジュピターテレコム(JCOM)を下回り、8カ月ぶりに首位から2位に転落。22日には反発し、時価総額でも首位を奪還したが、1兆5000億円を超えたピーク時の2004年末と比べて約4割の水準に甘んじている。

 TBSとの提携交渉は手詰まり状態が続き、8月下旬には4回目の期限延長を決めた。再び期限を9月末に控える中、TBSは19日、すでに2%の出資を受けて提携関係にあるビックカメラと家電の共同開発などで業務提携すると発表。双方のインターネットサイト上での販売も計画に含まれているが、ネット通販最大手、楽天の“お家芸”を奪うことにもなりかねず、ますますTBSとの交渉の先行きに不透明感が増している。

 来年秋には、東京・東品川にある地上23階建てのビルに本社を移転し、六本木ヒルズを去る予定だ。

38階 ライブドア

 「一部役員の暴走によって事件を起こしてしまったが、発覚直後から迅速かつ徹底的な調査および改革が自発的に行われ、旧体制の問題点を完全に克服した新体制のもとで経営が行われている。全く異質の新しい企業に生まれ変わったと評価すべきであり、再犯のおそれは全くない」

 ライブドア事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた法人としてのライブドアの公判が21日、東京地裁で開かれ、弁護側は最終弁論でこう主張して寛大な判決を求め、結審した。判決期日は元社長堀江貴文被告らの審理状況をみて、年明けにもなる見通し。

 9月30日には、事件で揺れた06年度の決算期末を迎える。第3四半期まで(05年10月〜06年6月)の業績は、単体で営業損益の赤字額が41億円と、前年同期(11億円の赤字)の約3.7倍に膨らんでいる。

 同社広報によると「経営陣では来年9月時点での単月黒字化を見込んでいる」としており、ポータルサイトの広告事業など事件の影響で顧客離れにあえぐ状況に歯止めをかけたい考えだ。【了】