【ファンキー通信】最近「美人」が急増したワケは?

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 「あの娘、性格が美人よね?」「雰囲気が美人だなぁ」と言う人、増えてませんか? 最近「美人」という言葉がずいぶん安売りされているような気がする。

 辞書によると美人とは「整った目鼻、色白できめ細かい肌、優しい瞳、品のある口元」。ここで注目したいのは、あくまでも顔がポイントで性格は含まれないことだ。

 そこで『美人論』の著者でもある井上章一教授にお話を伺った。

 美人といえば、一般的には「目鼻だちの整った顔」ですが、昔と比べて美人の基準は変わってきているのでしょうか?

 「平安時代の美人といえば、絵巻などに描かれる下ぶくれの顔を想像される方もいるでしょう。しかしながら、あのような顔の骨格は出土されていません。絵巻は今でいう少女漫画のようなもので、デフォルメされた顔。つまり、あの顔が平安時代で本当に美人だったかどうかはわかっていないんです」

 現在はマナー美人、性格美人など、純粋に顔の美しさ以外で「美人」と使われることが多くなってきましたが、これには理由があるんですか?

 「これは、実は美人でない人を慰めるための理論なんです。例えば明治時代には、美人は呪われているとか、キツネが化けたものだといえば、なんとなく美人でない人も納得したんですね。ところが1920年代に入ると、美人の民主化が起こります。つまり、言葉は悪いですが、『あなたでさえ美人になれる』という意味合いで美人が平均化されてきたのです」(同)

 ちなみに平安・鎌倉時代には美女とよばれる役職があり、貴族夫人の部屋をきれいにする平安王朝の「喜び組」のような人たちだったという。一方、鎌倉時代では「悪女」はストレートにブサイクのことを指し、いまでいう小悪魔的意味合いは一切ない、というからこれもお驚きだ。

 「性格美人はあくまでも日本の人生論や道徳論を説く本などに出てくる言葉です。英語や中国語には性格美人などという言葉はいっさい出てきませんよ」(同)

 美人の平均化が進んできたとはいえ、井上先生はあくまでシビアに語る。

 「美人の変遷と言っても、平安時代、美人と言われていた人を現代に連れてきて現代の洋服を着せたら、やっぱり美人なんだろうと思いますよ」(同)

 なるほど確かに。本当の美人の価値観はなかなか変わることはないのかもしれない。もっとも、性格がよければ話は弾むが、それは美人かそうでないかとは、また別の話だろう。さあ、あなたも今日、彼女をじっくり眺めてみよう。彼女は美人ですか? それとも・・・。(押木真弓/verb)

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